個人事業主が外注するとき源泉徴収は要る?

新井一

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テーマ:起業

はじめて外注するとき、税金より先に見ること

――新井さん、週末の仕事が増えて、編集や事務の一部を人にお願いしたい個人事業主の方がいます。外注すると、源泉徴収や法律の義務が一気に増えるのでは、と怖くなるそうです。

新井:怖くなりますよね。自分一人でやっている間は、自分が頑張れば終わります。でも人にお願いした瞬間に、「発注する側」になりますから。まず見てほしいのは、税金よりも自分が従業員を使っているか、相手が一人で仕事をしている人かです。ここでかかる決まりが変わります。

――従業員を使っていない個人事業主でも、何かは必要になるのですか?

新井:相手が従業員を使っていない個人なら、仕事の内容や報酬、納期などを明示する必要があります。これはメールやチャットでもできます。つまり、いきなり難しい契約書から始めるより、まず「何を、いつまでに、いくらでお願いするか」を一通にまとめることですね。

源泉徴収は「報酬を払うから必ず」ではない

――外注費を払うなら、源泉徴収をしなければいけないと思っている方も多そうです。

新井:そこは誤解しやすいところです。個人がだれにも給与を払っていない場合、原稿料やデザイン料などを個人に払っても、自分が源泉徴収をする必要がないケースがあります。税金は「報酬を払うか」だけで決まるのではなく、自分が給与の源泉徴収義務者かどうかも見ます。

――では、外注先が個人なら何もしなくていい、ということではないのですね。

新井:もちろんです。源泉徴収が不要でも、報酬の金額、支払日、納品物、修正の範囲は残します。あとで「この作業も入っていると思った」となると、相手にも自分にも負担が出ますから。税金の話と、仕事を頼むときの約束は分けて考えましょう。

――相手が一人でやっているかどうかも、確認してよいのでしょうか?

新井:聞いて大丈夫です。「従業員の方はいらっしゃいますか」と詰める感じではなく、「フリーランス法の確認で、従業員を使っている事業者さんかだけ教えてください」と聞けばいい。ここを曖昧にしたまま進めるほうが、あとでお互いに困ります。

フリーランス法は一人同士の取引にも出てくる

――「自分も相手も小さいから、法律は関係ない」と考えてしまう方もいそうです。

新井:気持ちは分かります。でも、フリーランス法の取引条件の明示は、フリーランス同士でも出てきます。従業員を使っていない個人事業主が、同じように一人で仕事をしている人へ頼むときも、仕事の中身を明らかにする。ここは押さえておきたいですね。

――具体的には何を書けばいいでしょうか?

新井:双方の名前、お願いした日、仕事の内容、納品日、納品先や作業場所、報酬額、支払期日です。検査があるなら、いつまでに確認するかも書きます。撮影データの編集なら、枚数、納品形式、色味の修正回数、納品方法まで書いておくと、あとで話が食い違いにくいですよ。

取適法は個人事業主が発注する側には原則かからない

――最近は下請法の名前が変わった、という話もあります。そこも気になります。

新井:2026年1月から取適法という名前になっています。ただ、個人事業主が発注する側として当てはまるかというと、条文上の委託事業者は法人を前提にしています。ですから、一人の個人事業主が外注する段階では、取適法そのものより、フリーランス法の明示義務と税の扱いを先に見るほうが現実的です。

――会社にしないと外注できない、という話ではないのですね。

新井:まったく違います。個人事業主でも外注はできます。ただし、口約束で「あとで払います」は危ない。外注費は材料費や通信費と同じで、事業のお金として残ります。いつ、誰に、何を頼み、いくら払うのかを、支払い前から見える形にしてください。

頼む前に、空欄つきのひな型を一つ作る

――最初の一歩としては、何をすればいいですか?

新井:相手を探す前に、取引条件のひな型を作ってください。名前、日付、仕事の内容、納期、報酬、支払日。この空欄を作っておくだけで、相談するときの言葉が変わります。「写真30枚の色補正を、何日までに、いくらでお願いしたい」と言えるようになります。

――それなら、難しい書類を作る前に始められそうです。

新井:そうです。外注は、自分の仕事を減らすためだけにやるものではありません。空いた時間を、撮影、営業、納品後の連絡など、自分がやるべきところに戻すために使います。だから、頼む範囲を小さく決めて、まず1件だけ試してみましょう。

――いきなり大きく任せないほうがいいのですね。

新井:はい。1件試せば、報酬の決め方、納期の余裕、連絡の回数が分かります。源泉徴収や法律を怖がるより、まずは自分の立場を確認して、条件を整理する。そこからで大丈夫ですよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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