SNSで他人の成功を見て気持ちが焦る? そんな時は過去の自分を見てください
決めた結果だけを、いきなり伝えない
――起業準備で始めたネット販売が思うように進まず、続けるか、別の仕事に切り替えるかで迷っている方がいます。応援してくれた家族には、何から話せばよいでしょうか?
新井:私なら、結論だけを突然伝えることはしません。これまでにいくら売れたのか、仕入れや送料にいくら使ったのか、今どこで困っているのか。その数字を見せたうえで、続ける場合と変える場合をどう考えているのかを話します。「もうやめる」とだけ言われたら、家族は何が起きたのか分からず、心配になりますから。
――まだ続けるかどうか決めていなくても、話してよいのでしょうか?
新井:もちろんです。むしろ、迷っている段階で話して構いません。「いま決めてほしいわけではないけれど、状況を知っておいてほしい」と伝えればよいのです。家族は、事業の審査員ではありません。ただ、家計や一緒に過ごす時間に影響があるなら、判断の材料を共有する相手です。
売上だけでなく、支出と残る作業も見せる
――数字を見せるといっても、何をまとめればよいのか分からない方もいます。
新井:ネット販売なら、売上、材料費、送料、販売手数料、売れ残った在庫を一枚に並べるところからで十分です。たとえば、注文は増えているのに、送料と材料費を引くとほとんど残らないのか。あるいは、利益は出ているけれど、制作に時間がかかりすぎているのか。困っている場所が違えば、続け方も違ってきます。
――家族には、赤字を見せづらいという気持ちもあるでしょうね。
新井:見せづらいですよね。それでも、数字を伏せたまま「もう少し頑張る」と言い続けると、家族は、いつ、どこで区切るのかが分かりません。売上が少なかった言い訳をするためではなく、これから家計にどの程度の負担をかけるのかを一緒に考えるために見せるのです。見込みより支出が大きかったなら、その見込み違いもそのまま伝えたほうが、話が早いと思います。
方向を変える理由を、一つずつ話す
――販売をやめて別のサービスを始める場合は、どう説明すればよいですか?
新井:まず、今の販売を続けない理由を具体的に言います。「向いていなかった」だけでは、何を変えるのかが伝わりません。仕入れと送料を含めると利益が残らない、作る時間に対して注文数が足りない、といった事実です。そのうえで、新しく考えている仕事では何を売って、最初にどう試すのかを話します。次の仕事が必ず成功すると、約束する必要はありません。
――家族に心配をかけたくなくて、次の計画が固まるまで黙ってしまいそうです。
新井:計画を完璧にしてから話そうとすると、今の事業に何が起きているのかを家族が知らない期間が長くなります。家族の意見を全部採用する必要はありませんが、家計や生活時間に関わることは、早めに共有したいですね。「今月は在庫を増やさず、来月までに別のサービスを一つ試す」といった、短い期間の予定で十分です。次に話す日も決めておけば、その場で結論を出さなくて済みます。
家族に求めることも、言葉にする
――話し合いが、起業を続けるかどうかの賛否だけで終わらないようにするには、どうすればよいですか?
新井:何を聞いてほしいのかを、最初に伝えることです。「今日は数字を見てほしい」「来月の支出について相談したい」「方向を変える案を聞いてほしい」。それぞれ、話の目的が違います。何も言わずに説明を始めると、家族は、今すぐ賛成か反対かを求められているように感じてしまうかもしれません。
――家族の反応が厳しかったら、その日はどう終えればよいでしょうか?
新井:そこで説得しきろうとしなくていいですよ。相手が心配しているのは、生活費なのか、使う時間なのか、それともまた損をすることなのか。それを聞いてみます。答えられない点は持ち帰って、数字や予定を確かめてから、もう一度話す。話し合いは、一回で終えるものではありません。
――最初の会話では、これまでの結果と、次の予定を同じ場で見せるということですね。
新井:はい。今までの数字、続けないかもしれない理由、次に試したいこと。この三つを簡単に書き出してください。そして、何について家族の意見を聞きたいのかを一つ決めます。方向転換を告白のように扱うより、生活をともにする人に今の状況を伝えると考えるほうが、落ち着いて話を始められます。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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