個人事業の屋号はどう決める? 後から変えられる? 口座やカードは作れる?
仕事を増やす前に、失いたくないものを考える
――会社に勤めながら、もう一つ仕事を持ちたい人がいます。パラレルキャリアには、どんなデメリットがありますか?
新井:僕が一番心配するのは、二つ目の仕事のせいで、今の仕事を続けられなくなることです。会社員のままなら、新しい仕事が思うように進まなくても、毎月の給料を受け取りながらやり直せます。ところが本業まで続けられなくなれば、その余裕も失います。新しい仕事の売上がまだないうちに、そこまで賭ける必要はありません。まずは本業を守れる範囲で始めることです。
――収入が増える可能性ばかりを見ていると、本業への影響を見落としそうですね。
新井:そうですね。二つの仕事を持つこと自体が悪いわけではありません。問題は、二つ目の仕事に使う時間が、本業の勤務時間に上乗せされることです。帰宅後の数時間を全部仕事に充てれば、休息や睡眠を削ることになります。次の日の勤務に響くようなら、続け方を変えないといけません。
届け出ができても、無理なく働けるとは限らない
――勤め先が副業を認めている場合は、届け出を出せば安心して始められますか?
新井:届け出は大切ですが、それだけで何をしてもよくなるわけではありません。厚生労働省のモデル就業規則では、勤務時間外にほかの仕事をすることを認める一方、本業に差し支える場合や企業秘密が漏れる場合などには、会社が禁止・制限できる形になっています。これは会社が就業規則を作るときのひな形です。実際には、自分の勤め先の規則と届け出の書式を読んでください。事業を自分で始める場合や仕事を請け負う場合が、どう扱われているかも確認したいところです。
――届け出では、何を伝えることになりますか?
新井:何の仕事を、いつ、どのくらいする予定かを考えておく必要があります。会社は本業に支障が出ないか、企業秘密が漏れないか、働く時間が長くなり過ぎないかを見ます。仕事の案だけ決めて時間の見通しがないと、本人も無理に気づきにくいでしょう。まだ内容を決めていないなら、届け出を急ぐ前に、どんな仕事をしたいのかと使える時間を整理してみてください。
平日の夜を全部使わない
――使える時間は、どう見積もればいいでしょう?
新井:理想の一週間ではなく、普段の一週間を見ます。勤務と通勤、家の用事を入れたあと、どこに時間が残りますか? 毎晩できるつもりでも、疲れて何もできない日はありますよね。平日の夜に仕事を詰め込むより、休める日も含めて続けられる予定にしてください。依頼を受けるなら、作業だけでなく、相手との連絡や納品にも時間が要ります。作業に2時間かかる仕事でも、返信や修正を含めたら2時間では終わりません。予定を組むときは、作業時間だけを数えないことです。
――最初からたくさん受けないほうがよさそうです。
新井:はい。一件受けたら、終わるまでに何時間かかったか、翌日の本業に影響がなかったかを見ます。負担が大きければ、次は受ける量や納期を変えられます。二つ目の仕事は、増やす前に続けられる量を知るほうが大事です。売上が出ても体がもたない仕事なら、長くは続きません。
本業と二つ目の仕事の境目を決める
――時間のほかに、始める前に気をつけることはありますか?
新井:会社の顧客情報や社内の資料を、別の仕事へ持ち出さないことです。勤務先と同じ分野の仕事を考えているなら、競業に関する規則も先に読んでください。仕事を引き受けてから「会社の資料を使わないとできない」と気づくのでは遅いです。自分の経験として話せることと、会社の情報として守るべきことを分けておきましょう。届け出を出す前に仕事内容を説明できるようにしておけば、どの情報を使ってよいかも考えやすくなります。
――パラレルキャリアのデメリットは、二つ目の仕事がうまくいかないことだけではないのですね。
新井:ええ。僕なら、今の仕事を守れるかを最初の判断基準にします。勤め先の規則を読み、使える時間を確かめて、小さな一件から試す。その一件を終えたときに、睡眠を削らず本業も続けられたか見てください。二つの仕事を持つのは、それから少しずつで十分です。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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