重要なのは「ここで」「これを」「買う」の方程式
【はじめに】
今日は飲み屋で知り合った登山が趣味だったという70代の方との
やりとりから気が付いたことについて紹介します。
学生時代のサークル以来最近までいわゆる百名山などを踏破してきた
大ベテランの方が経験した事例と起業・開業との意外な関連性です。
【単独行は避ける】
ある程度山に慣れてくると上級生や上級者との登山に
鬱陶しいと思うようになりがちで、今の自分ならと「過信」して
単独登山を目指したいと思う事は一度は経験するとのことでした。
ですが、多くの場合自己判断に甘さがあり
気象状況の読みや、自身の健康状態を無理に都合のいい状況に
置き換えて行動を強行しがちで、その結果這う這うの体で下山したり
周囲に迷惑をかけてしまうことが少なくないとのことでした。
これは起業を目指す場合に置き換えますと
第三者、特に起業を目指す業界の先輩や身近な家族にも十分な相談をせず、
あるいは誰にも相談しないまま計画を立ててしまう。
まさにある程度自分に自信を持った方が相談に来られた時がこれでした。
「この見通しが狂っていた時の次善の策は?」と尋ねても
「いや、これで間違いありませんので、ご心配なく!」と一顧だにしません。
以下の全ての事例に共通することですが、
その方には守るべき家族がいます、おひとり様でも仕事仲間や趣味の同士がいれば
自分の未熟な行動によって多くの迷惑や悲しみを与えるリスクがあるのです。
それによって長年の友情を失ったり、家族間に不信を植え付けることも。
その方は最後まで単独登山はしなかったそうです。
【優先順位を取り違える】
この方は海外の登山も何度も経験したそうで現地で日本人登山客と
同宿になることも多かったようです。
大抵はそれなりの企業に勤めるサラリーマンだったようで
資金をためて、何とか仕事をやりくりして休暇を取ることが出来た。
学生時代からの夢だった登山なんですと意気込みが違っていたそうです。
ところが登山当日になって天候が急変、現地ガイドも予報が困難な
不安定な気象状況で消極的な登山見送りを口にしたそうですが
先に書いたようにこのサラリーマン、おカネをかけて時間をやりくりして
ここに来ることが出来た、夢が叶うまであと一歩のところにいる。
こうなると、頭の中が都合のいい解釈、情報の選択も自分に有利な
情報のみで判断を下してしまったのです。
案の定、強行登山に打って出たこのサラリーマン登山者は
予想以上の悪天候の為頂上の遥か手前で身動きが取れなくなってしまい、
結局丸2日ビバーグする羽目になり、最後は救助隊のお世話になったそうです。
これも起業・開業の際の失敗のひとつと酷似しています。
国家試験に受かった、退職金も入金した、手ごろな店舗物件が
見つかった、等の理由で 行動するのは今!と拙速な判断をし、
拙速な行動を起こすのです。
「まるで自分の為の物件でした」「この機会は二度と来ない!」
ここでもまずは信頼出来る第三者の意見に耳を傾けるべきなんです。
起業して成功することが最終目的のはずが
この案件を今自分のものにすることが目的にすり替わっている事、
なかなか自分自身では気付きにくいのも事実です。
条件ピッタリの物件があっても周辺にニーズがあるのか?
ニーズもあったとして競合の分布はどうなっているのか?
自身で設定した価格設定がそのエリアで適当なのかどうか?
考えるべきことは多々あるのですが、
遺憾ながらこの時には視野狭窄では見えていないのです。
【間違いを認める、引き返す勇気】
これは遭難事故のニュースを見ると書かれていることですね
「あの時あそこで引き返していれば…」
「コースを外れたのは分かっていたがこの道からも行けると思った。」
「今さらあの結構な距離のある分岐点迄引き返すなんて勘弁してくれ!」
けっこうなベテラン登山家でもやってしまうようなミスだそうです。
起業準備でもそうですし、見事念願の開業を果たした後でも
当初の想定外の出来事に直面することはあって当たり前です。
問題はその時にどういう行動を選ぶかです。
「ここまで準備してきたのだから、今更白紙に戻せるか!」
「若干回り道で時間がかかるかもしれないが、それでもこの方法でうまくいく!」
準備に時間をかけてきた方、それなりの自負を持って開業した方ほど
軌道修正、作戦中止の決断が遅れがちで、なかには決断の遅れが致命傷になるケースも
少なくありません。
そうなってから相談に来れられてももはや手の打ちようがありません。
せいぜい(被害最小限の為に)どういった幕切れに持ち込めるか? を検討するだけです。
道に迷った際には登山グループのリーダーにはメンバーの命運迄任せられている、
自分の思い込みやプライドで軽視してはいけないはずが、優先順位を誤る。
自分だけで遭難するならまだ自業自得ですが、自分を信じて付いてきてくれてる
初心者や経験不足の仲間迄巻き添えにしてしまうのは重大な責任問題です。
起業・開業の際でもあなたの後ろにはあなたを信じている家族がいること、
開業資金を援助してくれたり保証人になってくれた両親や無二の親友がいる事
誤った判断のまま突き進むことで周囲に多大な迷惑をかけること、
ここも登山での判断ミスと共通すると思いました。
【健康体である事】
最後にその方が話した注意事項は「健康である事」でした。
その方が40代前後の時にいわゆる登山ブームがあったようで
深夜にメンバーと共に高速をひた走り明け方に登山口に到着、
そのまま登山を開始する、または深夜バスで出向いて休息なしで
行動開始といった「無鉄砲グループ」がやってしまうことだそうで、
早々に体調不良で歩行困難や、意識混濁など、中には車中で一杯
ひっかけていた、泥酔状態で登山を始めたといった非常識の極みも
いたそうです。
骨折や高熱などの正真正銘の体調不良ならはなから登山は出来ませんが
自らの不注意や自覚の無さからくる健康不良は100%自己責任です。
起業・開業の際にも同じような注意案件があります。
勤め人と違い体調不良で会社を休むことになってもリカバリーしてくれる
部署のメンバーがいますし、有給休暇という救済制度の恩恵もあります。
ですが個人事業主として開業した場合、休めば収入保障はゼロです。
代わりに店に立ってくれるスタッフもいません、あっという間に開店休業です。
何か身体に違和感を覚えたら、躊躇なく診察を受けましょう。
治療可能な疾病であるならば、出来るだけ起業・開業前までに
根治させる行動を優先して下さい。開業すれば通院すらままならないことが
あるのです。心身ともに健康体で新しい仕事に臨む、これは最低限の心構えです。
【終わりに】
あくまでも私個人の考えを紹介してきましたが
如何でしょうか、けっこうな共通点だと思いませんか?
登山では日帰り客ばかりの低山でも信じられない遭難が起きています。
傍から見れば「なんでその時に決断出来なかったの?」と思えることが
肝心の当事者には全く見えていなかった、ということです。
起業相談でも「何故このリスクについて深堀していない?」
といったことを伝えても「十分検討した結果です。」と
計画の再検討を避けるのです。
「登山でも悪天候必至と言われながら強行登山した結果、
予報が外れて絶景を独り占めできたといった極めてまれな成功例が
無いわけではない、でもそれが自分の身にも及ぶと安易に考える奴には
絶対に運は微笑まないんです。」
元登山愛好者のその方の最期の言葉は、これもまた
起業・独立を目指す方にそのまま当てはまる箴言でした。