人材育成のコツ
一生使える思考技術の二つ目は「相手の考え」に目を向ける思考です。
ネットや雑誌に「新人に求める能力」「成功するビジネスマンのスキル」などの記事があります。
その中にベスト3の一つは「コミュニケーションスキル」でしょう。
実際に、「社員のスキルを磨く立場にある人事担当者のコミュニケーションスキルが足りない」
なんて事例もあるくらい、多くの企業で問題になっています。
「コーチングスキル研修」などのトレーニングを実施しても、
表面的なテクニックを身に付けて解決するものではありません。
なぜなら、「コミュニケーションがうまく取れない人」は
根本的な物事の見方に問題を抱えているケースが多いからです。
最もよくあるパターンは、
「自分と同じように相手も考えるはずだ」という勘違いです。
先日あった事例を紹介してみます。
ある元請会社と下請会社の定例MTGに参加した時の話です。
そもそも参加をしたのは、下請会社から
「元請会社に無理難題を押し付けられて困っている。同席してくれないか」
との相談があったからです。
しかし、会議に参加してみると、聞いていた話とは全く逆の現象が起きていました。
*指摘をされないように報告書で武装をしている下請会社
*それに対して、無駄な仕事はして欲しくないので、目的と手段の関係を整理して、
「何のために作業をするか」理解させようとする元請会社
*言い訳・取り繕いになりそうな下請に対し、歩み寄ろうと試行錯誤をする元請会社
そして、会議後に下請会社と定例MTGの振り返りを行いました。
出てきたのは、
*今日は指摘が少なかった。(うまく報告できた)
*元請会社は解決策を考えようとしていない。具体的な要求がない。
と元請会社に対する批判的な言動でした。
「相手の意図(一緒に良い仕事がしたい)」には全く気がつけていませんでした。
下請会社の社員たちはなぜそうなってしまっていたのでしょうか?
最大の原因は、「元請会社はひどい人たちだ」という思い込みです。
過去にそのような誤解を生じることがあったのかもしれませんが、
どのような事象があったにせよ、元請会社の真意を誤解しはじめた時があったはずです。
自分の考えと違う考えに出会った時に、
「なぜ、相手はそのようなことを言うのだろうか?」
と、相手を理解しようとする思考が弱いのです。
相手の意図は誰しも考えようとしますが、その想定の幅が狭いのです。
「自分だったらこう考える」ということを想定しているだけで、
自分と違うタイプの人の考えることが想像していないのです。
「いかに楽を出来るか」ばかり考えている人は、
「積極的に挑戦をしたい人」の考えは想像できにくいものですし、
逆もまた然りです。
「下衆の勘ぐり」とう言葉がありますが、
目線の低い世界で生きている人は、
経営者の意図が理解できなかったりします。
ひがみみっぽくなり、被害者マインドに陥りやすいのです。
逆に高い目線で突っ走り、成功し続けている人の中には、
弱者の気持ちがわからないというパターンもあります。
理屈でいくら説得をしても、心が開かれませんし、コミュニケーションは成立しません。
自分と違う考えに出会った時、
一呼吸をおいて、「相手はなぜそう考えるのか?」と可能性に目を向ける力は
一生使える大切な力となります。
(つづく)
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ペネトラ・コンサルティング株式会社
代表取締役 安澤武郎
公式サイト:http://penetra.jp/
お問合せ: info@penetra.jp
著書:『壁をうち破る方法』はこちら
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