講座を開いたことがなくても、セミナー講師は始められる?

新井一

新井一

テーマ:起業

講師になる前に、誰に何を教えるかを決める

――人前で話した経験はあるものの、自分の講座を開いたことはない方がいます。セミナー講師になるには、まず資格を取るべきでしょうか?

新井:講師を名乗るための、国家資格のようなものはありません。話し方の本を読み続けてから始めるより、今説明できることを一つ選んで、最初の講座を開くほうが、教える仕事を試せます。ただし、教える内容によっては、専門職の業務と重なることがあります。たとえば、受講者一人ひとりの税額の計算や申告について相談に乗る仕事は、税理士業務に当たります。講座のテーマと、個別に引き受ける仕事は、分けて考えてください。

――どんな人でも、人に教えられることは見つかるものでしょうか?

新井:まず、これまで人から何を聞かれて、何を説明してきたかを思い出してみましょう。住宅展示場で、初めて会うお客様に間取りや家の性能を説明してきた人なら、「初めて部屋を選ぶときに見るところ」のように、相手がすぐ使える話を考えられます。勤務先の資料や顧客情報を、そのまま講座に持ち出すという意味ではありません。自分の経験のうち、一般の人にも説明できる内容を選ぶのです。

最初の一回に必要な四つ

――テーマが決まったら、ほかに何を決めれば開けますか?

新井:日時と場所、参加費、来てほしい人を決めます。テーマと合わせて四つです。最初の講座なら、時間貸しの会議室やオンラインで、自分が無理なく話せる日を選べます。参加費は、内容と所要時間に合わせて、来てほしい人へ説明できる金額にしてください。誰に向けた講座なのかが曖昧なまま「役立つ話をします」と告知しても、聞く人は、自分に必要かどうか判断できません。

――テーマは広いほうが、人を集められそうですが。

新井:初回は、終わったあとに受講者が一つ試せるところまで狭めると、話しやすいでしょう。たとえば、住まいに関する経験を生かすとしても、「住まいのすべて」では範囲が広すぎます。部屋を見るとき、何を確かめるのか。一回の講座で説明できる問いにすれば、参加する人も内容を想像できます。話す時間より、受講者に何を持ち帰ってもらうかから決めてみてください。

話し方の本より、実際に出る質問

――話すことに自信がない人は、もう少し勉強してからのほうがいいでしょうか?

新井:本を読むだけでは、自分の説明のどこで相手が迷うのかは分かりません。まず最初の一回を開いて、参加者に、どこが分かりにくかったかを聞いてみましょう。住宅展示場でお客様の質問を受けてきた人なら、相手の反応を見ながら説明する経験は、すでにあります。講座でも同じように、一方的に話し切るのではなく、質問を受ける時間を設けられます。質問が出なかった部分も、参加者が自分で試せるかどうかを聞いてみると、説明の足りなかったところに気づけます。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』でも、実際に動きながら技能を磨いていく人の言葉を紹介しました。

――最初から上手に話すことを、目標にしなくていいのですね。

新井:はい。ただ、聞く人が理解できたかどうかは確かめます。参加者が同じところで迷ったなら、次回は説明の順番や例を直す。もっと話し方の本を読むかどうかは、実際に話してから決めても遅くありません。

最初の受講者に、どう知らせるか

――講座を作ったら、告知サイトに載せて待てば、申し込みは来ますか?

新井:初めての講座を知っている人は、まだほとんどいません。載せるだけで受講者が来るとは考えず、テーマに関心がありそうな知人や、人が集まる場を持っている店や施設へ、日時と内容を直接知らせてみましょう。相手が困っていない話を無理に勧める必要はありません。誰に役立つかが伝わる人へ声をかけるのです。

――講師になれるかどうかは、最初の講座を開いてから見えてくるのですね。

新井:ええ。資格や話し方の本を増やす前に、教えられるテーマを一つ、来てほしい人を具体的に決めましょう。日時と場所、参加費まで決まれば、最初の一回へ誘う連絡ができます。申し込みが少なければ、参加費やテーマの言葉が相手に伝わっているかを確かめて、次に知らせる相手を考えます。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一
専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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