毎日SNSに投稿しても、教室の申し込みが来ないときは何を変える?
「年収」と書かれた数字の中身を確かめる
――独立後の収入を調べると、フリーランスの年収がいろいろ出てきます。今の給料と比べたいのに、数字が違いすぎて迷う人は、どこから見ればよいでしょうか?
新井:検索結果にある「年収」が、売上なのか、経費を引いた所得なのかを、先に見てください。たとえば、売上が同じでも、仕事に使うお金が違えば所得は変わります。数字の定義を確かめないまま、会社から受け取る給料の額面と並べても、暮らしがどう変わるのかは分かりません。まず、比べる数字の名前をそろえましょう。
――独立後に入るお金は、何段階に分けて考えればよいのですか?
新井:売上は、お客様から受け取るお金の合計です。そこから仕事に必要な経費を引いたものを、所得として考えます。さらに、税金や社会保険料を支払うと、生活に使えるお金が残ります。日常会話では、この三つをまとめて「年収」と呼ぶことがありますが、独立を判断するときは分けて書いてください。売上が大きく見えても、そのまま家計に入るわけではありません。
他人の平均より、まず自分の家計から始める
――調査に書かれている平均年収を、目標にするのはどうでしょうか?
新井:参考にはなります。ただ、調査によって、聞いている数字が売上なのか所得なのかも、答えた人の範囲も違います。平均が高いからといって自分もそこに届くとは言えませんし、低い数字を見て独立を諦める必要もありません。まず、自分の暮らしに毎月いくら必要なのかを、家計から出すほうが、具体的な計画になります。
――生活費は、今の給料の手取りをそのまま使えますか?
新井:今の手取りと、実際に使っている金額の、両方を見ましょう。住宅費や食費だけでなく、年に数回の支払いも、月ごとに分けて考えます。独立後は、仕事のための支払いと家計の支払いを混ぜないことも大切です。会社に勤めている間の給与明細と家計簿を並べれば、必要な手取りと、今は何に使っているのかが見えてきます。ほしい手取りが決まったら、仕事の経費や税金、保険料を見積もって、売上に戻していきます。
受注のない月も、計算に入れておく
――月に何件受ければよいかは、どう計算しますか?
新井:仕事一件で受け取る金額と、その仕事にかかる費用を出します。その差を、毎月必要な手取りや、事業の固定費と比べてみてください。ただし、毎月同じ件数を受けられるとは限りません。受注のない月にも、通信費などの支払いはあります。年間で必要な売上を考えて、忙しい月と少ない月を分けて置くと、毎月同じ額で割るより現実に近くなります。
――今の給料の額面と同じ額の売上があれば、安心でしょうか?
新井:売上には、経費を引く前のお金が含まれています。一方、給与の額面からは税金や社会保険料などが引かれますし、仕事に使う設備は会社が用意している場合もあります。同じ額だけを並べて安心するのは、早いですね。自分で必要な機材や通信、移動の費用を負担するなら、その分も受注額に入れて考えます。反対に、今の給料の額面を必ず超えなければ生活できない、と決めつけないでください。家計に必要な額で判断しましょう。
目標を、仕事の数に戻して考える
――数字を分けたあと、独立の準備中にできることはありますか?
新井:まず、今の仕事の一部を外から請けるとしたら、誰に何を渡す仕事なのかを書いてみてください。見積書をまとめる、納期の連絡を調整するなど、作業を具体的にします。その仕事に一件いくらの代金をつけられるのか、何件なら今の働き方の中でできるのかを確かめます。単価も件数も、考えただけでは決まりません。実際に頼みたい人の条件を聞いて、必要な時間と費用を見直します。
――検索結果の年収を見るときにも、使える考え方ですね。
新井:ええ。年収の数字を見たら、「売上、所得、手取りのどれか」「誰を調べた数字か」を確かめてください。対象が、開業したばかりの人なのか、すでに長く続けている人なのかによっても、読み方は変わります。そのうえで、自分の家計で必要な手取りに戻ります。他人の平均を目標に置くだけでは、何件受けるのかを決められません。自分が請ける仕事と必要な額を並べてはじめて、準備のための数字になります。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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