教育機関の冥利と責務‐今回の漢検実施に際して

小田原漂情

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テーマ:漢検

 昨日11月15日は、2024年度第2回漢検(準会場言問学舎で10月25日に実施)のWeb合格発表日でした。今回は近年になく18名の申し込みがあり(1名欠席で17名受検)、多くの受検者が合格したのですが、その中に、二十年以上検定をつづけて来た歩みにあって特筆すべき、うれしい合格がありました。

 群馬県北部から7級(小学5年生相当)を受けに来てくれた小学2年生の子が、190点以上の高得点で、みごとに合格したのです。電話で問い合わせがあった時からずっと気にかかっていたので、いつも以上にこの日の合格発表を待っていて、昨日出社後、いの一番に確認した次第でありました。合格確認後、すぐその子のお母さんに連絡したことは言うまでもないことです。

 その子が都内文京区まで漢検を受けに来てくれたのには、教育関係者として何とも表現しがたい事情がありました。その子は、当初は通っている小学校で漢検が実施されるというので申し込み、一生懸命勉強していたのだといいます。ところが学校の方が、申し込み者が検定の最少実施人員に満たなかったため、実施を見送ることになってしまったのです。頑張って勉強したのに学校で受けられないこととなり、がっかりしているその子のために、親御さんが受検できる会場をさがしまわって、ネットで準会場言問学舎を見つけて下さったようです。

 何とも表現しがたい事情、というのは、こういうことです。各種検定には、「〇〇名から申し込み可」という最低実施人員のきまりがあります。現在、漢検と英検は10名で、数検は3名です。募集ツアーの最少催行人数のようなものですから、これはある意味必然的なことでしょう。その前提で募集をしている学校が、「人数に満たなかったから実施見送り」の判断となるのも、やむを得ないと思われます。言問学舎では、1人でも受け付けたら必ず実施、と決めていますから、本当に集客力が及ばなかった昔は学生アルバイト講師に無料で受けてもらうなど、不足の検定料は塾か私の持ち出しで実施したこともありますが、公立学校ではそうもいかないでしょうね。

 ただかわいそうなのは、子どもです。一生懸命勉強したのに、自分以外の原因、それも学校で受検者が足りないから試験そのものが行なわれないなど、本人にとっては理不尽以外の何ものでもないでしょう。ご両親もお子さんの気持ちが痛いほどわかるので、わざわざ東京まで連れてきて下さることを決めたに違いないと思います。CBTもあるとはいえ、中学生ならまだしも、小学校低学年の子ではPCを使って受検すること自体、漢字の勉強、国語の勉強として筋が違うように思われます。受検上の不利もあるでしょう(そのためか、漢検では7級からがCBTの対象となっています)。

 言問学舎としては、そんなにも一生懸命漢字を勉強し、受検しようとしているお子さんの役に立てるのは、教育機関冥利に尽きる、うれしい話でした。だから時間など可能な限りの便宜を図り(7級はその子が間に合う時間に設定し、他の受検者に合わせてもらいました)、歓迎した経緯があります。それゆえ特筆すべき、うれしい合格だったわけですが、各地で学校の生徒数が減少し、学校であってさえ10人の受検希望者が集まらないとは、良いとか悪いとかの問題でないだけに、本当に何と言っていいかわからない、複雑な心境でありました。大都市部なら外部受検可能な準会場に行けるかも知れませんが、そもそも準会場自体が存在しない地域も多いことでしょう(学校だけが、その可能性を持っているのです)。

 せめてもこうした事象に立ち会った教育者の責務として、漢検協会に電話して、来年以降、小学校の準会場については3名でも5名でも受検できるよう配慮していただくことはできないかと、お願いをした次第であります。もちろん私どものできることにも限りがありますが、教育機関の一員として、困っているお子さんたちのためには今後とも能う限り力を注ぎたいと考えます。

※大きな、深刻な問題ですから、ぜひ多くの方々に拡散していただけますよう、お願い致します。


国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師
小田原漂情
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小田原漂情
専門家

小田原漂情(学習塾塾長)

有限会社 言問学舎

自らが歌人・小説家です。小説、評論、詩歌、文法すべて、生徒が「わかる」指導をします。また「国語の楽しさ」を教えるプロです。みな国語が好きになります。歌集・小説等著書多数、詩の朗読も公開中です!

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