月3万円で始める起業準備。お金をかける前に決めるべき順番
ただ買い物を代わりにするだけでは弱い
――新井さん、スキルに自信がない方から「買い物代行で起業できるでしょうか」と相談されることがあるそうですが、可能性はありますか?
新井:可能性はあります。ただし、昔より難しくなっていますね。高齢の方や忙しい家庭を助けたいという気持ちはとても大事です。でも、今はAmazonや楽天、ネットスーパー、宅配サービスがかなり発達しています。ただ買って届けるだけだと、個人が安定収入を作るには弱いのが現実です。
――地域課題としては必要に見えますが、競合が強くなっているのですね。
新井:そうです。かつてはスーパーが遠い地域や交通手段が少ない地域で、買い物代行は喜ばれました。今も必要な場面はあります。ただ、利用者が「アプリで注文すれば届く」環境に慣れている地域では、個人の代行だけで選ばれる理由を作らないといけません。
今すぐ収入が必要なら既存サービスを使う選択もある
――「まず少しでも収入がほしい」という場合は、個人で始めるより既存サービスを使うほうがよいですか?
新井:短期の収入なら、そのほうが現実的なこともあります。Uber Eats、出前館、Woltのような配達サービスは、依頼を受ける仕組み、報酬の管理、利用者との接点がすでにあります。自分でチラシを作り、集客し、代金回収まで組むより、最初の一歩としては軽いですよ。
――それは起業ではない、と思う方もいるかもしれません。
新井:そこは考え方です。会社員のまま準備するなら、いきなり屋号を作って独自サービスを始めるより、既存の仕組みに乗って「自分はこの仕事を続けられるか」を確かめることも起業準備です。移動距離、天候、体力、顧客対応。実際にやると、机上では見えない負担がわかります。
勝ち筋は買い物だけでなく日常サポートに広げること
――個人でやるなら、どこに勝ち筋がありますか?
新井:買い物だけに絞らず、地域の日常サポートに広げることですね。たとえば草むしり、電球の交換、掃除、荷物運び、子どもの送り迎え、話し相手。高齢の方にとっては、買い物そのものより「困ったときに頼める近所の人」が価値になります。
――何でも屋さんに近い形でしょうか。
新井:近いですね。ただし、何でもやると雑になります。最初は3つに絞るといいです。「買い物同行」「重い荷物の運搬」「電球交換と小さな片づけ」など、自分の体力と時間で続けられる範囲にする。地域密着は、信頼が積み上がるまで時間がかかります。だからこそ、続けられるメニュー設計が大事です。
高齢者向けはネット集客だけでは届きにくい
――集客はSNSやホームページで始めればよいでしょうか?
新井:高齢者向けの場合、ネットだけでは届きにくいです。もちろんホームページはあってよいですが、最初はポスティング、町内会、近所の商店、地域包括支援センター、知人の紹介など、アナログな接点が中心になります。ここを面倒に感じる人には、地域密着型は合わないかもしれません。
――地味な営業が必要なのですね。
新井:そうです。しかも信用が何より大切です。家に入る、財布を預かる、生活の困りごとを聞く。これは簡単な仕事ではありません。料金表、対応範囲、緊急時の断り方、できないことの線引きまで決めておかないと、善意で始めたのに疲れ切ってしまいます。
小さく試して地域条件を見極める
――始めるなら、最初のステップは何でしょう?
新井:まず半径1キロで10人に聞いてみることです。「月に1回なら何を頼みたいですか」「いくらなら頼みますか」「家族以外に頼む不安は何ですか」と聞く。そこで買い物より掃除が多いのか、重い荷物が多いのか、話し相手が必要なのかが見えてきます。
――需要を決めつけないことですね。
新井:はい。買い物代行という名前で始めても、実際の価値は別のところにあるかもしれません。会社員のままなら、休日の2時間だけ3件を試すくらいで十分です。そこで「続けられる」「喜ばれる」「お金を払ってもらえる」の3つがそろったら、少しずつメニュー化する。大きく張らずに、地域の困りごとを丁寧に拾ってください。
――買い物代行は、思いやりだけでなく設計が必要なのですね。ありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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