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年代別に変わる重要課題とは?

寺田淳

寺田淳

テーマ:50歳からの人生


【はじめに】

 前回のコラムでは60才、定年退職という区切りで直面すること、
留意すべきことについて紹介しました。

 これに対し、なぜか30代40代の会社員の方々から
「我々の世代で気を付けるべき点についても紹介して欲しい。」
という声が寄せられてきました。

 またこれとは別に60代以上の方からは「息子世代に伝えておくべき事」
についての問合せも出てきました。概ね20代半ばの世代のようです。

 このコラムでは
主にシニア世代を対象にしたテーマを採り上げてきたのですが
今回はこの様な声を受けて、20代から注意すべき点について
私の経験から感じたこと、私が思うところを紹介したいと思います。

【20代(10代を含めて)の場合】

 まず、社会人1年生となってから3年程度を経過した20代前半から半ば、
ようやく仕事に慣れてきた、ひとりで業務を任せられる頃を対象にしました。

 上司や先輩に言われるがままに動くしかなかった新人から脱皮し、
少しは自分のペースで段取りが組める、時間を管理出来るようになれば
自己の判断や責任において「自己投資」を意識したいものです。

 就職後3年も経過すれば、社会人としての基礎も内外から求められます。

 昭和の時代に新社会人になった個人的な経験から言わせてもらえば、
入社1年目は仕事以前のビジネスマナーや社内の組織構造、
業界の歴史や慣習等自分の置かれた環境を把握し、理解すること。
これだけで1年目は終わったという記憶しかありません。

 1年経過後からようやく上司の指示に従って業務に従事し、
与えられた課題をこなすことに慣れてきたと思います。

 ただ言われた通りの行動とはいえ、課題は出てきます。
うまくこなせればこなせたで、今一つうまく進まなかったら
進まなかったで、なぜこうなった?という問題意識は持てるはずです。
さらに推し進めれば今の自分に足りないものは何か?
何を身につければより効率よく業務を遂行できるかといった
問題意識や課題が自ずと分かってくるはずです。

 より期待値の高い課題に取り組み、成果を残したいのであれば、
業務に必要な語学力の習得や業界知識、高度なビジネススキルの習得、
これらを自ら進んで行うことが次代の自分に向けた自己投資に繋がります。

 私の知る中でも「自称企画力の申し子」と吹聴する後輩がいました。
彼は首都圏の営業所配属でしたが、本社企画への異動を熱望してました。
ですが、既に当時は個人にパソコンが用意され社内のやり取りはメール、
文書はExcelやWordで、企画書はPowerPointで提出が当たり前の時代でしたが
彼はこれらのスキルが全くなく、手書きのFAXという前時代的手段でしか
対応出来ませんでした。 当然企画室配属以前の個人の課題なのですが、
自己投資をする気は全くなく、却ってその為の講習会を会社が用意すべきと
他責に徹していました。

 当然ですが、一度も本社に異動することなく数年後には自主退職しました。

 この例はかなり極端ですが、自分の要望を聞いてもらうには
相手が聞く耳を持つような素養を自己責任で身につけておくべきでしょう。

 海外勤務を目指すなら、語学力はまず必須のスキルと言えるでしょう。
自費で語学教室に通いスキルアップを図る人間と会社が研修をすべきと
問題提起だけで足踏みしている人間と、会社側はどちらを重視するかは
言うまでもないことだと思います。 

【30代の場合】

 大半の方は既に結婚し、家庭を持っているはずです。
多くの場合、既に子供もいることでしょう。

 家庭があれば家族を養うという最重要な課題があります。
子供がいた場合には、さらに子供の教育費や確実に発生します。

 子供が成長するにつれて、塾や各種の習い事も必要になるでしょうし、
私立の学校に進む場合は、より高額な学費も発生します。

 自分自身も勤続10年前後となり、
会社でのポジションも向上し、仕事が占める比重は益々大きくなります。
公私にわたって気が抜けない世代が30代といえるでしょう。

 20代で自己投資、自己研鑽を図るとした理由の一つは
会社内、家庭内での多忙さが30代になれば激増すると思われるからです。

 無論、30代から自己投資を始める方も多くいらっしゃいますし
20代から引き続いて研鑽に励んでいる強者も少なくありません。

 30代で特に意識すべきは、
「限られた時間の最大限の有効活用」の意識です。
不思議なもので時間に制約が多ければ多いほど、集中力は高まりますし
理解力や行動力も比例して向上するようです。 

 もうひとつ、個人的にこの年代でやっておくべきことと思うのが
社会的な教養の習得です。

 仕事以外は何も知りません、仕事の話題だけで他に興味はありません。

 20代の頃に教養を身につけておけばよりいいことですが、
先述した様に仕事上のスキルアップ、自己投資を優先すればそうもいきません。

 音楽鑑賞や舞台観劇、歴史探訪や史跡巡り、幅広い読書も30代までに
習慣付けが出来れば、時間のやりくりは比較的容易になってきます。

 特に30代で会社の代表として年上の取引先との会食や接待の際に
仕事以外の話題を口にしなければ、それは接待とは言えないでしょう。

 これが40代になれば「そのくらい知っていて当たり前」と見られることでも
30代でその話題を知っていれば「若いのによく勉強している」となります。

 公私にわたり多忙の極みともいえる30代で
どうやって仕事、家庭、自身の為の時間をやりくり出来るのか?

