会社員のまま起業準備する方法|「動けない99%」を抜け出す3つの壁と乗り越え方
「好き」と「経験」だけでは留学支援は危ない
――新井さん、今日は留学経験を活かして、ニューヨーク留学のサポートで起業したいという相談です。現地生活の案内や学校選び、英語レッスンまでできそうだと感じる人は多そうですね。
新井:発想としては面白いですよ。英語、留学、海外生活は、教育でも自己啓発でも大きな市場ですから。ただし、大きな市場は競合も多い。単に「留学を手伝います」だけでは、既存の留学会社、旅行会社、個人エージェントの中に埋もれてしまいます。
――差別化が必要ということですね。
新井:そうです。たとえば「芸能留学」に絞るなら、そこには独自性があります。ダンス、演劇、音楽、映像、舞台など、ニューヨークに憧れる人は確かにいます。ただ、人数は多くありません。さらに、芸能関係を目指す方が必ずしもお金を持っているとは限らない。ここを見ないまま始めると、問い合わせはあっても売上にならない、ということが起きます。
狭い市場では「世界観」と「情報量」が商品になる
――では、最初に何を作ればよいのでしょうか? いきなり広告を出すより、まずはホームページですか?
新井:僕なら、まず信頼できるホームページを作りますね。芸能留学に関する情報がまとまっていて、読んだ人が「この人は現地を知っている」と感じる状態を作る。学校の一覧、資料請求先、費用感、レッスンの雰囲気、現地での生活、治安、住まいの探し方。そういう具体情報が必要です。
――写真や動画も大事そうです。
新井:大事です。現地で撮影した生の写真、先生へのインタビュー、日本人向けのメッセージ、先輩の体験談があると、ただの情報サイトではなくなります。さらに、複数の学校の資料を一括で請求できるようにしたり、提携校の割引を用意したりできれば、利用者にとっての価値が上がりますよ。
――「芸能英語」のような切り口も作れそうですね。
新井:そこは面白いですね。ビジネス英語があるなら、オーディション、レッスン、現地での自己紹介、ポートフォリオ説明に使う英語もあるはずです。狭い市場では、狭さを弱点にせず、深さに変えることが大切です。
ネットだけで完結させない集客設計
――集客はSNSやブログが中心になりますか?
新井:中心にはなります。ただ、芸能留学のようなテーマは、ネットだけで完結しようとしないほうがいい。ダンススクール、劇場、スタジオ、ボーカル教室、演技の養成所など、目の前に見込み客が集まる場所がありますよね。そこにチラシを置かせてもらう、説明会を開く、先生と関係を作る。地味ですが、かなり効きます。
――オンラインで広く発信しつつ、リアルな接点も持つわけですね。
新井:はい。小さな起業では、最初から大きく広げるより、濃い場所に入り込むほうが早いです。SNSでは「ニューヨークで学ぶならこれを確認して」「芸能系スクールの違い」など、見込み客が保存したくなる情報を出す。リアルでは、先生やスクール運営者から紹介してもらえる関係を作る。この両輪があると強くなります。
海外ビジネスはリスク管理を商品に含める
――海外が絡むと、楽しそうな反面、責任も重くなりそうです。
新井:まさにそこです。留学支援は、夢を売るだけでは危ないですよ。現地で事故に遭う、治安の問題に巻き込まれる、体調を崩す、住まいのトラブルが起きる。そういう可能性があります。保険、医療、緊急連絡、契約範囲、免責、個人情報の扱いまで、最初から整理しておく必要があります。
――一人で全部サポートしようとすると、背負い過ぎになりそうですね。
新井:だから、専門会社と組む選択肢も考えるべきです。あなたは集客と相談、現地校との橋渡しに集中し、旅行手配や法的に難しい部分は専門業者に任せる。留学支援は踏み込み過ぎると旅行業に近くなることもありますから、旅行業法などの確認も欠かせません。何を自分が担当し、何を外部に任せるかを決めることが、事業を守ります。
料金は「相談料」だけで考えない
――料金設定はどう考えればよいでしょうか? 相談料をいくらにするかで悩みそうです。
新井:まずは同業他社を見ましょう。留学業界では、相談が無料で、学校や旅行会社から紹介料が入る形もあります。授業料や渡航費にサービス費用が含まれているケースも多い。だから「1時間いくら」だけで考えると、競合と比較されたときに負けやすいですね。
――提携先からの成果報酬も設計に入れるということですか?
新井:そうです。学校からの紹介料、旅行会社とのタイアップ、英語レッスンの継続課金、出発前講座、現地生活マニュアル、保護者向け説明会。収益ポイントを複数持つと安定します。ただし、紹介料を優先して合わない学校を勧めるのは絶対にダメです。信頼を失ったら終わりですから。
小さく始めるなら「営業役」からでいい
――会社員のまま始めるなら、どこまで自分でやるのが現実的でしょうか?
新井:最初は、すべてを抱え込まないほうがいいですね。まずは情報発信と個別相談、そして提携先の開拓からで十分です。現地サポートを自前で全部やるのは、時間も責任も大きい。むしろ、信頼できる専門家や学校とつながり、あなたは「芸能留学を考える人の最初の相談窓口」になる。この位置取りなら、会社員のままでも始めやすいですよ。
――最後に、このテーマで起業したい人へ一言お願いします。
新井:海外や留学は、夢がある分だけ、見落としも増えます。だからこそ、最初に見るべきは「憧れ」ではなく「採算」と「責任」です。誰に、どんな価値を、どこまで提供するのか。そこを絞って、リスクを管理しながら小さく試す。これができれば、狭い市場でも十分に勝負できますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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