第二の仕事の相談にある対照的な2タイプ
【はじめに】
ここ2,3年、コロナ禍の終息と共に40代からの相談者が増えてきました。
特に目立つのが、「起業相談」の占める割合が急増している点です。
今日は私感ですが今の40代から50代前半の世代が置かれた就職から始まった
厳しい社会環境との兼ね合いを考えてみました。
【ある40代の方の声】
当初の相談案件は別ものでしたが、雑談の中で自然と語り始めました。
「私の世代は学生時代はいわゆる就職氷河期でした。」
「就職後にはバブル崩壊の余波で派手な社会人ライフとは無縁でした。」
「失われた30年はそのまま我々の失われた人生そのものです。」
「中堅管理職の先輩方は早期退職勧奨の標的で退職金も目減りです。」
「今の新入社員世代が羨ましいです、実に優遇されまくってますよ!」
途中で口を挟まなければ延々と続きそうな勢いでした。
そしてこの後に彼の選択肢の一つとして考えていた
「起業・独立」の話題に移ったのです。
今まで起業相談でお見えになった40代の方々の本音(動機)も
実はこういう社会環境によってではないかと思ったのです。
【いいことの記憶がない会社生活】
ここの話はあくまでも一部の方の感想で、全てがこうという訳ではありません。
その方はある上場企業に目出たく就職が叶い、営業職に就きました。
ですが社内はいわゆる「失われた30年」の影響で職場仲間との飲み会は激減、
先輩社員に連れられて接待用の店を経験し、その場は奢られるといった
営業職にはつきものの「夜の営業の修行」もされないまま。
その後自分が中間管理職に昇進したものの、得意先との会食の場を知らず
自腹で探したり、会社から許された交際費の枠内での接待をせざるを得ず、
年商数十億の得意先の担当者を回転すし、ファミレスで会食したという
昭和世代には信じられない対応をしていたそうです。
社外ですらこの有様ですから、社内の後輩や同期との飲み会も
居酒屋やチェーン展開の酒場に限定され、オーセンティックバーなどは
異次元世界の話としか思えなかったそうです。
昭和の時代は後輩から見ても明らかに背伸びした店に連れていかれ
やせ我慢?で後輩には1円も払わせないという「見栄」がまかり通ってました。
そういう先輩を見ていたから我々世代までは同様の対応を無理してでも
承継してきたのですが、今や「化石同然の文化?」のようです。
それでも何とか会社勤めを続けてきたものの今や早期退職の最優先目標とされ
定年延長や、撤廃という制度改革はあったものの、収入面や役職面、社内での立ち位置
等のギャップにモチベーションを喪い惰性のような毎日を過ごす50代60代の先輩を見て
明日は我が身を痛切に感じているのです。
その人の能力、その人を取り巻く社内外の環境、得難い上司や同僚との出会いなど、
全ての方が上記したような「いいことなしの人生」を過ごしている訳ではありませんが
決して上記の事例はレアケースでもないのです。
【失われた30年とは?】
先述した「失われた30年」を簡単に説明しますと
1990年代の初めから始まった以下のような負の連鎖の時代を指しています。
山一証券や日債銀等の「超優良」な「金融機関」の倒産
それと連動しての株価の低迷の始まり
デフレの長期化
金融機関の不良債権の顕在化による経済活動への影響
終身雇用制度の見直し、崩壊
非正規雇用の急増
少子高齢化問題の始まり
さらに「リーマンショック」等海外からのダメージの波及なども相まって
緊縮、削減、節約が常態化してしまいました。
【逃走か闘争か?】
40代の相談者のタイプは大きく2つに分類できました。
ひとつは、今更他の道を進む気も勇気もありません、定年まではしがみつきます。
収入減も受け入れます、生活スタイルも変えたいと思います、定年後には何か
仕事をしたいのですが、何をすればいいでしょうか?
もうひとつは、これ以上会社人生を続けても先はほぼ見えてきました。
今なら(40代なら)まだ転職も間に合いますし、出来ればもう宮仕えではなく
起業して自分で人生を切り開きたいのですが、私の考えを聞いてもらえないでしょうか?
見出しでは「逃走」と書いてますが「妥協」「我慢」でもいいと思います。
前者はどちらかといえば与えられた環境の中で最適解を出すことを重視するタイプで
サラリーマンで言えば「与えられた課題を与えられた条件下で最適解を出す」ことに
長けたタイプと言えるでしょう。
これに対し後者は「自ら問題提起が出来」「あらゆる方法で最適解を出そうとする」
タイプと言ってもいいでしょう。
私の経験上の中では、前者のタイプで会社人生を歩んできた方が多数を占めていました。
そういうタイプの方がいきなり白紙のキャンパスだけを与えられ好きなように絵を描いていいと言われれば、動きようがないというのも理解出来ます。
コロナ以前は圧倒的に前者のタイプが多数派でしたが、コロナ以降は
後者のように問題提起型の相談者、それも40代の方が主流となりました。
個人的には、非常に好ましい傾向になったと感じています。
【情報との向き合い方】
自分の第二の仕事、第二の人生の為に必要な情報は
自分からアプローチしなければ手には入りません。
ですが情報収集に長けているだけではまだ駄目です。
より重要なのは情報分析を徹底出来るかです。
昭和の時代、例えば大学生が就職活動をする際には
専門誌に資料請求をして分厚い資料を入手したり、
転職や起業の相談ならハローワーク(当時は職安でしたが)や
自治体が主催の企業セミナーに足を運ばなくてはいけませんでした。
今やほとんどの資料や情報等はネット検索すればサクッと入手出来ます。
その情報源が著名人であったり、「いいね」が万単位でついていれば
その時点で全面的に信頼してしまうことも少なくないようです。
大切なのはその情報の精査で、情報源の確認から内容の分析、反対意見の
入手等で信頼に足る情報なのか、発信源は変なバイアスをかけて発信していないか等
いろいろな角度で分析した後に初めて自分にとって有益なものとして取り込むことです。
前向きな相談者の場合、これは40代に限りませんがこの分析力が高いです。
皮肉な話ですが、就職から今に至るまで苦難の連続だった40代には
「今を何とかしたい」
「何をすれば今以上の生活が出来る様になるか?」
「今のやり方で本当にいいのか?」
といった意識を持つような環境だったのかもしれません。
その結論が「起業・独立」というのであれば、少なくとも起業前の意識だけは
十分な覚悟があることと私は考えています。
今更20代30代と競り合うような状況は少ないでしょうけど、
経験値から身に付けた情報収集と分析のスキルがあれば大きなアドバンテージに
なり得ると思っています。
このスキルを上手く活用できれば、現役戦力としての活躍も、
このスキルの伝承者として若手への指導にも有益なものとなるのです。
【終わりに】
この相談業務という仕事に就いて早や12年を経過しました。
前にも書いていますが、以前の起業・独立相談には今の会社に恨みを晴らす、
周りを見返してやりたいといったネガティブなエネルギーが元というケースが
少なくない割合でした。
その後定年後ではなく定年前に次の人生設計を考えたいという50代の方が
起業・独立相談の主流になり、コロナ後にはさらに若い40代が真剣に起業・独立を
健闘するといった時代に至ってます。
最後も個人的な見解で恐縮ですが、
社会人になって苦労を続けてきた40代から50代前半の世代には
是非とも起業・独立で今までの苦労を活かした成功の道を掴んで欲しいと
切に願う次第です。