【特許はお金がかかる② 全部を出願しなくていい】
◆知財部門(知財担当者/責任者)の役割
知財部門(知財担当者/責任者)の役割は、
企業規模や業種によって多少異なりますが、
いまは、単に「特許を出願する人」ではなく、
経営戦略・事業戦略・技術戦略と知財を結びつける役割、ということができるでしょう。
まず、知財部門/担当の役割を列挙してみました。
知財戦略、経営支援、社員教育
発明発掘、先行調査、出願、権利化
リスク管理、契約対応、他社対応
事務処理、外部連携、資産管理、、、
その対象は、
特許、商標、意匠、考案、著作権、アイデア、ノウハウ、ブランド、営業秘密、ドメイン、回路配置、植物新品種、、、、
などに広がります。
知財担当者をテーマにしていますが、ここでいう「知財担当者」は、主に「企業の知財担当者」を想定しています。
特許事務所、特許庁や関連団体などで働いている方々も、広い意味では知財に携わる方々ですが、ここでは原則として含みません。
◆知財担当者と出願
最もイメージしやすい業務で、知財担当者の役割では、まずこれでしょう。
特許、実用新案、意匠、商標を特許庁へ申請(出願)することです。
これに関与しない知財担当者は、ほとんどいないと思います。
ここで「関与」と書いたのがポイントです。
一般的な企業の知財担当者自身が特許庁に出願手続をすることはあまりありません。
多くの場合、特許庁への出願は、特許事務所の弁理士に依頼します。
企業が出願人となり、弁理士が代理人として特許庁への手続を行います。
これを出願代理といい、その弁理士を出願代理人といいます。
弁理士に出願代理を依頼せずに、企業が自ら出願することは可能です。
この場合はその企業の知財担当者が、特許庁に直接出願手続を行うことになります。
この場合は、出願手続が知財担当者の役割になります。
ちなみに私は、企業の知財担当者として長く出願に関わってきましたが、特許庁に直接、出願手続をしたことはありません。
では、企業の知財担当者は、「出願」に対して何をしているのでしょうか。
ここが、知財担当者の役割、いる・いないの大きなポイントで、次回以降書いていきます。
◆知財担当者と発明
特許の仕事は出願から始まるのではないです。
出願に至るまでに何をするか。
ここに、知財担当者のかなり重要な役割があります。
開発技術者から、なにがしかのアイデア・相談があがってきたときの対応からはじめましょう。
あがってきたアイデアなどを、そのまま特許事務所に依頼していては、
知財担当者としての醍醐味がなくなります。
そのアイデアは、技術者の日ごろの苦労・工夫に基づくものや、
突然思いついたものもあるでしょう。
それを最大限尊重しなければなりません。
ただし、多くの場合、それをそのまま出願しても、
必ずしも「良い特許」にはなりません。
◆良い特許とは
では、「良い特許」とは何でしょうか。
ここで、良い特許とは、を確認しておく必要がありますね。
いろいろな考え方があるのですが、
私の考えとしては、概念的に一言でいうと、
「事業に役立つ特許」
ということになるのですが、抽象的なので少しかみ砕くと、
・自社商品の重要な部分をカバーして事業を守れること
・競合他社が回避できない、回避すると性能が落ちるなど
・他社が侵害していることを確認しやすい
・先行技術との差が明確で、権利として安定していて無効になりにくい
・特許の目的に合った権利であること
です。
最後の「特許の目的」とは、
・自社技術を守るためか、
・他社を排除/牽制するためか、
・ライセンス供与するためか、
・技術提携するためか、
・資金調達や営業的効果のためか、など、
目的によって「良い特許」は変わってきます。
また、「権利範囲が広いこと」や「上位概念で権利化されていること」が、
良い特許の条件として挙げられることもあります。
それはどちらかといえば特許側から見た評価です。
事業側から見れば、単に広いだけではなく、
必要な場面で実際に使えて事業に役立つこと、
のほうが重要な場合もあります。
特許は、大きく「特許請求の範囲(請求項)」と「詳細な説明」とに分けられていて
技術者の苦労・工夫をできるだけ詳細な説明に反映させ、
権利範囲となる請求項を、発明者や出願代理人である弁理士と協力しながら、知恵を絞って創り上げていきます。
技術者の説明をそのまま聞いていただけでは、詳細な説明を充実させることはできても、事業に役立つ請求項にできないことがあります。
それを、どうやっていくか。それが発明のブラッシュアップです。
◆知財担当者と発明のブラッシュアップ
ここからが、知財担当者の大きな役割と醍醐味になります。
このために、知財担当者は、
・自社の事業内容
・業界や競合の動向
・対象となる製品や技術の位置づけ
・将来の事業展開
などを理解しておく必要があります。
そのうえで、発明者と十分にコミュニケーションを取りながら、
・発明を理解して見定める
・発明の本質を見極める
・発明者自身も意識していなかった発明を顕在化させる
・発明の本質やそのベースとなる考え方に遡って深掘りする
・将来の展開や他社の回避方法まで含めて深掘りする
ことを、
知財担当者は、
発明者と考え、弁理士と議論し、技術と事業とを行ったり来たりしながら、
行っていき、
どうすれば、この発明を「事業に役立つ特許」=「良い特許」にできるのか、
知財担当者は、もがくのです。
以上。


