受験英語における教材(参考書・問題集)の選び方
(今回は、井川治久先生へのインタビューに基づいて構成された大学受験英語コラムです。)
大学入試で英語長文の配点は高いのですが、苦手としている受験生が多いのも事実です。それだけに、長文読解を得意分野にできればほかの受験生に大きく差をつけられます。
しかし、我流で見当ちがいの勉強法で、せっかくの努力が身になっていない人が多く見受けられます。まずは、高得点を取るために勉強法から見直していきましょう。
長文読解で必要となる能力
大学受験の英語のなかで、配点が高く決して無視することのできないのが長文問題です。難関校ほど出題される英文難易度も上がり、受験生はその必要性を知りながらも苦手を克服することが難しい分野です。
重要度が周知され、力を入れる受験生が多いのにもかかわらず、なぜ長文が鬼門とされるのでしょう。それは、長文読解で必要とされる力を意識しないまま、やみくもに勉強しているからにほかなりません。
長文読解で備えておかなければならない能力は、正確かつ速く読むことです。入試問題の英語長文も、いったん訳してしまえば簡単な国語のテストと変わりありません。当たり前のことを言うなという声も聞こえてきそうですが、実際の長文勉強法を見ていくと、意外にその当たり前のことができていないのです。
とにかく数を多くこなし毎日長文と接する。いわば力業で何とかしようとしています。このようなやり方では、労多くして功少なし。身に付けるべき能力を最初に設定して学習していかなければ、本当の読解力は身につきません。
では、正確に速く読みこなすためには何が必要でしょうか。
これまでも言ってきたように、必要なのは基本英単語や文法、構文を理解する力です。その基礎を足がかりとして、長文問題を実際に解くことです。そして間違った部分を繰り返し復習する。ありきたりですが、地道な積み重ねが受験勉強終盤になり威力を発揮するのです。
長文読解問題に時間がかかってしまう原因
長文問題は、まず書かれている内容が理解できなくては話になりません。内容を把握して初めて、それぞれの設問に取りかかることができるのです。
つまり、制限時間内に問題に解答するためには、そのための時間を残し読み終える必要があります。速く読むことが重要だということです。
それなのに、実際の入試では時間が足りなかったと悔やむ声が聞こえてきます。長文に時間がかかってしまうのは、どこに原因があるのでしょう。それには大きく分けて3つあります。
1つ目は「返り読みをしている」ということ。
日本語と英語では語順が異なります。ちがう言語であるのに無理やり日本語の作法で読もうとしてしまうと時間がかかるのです。英文を文頭から文末まで読んだのちに、再度先頭に戻るということをしていませんか。
いちいち日本語の順番に並び替えて読むことを「返り読み」と称します。単純な構造の文ならまだしも、長く複雑な文では並び替えていく際に意味を間違えやすくもなります。
2つ目は1つ目と似ているのですが、「いつも日本語に訳しながら読む」ことです。
大抵の人は頭の中で英語を日本語に変換し意味を理解しています。これでは余計な工程が加わるので時間がかかってしまいます。英語のままで理解するように努め、日本語を浮かべないようにしなくてはなりません。
3つ目はテクニック的な側面になるのですが、「問題を解く順序を考えていない」ことです。
通常の学習では長文を読んでから設問に取りかかることも多いでしょう。しかし、受験英語においては、設問をざっと見てから長文を読むという方法をとることで効率よく読み進むことができます。
これは、最初に何を問われているかということを頭に入れておくことで、注目しなくてはならないポイントが浮かび上がるからです。設問中のキーワードから主題も想像しやすく、文章の内容もまったく予備知識がなく読むよりも理解しやすくなります。
最初に文章を読んでから設問という流れでは、再三文章に戻る必要もあります。わずかとはいえ設問ごとに積み重なることを考えれば無視できない時間のロスです。
長文読解で高得点を獲得するための勉強法
英語長文で高得点を獲得するためには、段階を踏んで学習を進めましょう。
まずは、すべての基本となる英単語です。文章の最小構成単位の英単語で分からないものばかりであれば、長文の理解には程遠いはずです。長文が苦手と自覚しているなら、自分の単語力を疑ってみましょう。単語帳に暗記漏れが多いレベルでは、まだ長文に挑戦する段階ではありません。今すぐ単語のおさらいから始めてください。
次は英文法です。英単語と英文法の基礎が盤石であれば、読解はぐんと楽になります。長文問題の設問のなかにも文法の知識を求められる場面が出てきます。難関校になるほど、長文問題の中でも文法を絡めた複合問題も問われます。
そして、英語構文です。構文を自分のものにしてしまえば、長く複雑な文章が登場しても、主語や述語といった構造が分かるようになります。英文の理解に役立つのはもちろんですが、読むスピードを上げる手助けもしてくれます。
例えば、次の例文をみてみましょう。
I think that you will surely pass that examination.
(あなたは間違いなくその試験に合格すると私は思います)
構文が頭に入っていなければ、「Iは私で、thinkは思う、thatは…」といったように1単語ずつ日本語に変換していくでしょう。対して構文を理解していれば「I thinkで、私は思う。that you will surely pass that examinationだから、あなたはその試験に間違いなく合格する」と、まとまったカタマリで内容を把握できるのです。
ここまできて、晴れて長文問題です。
ここまでやってきたことを意識しながら問題を解いていきましょう。教材は語数が少ないものからだんだんとレベルを上げていきます。解いた問題は間違えた部分をしっかりと穴埋めしながら復習し、完全に理解できるように仕上げます。