 仕事に関して言えば、自分ひとりで抱え込むことはしないことです。
30代で多く見受けられるのが「スーパー営業マン」で満足する姿です。
20代の部下に説明するより自分が動いた方が早く確実に結果を出せるから。
これは当たり前の事で、経験の差があるからこその「格差」なのです。

 本当に30代で求められるのは
「人を活かす、人を使って成果を出す。」ことなのです。
 
 自分は現場から一歩引いて俯瞰的な立場で向かい合うことが重要です。
「スーパー営業マン」ではなく「課長・次長クラスの仕事を試す立場」
という自覚を持てば、人と時間の有効かつ効率的な使い方を体得出来ます。

 その為にも趣味や教養を高めることを意識していくことで
周囲からの評価も「仕事以外の人格的な優位性」を認めることとなり
組織を動かすためのリーダーシップの形成にも繋がるのです。

 公私にわたり多忙な時期になる30代ではありますが、
この時期に培ったスキルや知己を得た人脈は、40代50代のみならず、
退職後の第二の仕事、第二の人生を決める可能性も秘めているのです。

【40代の場合】

 40代ともなれば、いよいよ管理職のポストに就く世代です。
部下の管理やチーム成績の向上を図ることが業務のメインとなります。

 ますます部下の評価、成果の判別等に重い責任を負うことになります。
ノルマ達成だけを評価基準とするか?
結果に加えてそのプロセスにも評価を与えるのか?
個人行動と組織行動の区分とその評価基準は?
等といった、完全に貴方自身の評価で部下の将来を決める仕事です。

 加えてその評価の適否によって、
次は貴方自身が上司からも評価を下されるのです。

 特に最近は男女差で評価をすれば管理職失格の烙印を押されたり
賭ける言葉の選択を間違えればセクハラ、パワハラ、モラハラと
油断も隙も無いやりとりを強いられます。

 場合によってはこの時点で年上の部下を任されるケースもあるでしょう。

 この3年間はコロナ禍によってリモートワークが常態化し
せっかく配属された新入社員も一度も対面しないまま2年間過ごした。
異動があっても送別会も歓迎会も見送りとなりコミュニケーションが
全く途絶されたといった職場環境の悪化も加わっています。

 こういう時にこそ、職場の責任者の在り方が問われます。
人心掌握の為に何をすべきか? を常時考えることがこの年代の
近年最も求められるものであって、最大の課題と言えるのではないでしょうか?


 家庭の中でもより重要な課題に遭遇する時期です。
親の高齢化が始まり、概ね60代から70代に差し掛かる頃です。
そろそろ病気の発症や事故などで通院、入院を意識する頃であり、
場合によっては入所、介護と言った課題が発生してもおかしくありません。

 実際、私の周囲に聞いてみたところ、
自分が40代の時に両親のどちらかに変化が生じていた、
という声が予想以上に多かったと記憶しています。

 具体例としては、
父親が再雇用の期限が来て全くの無職になった、
無趣味だったことも災いし、外出もせずに終日家にいるようになった。
その結果母親との関係が悪化し、あげく熟年離婚の話まで出てきた。 

 不注意で転倒しその後寝たきりになってしまった。
若いころからの趣味だったゴルフで腰を痛め歩行が困難になり、
引きこもりになってしまったなど等、

 想定外の事態に遭遇した結果、大きく家庭環境が変わるケースは
決してレアケースではなく、他人事でもないのです。

 親の問題で介護離職やそれに伴う離婚等家庭に起因するリスクは、
概ね40代から認識しておくべき課題となります。
 

【50代の場合】

 この時代は家庭の問題に加えて自分自身の問題が顕在化します。
サラリーマンの場合、出世争いもここでほぼ順位確定となります。
定年退職までの残された会社人生をどう有効に過ごすかが課題です。

 定年まで今のまま粛々と働くか? 早期退職で新たな仕事に就くか?
仮に65才定年制となっていても、今や人生100年と言われる時代です。
残る35年間を恙なく過ごすためのライフプランをどう考えるか?
少なくとも50代のうちには決めておきたいものです。 

 どういうセカンドキャリアを望むかで50代の過ごし方が決まります。

 さらにプライベートな面でも大きな問題発生の時期です。
仮に30代で住宅ローンを組んでマイホームを手に入れていた場合、
当時は30年、35年ローンが当たり前でした。 

 それが50代になった現在、マイホームも加齢による不具合が始まるのです。
外装から内装、水回り等、大規模な改修が必要になる頃です。

 一戸建てでもマンションでも状況にさほど違いはなく、
出費額は相当の覚悟が求められるでしょう。 
このタイミングで早期退職や転職、起業・開業を目指すとなれば、
今後の収入不安が解消されない限り家族の理解を得るのは難しく、
説得には相当なやりとりを強いられることは避けられないでしょう。

 それ以前に今の勤務先自体が安定経営を継続出来ているかどうか? 
こちらについても絶対の保証などはありません。

 自分たちの親の高齢化に伴う諸問題に加え、
子供たちも就職・進学といった課題に直面します。

 自身は今後のライフプランを求められ、
さらに高額なマイホームの改修・修繕費の工面も考えなくてはいけません。
最も多方面からの課題が同時に噴出する時代でしょう。

 そして、この時代を乗り越えなければ 
次の60代に先送りされた課題はどんどん解決困難な難問と化します。 

【先送りではなく先取りを】

 60才になって「この問題は以前から分かってはいたんだが」
「せめて50代のうちに手を付けておけば」等と悔いても後の祭りです。

 ここで紹介したような問題は先送りすればするほど解決困難なものに
成長していくのです。自然解消することは決してありません。

 問題を見て見ぬふりをしての先送りではなく、
いずれ遭遇するであろう問題は先取りして解決に向けた行動を起こす。

 まさに私の理念と言える「先憂後楽」の考えで
各年代における問題に向き合ってもらいたいものです。

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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