記憶に残った起業・開業相談 その1
【今日のポイント】
ここ数日の間に一気にコロナ感染者が増加しています。
今後の推移によってはせっかくの通常勤務からまたもリモートワークへ、
即ち「出社に及ばず」に戻るのではと、不安を口にする方が増えています。
2年以上にわたるリモートワークによって激変した職場環境と労働環境。
今日は、今もリモートワークに順応しきれていないシニア管理職の悩みを
ランダムに紹介したいと思います。
【根回し、下打合せの功罪】
ある大人気ドラマの決め台詞にあった
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きているんだ!」
の真似をすれば、
「仕事の決定事項は会議で決まるものじゃない、
会議前のコネと周到な根回しで決まるんだ!」
と言った仕事のスタイルは、このコロナ禍によるリモートワークによって
完全に片隅に押しやられました。
今まで欠かせないものと確信していた仕事の進め方が、
一瞬にして異なる仕事のスタイルで殆ど支障なく業務が遂行出来ている事実に
「大多数の昭和世代の管理職」は混乱状態に陥りました。
実際、サラリーマン時代の私自身も経験して来た事ですが、
部内会議等の重要会議の前に限られた関係者だけで喫煙ルーム(今や遺物ですね)で
前もって会議の進め方を確認し、落としどころを確認してから会議に臨む。
これ以外にも、
他部門の同期や先輩・後輩とのコネ、人脈で下地作りを進める。
さらには夜の飲み会や、休日のゴルフ場などで仕事を進める。
私は嗜みませんでしたが、得意先を交えての麻雀の場で
「懇親会兼当月の売上交渉」が盛んに催されていました。
この3年の流れの中で、
上記のような昭和の営業スタイルの管理職は、
不得手なデジタル機器の操作に悪戦苦闘し、直接対面しない商談スタイルに
かなりのストレスを感じ、部下との距離感にも苦労していると口にしていました。
さらに意外だったのが、
まだ40代から50代なりたての管理職からも、
「対面での営業スタイル」「根回しの見直し」といった
「昭和のやり方」の肯定意見が出てきたのです。
入社前から携帯電話やパソコンのある生活をしてきた世代。
入社当初は彼も事前の打ち合わせに全力を注ぐやり方に疑問を感じつつも、
上司の指示に従って、関係各所を奔走してきたとのことでした。
ですが、
彼らが管理職になり、この3年間のコロナ禍の中で
リモート会議では得ることが出来ない直接対面で仕事を進めることのメリット、
これを再認識したというのです。
以下は50代後半から60代の管理職や社員から出てきた苦労譚の一部です。
「リモートワークのせいで、事前の根回しが出来ず、
会議中の雑談もしづらい環境になってしまった。
確かに必要な案件だけをやりとりするには効率的だが・・・」
「会議の空気を読めなくなった、
いい塩梅に議論が白熱した際に従来は会議の席上の勢いや熱量で
結論を下す潮時が分かったのだが、画面越しの会議ではそれが出来ない。」
「会社内での打ち合わせ時に課題が生じた場合、
関連部署に情報収集や相談が気軽に出来たのだが、
リモートではいちいち回線を繋がなければ出来ないし、
そもそも他部署のメンバーとどうすればリモートで繋げられるかが分からない。」
全てとは言いませんが、この「先輩管理職の悩み」に共感を覚えてきたようです。
特に、リモートワークの導入で、
「会いたくない上司に会わずに仕事が出来る。」
「自分のペースで仕事が出来る。」
ことに、当初は大いに喜んでいたそうですが、
「気軽に相談出来た(会いたい)人にも会えなくなった。」
「他のメンバーの進捗が把握出来ず、却って不安が増した。」
といった面に戸惑い始めたと言います。
あくまでも事例は「営業職」からの情報をベースにしていますが、
その他の職種でも共通する点は少なくないのではと思います。
彼ら若手曰く
「若手の頃と管理職になっての仕事の進め方の違いが、
このコロナ禍のリモートワークで非常によく認識出来たのは
大きな収穫だった。」とのことでした。
前向きな感想で終わってくれたのは、こちらも安堵した次第です。
【メンバーとのコミュニケーションの取り方】
今までは職場内の空気や仕事の進捗度合いを読んで、
世間話や社内の噂話を所属長から口にしたり、部下同士の会話に参加したり、
一人に振った話題について他のメンバーに感想を尋ねたり、
割り込んできたメンバーに話を振る等、全方位でのやりとりは容易でした。
要は1対1の会話から1対多にも即座に変化できる、
逆に多対1,多対多の会話から1対1にも即対応出来るのが対面での仕事のメリット、
いわゆる「ワイワイガヤガヤ」風通しのいい職場で仕事に励む、
