目標を持ちたくないのはなぜか?
好事例があった場合に「横展開をする」ことはマネジメント上基本的な営みです。
しかし、横展開の仕方は組織によって大きく異なっています。
ケーススタディーで考えてみましょう。
■ケース
先日ある部門の営業会議に出席しました。
その会議で、ある担当者からこんな相談が投げかけられました。
「販売店Aに商品Bを拡販して貰いたいのですが、
なかなか全員に協力して貰えなくて困りました。」
その後のやり取りは以下です。
先輩A 「そもそも営業マンは何人いるの?」
後輩 「6人です」
先輩A 「協力してくれているのは何人?」
後輩 「2人です」
先輩A 「すごい確率じゃないか。1/3も巻き込めているなんて。
で、売上の目標を達成するのに、その2人でクリアできないの?」
後輩 「あ~、できる可能性ありますね」
先輩A 「じゃあ、まずその2人をしっかり応援して成功させることだよ」
先輩B 「自分が成功させた販売店Cでも、協力的だったのは最初○○さんだけだった。
○○さんが失敗しないように、事前に話し方をチェックしたり、資料を工夫したり
準備を手伝ったんだよ。そうして○○さんが売れるようになって、周りの人が協力
してくれるようになった。それでも全員が協力的かと言うとそうでもないよ」
後輩 「まず、2人をしっかり成功させることを頑張ります」
さて「このやり取りから何が学べるでしょうか?」
■解釈例
このケースは先輩が後輩の問題解決をした好事例ですが、
人によって学べていることが違い、その後の成長も変わってきます。
いかがでしょうか?何が学べるでしょうか?
営業的には、「販売店の協力を得る時には、全員をターゲットにするのではなく、
前向きな人を集中的にサポートして成功させるのが良い」という教訓が得られます。
全員を口説こうとして行き詰っている場合には、
別の視点から営業に取り組むことができるかもしれません。
ただし、この教訓が不適切な場合もあります。
「協力的な人に営業力がなく、その販売店の中心となる営業マンが非協力的である」場合です。
いくら成功事例を作ろうとしても、成功させられなかったり、
成功しても販売店内で影響力が発揮されないことが想定できます。
そう考えると、「影響力のある営業マンを成功させるべき」との教訓を得ておく方が良いかもしれません。
一方で、マネジメント的な学びも考えることができます。
どんな学びが得られるでしょうか?
一つは、「目的やあるべき姿から考えて解決策を決めると良い」ということが言えます。
販売店の全員から協力を得ることができれば最高ではありますが、
「目標を達成する上では、そこまでする必要はなかった」のです。
言い方を変えれば、「解決しようとしていた問題」が違ったのです。
「解決策を考える前に、『何が問題か?』をしっかり捉えることが大事」という教訓が得られます。
後輩が解こうとしていた問題は
「どうすれば全員の協力が取り付けられるか?」ですが、
先輩が考えたのは
「どうすれば目標を達成できるか?」です。
もしかしたら、
「どうすれば継続的に販売店の売上を伸ばしていくことができるか?」
という問いであったかもしれません。
コアになる人間の売上を伸ばし、それを波及させれば、
全員が協力的でなくとも継続的に売り上げを伸ばせると考えられます。
『問い』が変わると『答え』も変わるということです。
結構、多くの方が自分の「問い」について鈍感です。
どこの企業にも「質問に答えない(質問を正確に理解できない)人」がいると思います。
そういう方は、「問い」を考える習慣がなかったり、
質問者と日頃考えている「問い」が違っているのです。
問題解決の前に「何を考えるべきか?」を考えること=問題を特定する事が解決への早道であったりします。