三菱電機も! 黒字リストラ時代に会社員が知るべき53歳の壁と起業準備術
業務委託という名前だけで受けない
――新井さん、会社の外で仕事を頼まれるときに「業務委託でお願いできますか」と言われることがあります。最初に何を確認すべきでしょう?
新井:まず、「業務委託」という名前だけで返事をしないことです。業務委託は、法律上のひとつの契約名というより、外部の事業者に仕事を頼むときの総称として使われています。中身は、請負に近いこともあれば、準委任に近いこともある。両方が混ざることもあります。見るべきなのは表題ではなく、何をすれば報酬が支払われるのかです。
――「業務委託なら自由に働ける」と思ってしまいがちです。
新井:そこも注意ですね。雇用なら会社の指揮命令のもとで働き、時間に対して給料を受け取ります。一方、業務委託は自分が事業者として仕事を受ける形です。ただし、実態として相手から勤務時間や仕事の順番を細かく指示されるなら、名前だけ業務委託でも雇用に近づきます。契約名ではなく、実際の働き方を見ることです。
請負は完成、準委任は遂行を見る
――請負と準委任の違いは、どう考えると分かりやすいですか?
新井:一番分かりやすいのは、報酬の対象です。請負は、仕事を完成させる約束です。Webサイトを作る、記事を納品する、図面を仕上げる。こういう「できあがり」が決まっている仕事は請負に近い。完成した成果に対してお金が払われるので、仕様や検収、修正範囲を決めておかないと揉めます。
――準委任はどう違うのでしょう?
新井:準委任は、決められた事務を誠実に進める約束です。相談に乗る、調査する、運用を支援する、顧問として助言する。成果物がゼロという意味ではありませんが、必ず特定の結果を出す約束ではない。だから、どこまで関わるのか、何を報告するのか、いつまで続けるのかを決めておく必要があります。
契約前に文字で残す最低条件
――知り合いからの依頼だと、契約書なしで始めてしまう人も多そうです。
新井:多いです。でも、口約束ほど危ないものはありません。最低でも、委託内容、報酬額、支払期日はメールで残してください。請負に近いなら、成果物、納期、検収、修正回数、中途解約時の精算も必要です。準委任に近いなら、稼働範囲、報告方法、連絡頻度、終了条件を確認します。
――そこまで聞くと、相手に面倒だと思われないでしょうか?
新井:むしろ、最初に聞く人のほうが信頼されますよ。2024年11月1日にはフリーランス法も施行され、委託内容や報酬、支払期日などを文字で示す重要性はさらに増しています。こちらが強く出るためではなく、互いに勘違いしないために残す。仕事を受ける側が、自分の責任範囲を理解していることは大きな信用になります。
時間の切り売りから立場を変える
――業務委託を受けると、結局は時間を売るだけになってしまうこともありますね。
新井:あります。最初は時給や日当で受けるのも悪くありません。ただ、ずっと相手の細かい指示で動く形だと、会社の外に出ても雇われ感覚のままです。たとえば調達や資料づくりの経験がある人なら、時間だけを請求するのではなく、月ぎめで改善提案と報告書を出す形に変えられます。契約の作り方で、同じ経験の単価は変わります。
――契約の種類を理解すると、働き方の設計にも関わるということですね。
新井:そうです。請負なら、何を完成させるのかを明確にして、追加作業は別料金にする。準委任なら、助言や運用支援の範囲を決めて、成果を保証する言い方を避ける。ここを曖昧にすると、良かれと思って引き受けた仕事が、いつのまにか終わらない雑務になります。起業を考えるなら、安く便利に使われる立場から抜ける意識が必要です。
返事の前に一文で確認する
――これから初めて業務委託を受ける人が、今日からできる確認はありますか?
新井:返事をする前に、こう聞いてください。「これは何を納品すれば完了ですか? それとも一定期間、相談や作業を進める契約ですか?」この一文で、請負に近いのか準委任に近いのかがかなり見えます。続けて、報酬、支払日、途中で終わる場合の扱いを確認します。
――難しい法律用語を覚えるより、まず責任の分かれ目を聞くということですね。
新井:その通りです。業務委託は、ただ安く仕事を請けるための形ではありません。成果を約束するのか、行為を誠実に進めるのか。そこを分けてから受けると、仕事の組み立て方が変わります。会社の外で仕事を持つなら、契約も起業の大事な土台です。目の前の一件を、請負か準委任かに分けて見るところから始めてください。
――受ける前の確認が、自分を守ることにもつながるということですね。ありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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