と言ったイメージです。
さすがにこれはリモートワークではどうにも実現が難しいもののひとつで、
管理職のみならず、部下の側からも不便になった項目として採り上げていました。
今後の慣れや使用方法の見直しで改善が期待はされますが、
現状では双方にとって大きな課題のようです。
【他部門(の同期)との交流】
毎年定期的に一定数以上の新人を採用するような企業の場合、
ごく自然に「同期会」や「同窓の集まり」は発生します。
同じ部門は言うまでもなく、
他部門や地方に配属になった同期などは、ある時は相談相手に、
ある時は情報の入手先にもなる貴重な人脈です。
かといってあまりに結びつきが強すぎると、
周囲からは排他的集団と見られ兼ねません。
さらには、出身校で固めた集団同士でいがみ合うようでは本末転倒です。
また、こういった集まりやグループ化が
先に述べた「根回し」「忖度」と言った土壌を生みやすいのも事実です。
リモートワークになった際に大きな障壁となったと言われたのが、
このような人脈を容易に活用できなくなったという点でした。
今までは、就業時間中でも、フラリと当該のフロアに足を運び、
在籍していればその場でやりとりをし、不在でも周囲に言伝をしたり、
メモを置いてきたりで折り返しの連絡を待つ等は問題なく出来ていました。
これも、自宅でのリモートワークになった為に出来なくなったのです。
会社によっては他部門とのリモート回線を設定していない、
あるいは事前に登録しておかないと利用出来ないというケースもあるようで、
明確な業務上の関係がない部署とのやり取りでは当事者自身も躊躇してしまい、
本当に必要な情報交換に支障をきたしたことも事実です。
【部下への仕事の指導】
コロナ禍がピークの時は、特に営業部門は会社への出勤も制限され、
取引先にも自由に訪問が出来ず、新規開拓の営業も大幅に制限される。
今まで誰も経験したことのない仕事の進め方に直面しました。
ただでさえ経験不足の若手セールス等は
リモートワークの為に、上司や先輩と直接ひざを突き合わせての相談も出来ず、
どう行動すればいいか迷走します。
更にこれと同じく、
管理職や先輩セールスにとっても未曽有の経験であって、
的確なアドバイスや、不安を完全に払しょくするような経験談を
話す事も出来ませんでした。
この中で、
一部の管理職に「とにかく足で稼げ」や
「こういう時こそ柔軟な発想で頑張れ」
等の抽象論だけで叱咤するタイプや、
「電話でもメールでも何でも使って商談を継続しろ」
といった根性論に徹するようなタイプがいたようです。
要は自分でも最適解が把握出来ていない為、虚勢を張るしか出来ないのです。
似たようなタイプに、「聞き上手でない」上司の存在も挙げられました。
部下からの中間報告や相談に対し、なぜか最後まで言わせない、聞かないで
最後は過去の自分の経験、特に成功体験をアドバイスとして話を始めるケースです。
最後まで言わせないのは、
聞かれたことに答えられないことを悟られたくない。
自分の弱みを晒したくない、だから最後まで言わせない、
聞かないことでうやむやのまま話を終わらせるのです。
都合が悪くなったら、なぜか他からの相談が入ってきたと、
強制的に話を打ち切るような「逃げ技」が皮肉にもリモートワークでは可能です。
このままではいけないと思っても、
腹を割って相談出来る同僚や同期とも、安易に居酒屋で集まる訳にもいきません。
ますます手詰まり感だけが募るのです。
【リモートワークで立場激変】
仮に、コロナが完全に終息したら
「元の職場で元の仕事の進め方」が復活するのであれば、
あと1,2年後と言われても何とか凌いでいけるのではと思えます。
ですが、最近の風潮では
コロナ後も「自宅仕事」「リモートワークの定着」が取沙汰されています。
多くのシニア管理職が最も不安に思っているのが、この点でした。
詳細は省きますが、
激変した管理職の仕事に多くの方が将来の不安や、
自身の能力不足を感じたと話しています。
ただ、当初はシニアにとっては向かい風の職場環境であり、
若手社員や中間管理職にとって無駄が省ける新たな職場環境と言われてましたが、
ここにきて、若手世代もリモートワークへの早急な集約には懐疑的なようです。
シニアにとっては今まで経験したことのない人事管理、業務管理の場に、
若手社員にとっては誰も経験していない状況での業務遂行を図る場に、
立場は違えど、共に激変した環境で、自分の立ち位置を見出さなくてはいけない。
タイトルではシニア管理職の悩みとしましたが、実際は職場のメンバー全員の悩みで、
全員で解決に向けて協力する必要のある課題でした。