無料相談と有料相談の境目はどこ?

新井一

新井一

テーマ:起業

無料と有料の境目は、時間ではなく答え方で決まる

――新井さん、読者の方からの相談です。無料講座が終わったあと、質問が次々に出てきて、その場で全部答えてしまう。結果、有料相談につながらないと悩んでいます。「ここから先は有料です」とは言いづらい。どこで線を引けばいいのでしょうか?

新井:線を引く場所は、かけた時間でも、質問の回数でもありません。答えの性質です。誰に聞かれても同じ答えになる一般論なら、無料で出していい。でも、相手の帳簿や契約、取引の中身を見ないと答えが変わるものは、そこから先が有料です。無料は一般論まで、個別判断は有料。この一本を決めておくだけで、講座後の消耗はかなり減ります。

――内容そのものではなく、答えが相手ごとに変わるかどうかで見るわけですね。

新井:そうです。たとえば「これは経費になりますか」という質問。経費という言葉の意味を説明するだけなら、無料で構いません。でも、実際の領収書や契約、使い方、過去の処理まで見ないと判断できないなら、その場で答え切るのは危ないですね。

一般論は出し惜しみしないほうが信頼につながる

――とはいえ、無料で出しすぎると損をする気がしてしまいます。

新井:気持ちはわかります。ただ、出していい情報まで隠してしまうと、今度は「この人は何を知っている人なのか」が相手に伝わりません。制度と期限、先にやることと後にやること、帳簿や書類に出てくる用語の説明。このあたりは無料で出していい。むしろ出したほうが信頼されます。

――逆に、無料では答えきれないものは何でしょう?

新井:金額の判断、契約先との条件で扱いが変わるもの、すでに提出した書類とのつじつま合わせ。このあたりですね。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』でも、ネット上の無料情報はあくまで一般論で、自分の場合に落とし込むにはひと手間もふた手間もかかる、と書きました。そのひと手間が、そのまま商品になります。

有料へ橋を架ける一文は、順番を間違えない

――その「ひと手間」を有料だと伝える瞬間は、やはり気まずそうです。

新井:いきなり「それは有料です」と言えば、相手は突き放されたと感じます。順番を作っておくと楽ですよ。まず「一般的には〇〇です」と一般論を渡す。次に「ただ、個別の事情で変わります」と理由を言う。最後に「必要なら一緒に確認しましょう」と次の場へ案内する。この3つです。

――断るのではなく、続きがある形にするのですね。

新井:はい。記帳代行と経理サポートをしている方も、無料の会計講座のあとに全部答えていた時期がありました。ためしに1か月分の質問を振り返ってもらったら、帳簿を見なくても答えが変わらないものと、本人の取引を見ないと答えようがないものに、きれいに分かれたのです。そこから60分5,000円の相談や記帳代行へつながる流れを作りました。

同じ質問は、その場で返さず配信のネタに回す

――講座のたびに同じ質問が出る場合は、どう扱えばいいですか?

新井:その場で一人ずつ答え続けるのではなく、定期配信にまとめてしまうのがいいですね。週1回か2回、「よく聞かれる質問」として出す。実際に何度も聞かれた質問から拾えば、思いつきで書いた発信より、はるかに読まれます。

――そこには失敗談も出していいのでしょうか?

新井:出したほうがいいですよ。会計が苦手な人ほど、正解だけを並べられるより、間違えた人の話に安心します。無料で出す情報は、専門性を見せる場ですから。ただし、相手の帳簿や契約を見て判断するところまでは踏み込まない。そこを「致しません」の側に置いておくと、自分の時間も守れます。

線引きは冷たさではなく、仕事を続けるための設計

――有料と言ったら、次から来なくなるのではと不安になる人も多そうです。

新井:来なくなる人は、もともと有料では頼まない人です。無料の講座は、その見極めの場でもあります。無料で何でも答える人は、「無料で頼める人」として覚えられてしまう。これは優しさではなく、仕事を続けにくくする習慣ですね。

――有料の窓口を作るとなると、周辺の準備も要りそうです。

新井:必要です。相談を受ける以上、連絡先を出すことになりますから、住所や事業の置き場所も先に整理しておくほうが楽ですね。個人事業の開業届では、納税地として住所地、居所地、事業所等を選べます。ただ、自宅を使うなら賃貸借契約や管理規約、業種ごとの許認可も別に確認が要ります。法人にすると本店所在地は登記事項として公開されますから、レンタルオフィスや実家を使う場合も、郵便物や契約条件を先に見ておきたいですね。

次の講座で言う一文を、先に声に出しておく

――今日からできる一歩は何でしょうか?

新井:次の講座の最後に言う一文を作って、声に出しておくことです。「一般的には〇〇です。ただ、個別の帳簿や契約を見ると答えが変わるので、そこは一緒に確認しましょう」。これで十分です。線引きは、相手を選別するためではなく、続けるためにあります。次に質問の列ができたとき、その一文が一度でも口から出れば、無料と有料の境目はもう動き始めていますよ。

――ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

新井一のセミナー日程一覧

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

新井一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

新井一
専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

稼ぎ力を引き出す起業支援キャリアカウンセラー

新井一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