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おひとり様の死後問題(相続財産管理人と遺言執行者)

寺田淳

寺田淳

テーマ:終活全般


はじめに

 おひとり様の財産は死後どうなるか?
自分の最期を知って欲しい友人や知人に
どうやって伝えるか? 伝えられるのか?

 おひとり様とは言え、
誰にも何も伝えないままで最期を迎えたいという方は
例外中の例外でしょう。

 今回はおひとり様の死後の問題、課題について
簡単に紹介したいと思います。

おひとり様の財産の行方

 大多数のおひとり様はご存じの事と思いますが、
相続人が誰一人いない正真正銘のおひとり様の場合、
その財産=遺産は民法の定めによって最終的には国庫に帰属します。

 2021年度には
この国庫に帰属した財産は約647億円に達しているそうです!

 詳しいプロセスは省きますが、
国庫に帰属するまでには「相続財産管理人」による手続きが発生します。
これによって、故人の遺産が国庫に帰属するのです。

 次に「相続財産管理人」について簡単に紹介します。

 相続財産管理人とは

 相続財産管理人とは、おひとり様のような相続人が誰もいない場合等に、
「申立て」によって家裁が選任するもので
この相続財産管理人によって、遺産が清算されることになるのです。

 先に述べておきますが、この申立てには「予納金」が発生します。

 では、まず申立人とはどういった人がなるのでしょうか?

 多くの場合「特別縁故者」の立場の人が申立てを行います。
おひとり様のように故人に法定相続人がいない場合、
特別に権利が発生する人を指します。

 例えば、
被相続人と死ぬまで同居して生計を一にしてきた内縁の配偶者、
長年対価なしで献身的な看護や介護を行ってきた人等が該当します。

 他にも故人の債権者等もこの申立てを行うことがあるようです。

 ただ上記に該当する方が申立てをすれば、
全てが管理人に認められる訳でもなく
家裁による判断によって選任の可否が決められます。

 「こんな形で自分の財産が勝手に処分されるのは嫌だ!」
自分の死後のこととはいえ、合点がいかないというならば
やはり法的効力のある遺言書の作成に行き着くことになります。

おひとり様の遺言

 おひとり様の場合、
遺言を残す際に問題となりがちな遺留分の配慮を気にすることはありません。
自分の思い通りの内容を記載することが出来ます。

 遠くの親戚より近くの他人、というように
近所で長年親しくしていた知人や友人、同じ趣味の仲間等、
形見分けの意味合いを含めて特定の個人に分与したり、
長い間お世話になっていた介護施設、
親身になって相談相手、話し相手になってくれたNPO団体、
生まれ育った地元への感謝と言う意味合いで自治体を対象にする、
など等、いろいろな形の財産分与を自分で決めることが出来ます。

 ただこの場合は、
「相続」ではなく「遺贈」という形での財産分与となります。

 また注意すべき点としては、
同じ趣味の仲間に対して自分のコレクションを託す場合は別にして、
法人や施設、自治体への遺贈には物品のままでの遺贈は受け付けない
ケースが少なくありません。

 多くの場合は財産を換金し、現金を遺贈する形が望ましいようです。

 その為には、
遺言書に「遺言執行者」を指定しておきます。

 本当ならば生前に自らが全財産を処分し、
現金化しておけば問題はないのですが、
自分がいつ死ぬかが分からない以上、
現実問題としてはこれは不可能でしょう。

 ただ難題は誰を執行者にするかです。

 信頼できる友人と見込んでいても、
煩雑な現金化の手続きや交渉を考えれば、
安易に執行者にはならないでしょう。

 より深刻なのは、
多額の現金化された財産に魔が差すケースも
残念ながら全く無いわけではないようです。

 もっと言えば、
約束を反故にしてきちんと執行してくれない場合もあるのです。

 悪意を持って故意にしない場合は論外ですが、
自分の仕事や生活に忙しく、手続きの時間が取れない為に
結果として執行が進んでないというケースもあるようです。

 理由はともあれ、
故人の想いは叶わないまま時間だけが過ぎていくのは
何ともやるせないものですね。

 やはり、この手の仕事は相手次第です。
よほどの場合でない限り専門家への相談をするべきです。

生前にやるべき事

 遺言の執行も大切ですが、
その前に自分の死を誰に知って欲しいか?
誰に伝えて欲しいか? それを誰に託すのかという課題があります。

 仮に入院や入所しているならば、
いざという時でも自身の身元は判明しています。
後は誰に自分の最期を知って欲しいか?

 その為には元気なうちに準備することです。
死亡連絡を出して欲しい相手をリスト化し、
例えば病院や施設の担当者等に託しておけば
少なくとも友人や知人への連絡だけは可能です。

 またはその旨を遺言執行者に伝えておけば
病院や施設の担当者とのやり取りで速やかな手配も可能になります。

 ですが、
旅行中やひとり暮らしの自宅で死亡した場合、
旅先では身元確認にも時間がかかったり
自宅の場合は発見が遅れたり事前に用意していなければ
連絡相手が不明というケースがあります。

 可能であれば
自分自身の情報と連絡して欲しい人物リストを作成し
財布や定期入れに入れて肌身離さず持ち歩くようにする、
あるいは自宅の目につきやすい場所に貼り出すなど等、
短期間で身元確認や訃報連絡が出来るようにしたいものです。

 最も注意すべきは 
現在心身ともに全くの健康体というおひとり様です。

 自分には生前整理や遺言作成、遺贈の準備など、
まだまだ無縁の話と考えて何ら行動を起こさないケースです。

 こういう方が急な事故や病気で最期を迎えた場合、
どういう結果を招くかはあえて書く必要はないでしょう。

 しかも残念ながら
私の知る範囲のおひとり様シニアで健康体の方の殆どが
このパターンに該当するのです。

 却って長患いの方や
九死に一生のような危機を経験した方は生前準備に前向きです。

 相続財産管理人と遺言執行者
どちらも自分の死後に遺された財産の始末には避けて通れない課題です。

「後のことは遺された者の中で自由に決めて構わない?」
 それとも
「自分の遺志を確実に実現して欲しい?」

 おひとり様であれば、
まずこの2つについて、自分なりに考えてみては如何でしょうか?

 出来るうちにしておいて損は全くありません。
明日出来る事なら、今日でも出来るはずです。

 死後に問題を残さない為にも、
生前にやるべきことをやっておきたいものですね。

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寺田淳
専門家

寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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