【KABU-ACA】新NISA・9割の人が見落とす"勝てる個別株"の選び方
起業家インタビュー(聞き手:新井一@起業18フォーラム)
その荷物、本当に「無料」で運ばれているのでしょうか?
テレビでもネットでも、当たり前のように目にする「送料無料」の4文字。
でも、少し考えみると、荷物を集めに来る人がいて、貨物駅で積み込む人がいて、列車を動かす人がいて、玄関まで届ける人がいます。働いている人がいる以上、無料でものが運ばれることは絶対にありません。
今回お話を伺ったのは、YouTubeチャンネル「貨物ジャーナル」を運営する貨物ジャーナルさん。会社員として働きながら、鉄道貨物専門メディアを登録者2万人規模まで育ててこられました。
ちなみに、私のセオリーからすると「ちょっと違うルート」を通ってきた方でもあります。そのあたりも含めて、率直に伺いました。
セオリーに反した船出:開業して、売れなくて、戻った
たまたま書店で手に取った一冊
新井:本日はよろしくお願いいたします。まず、少し意地悪な入り方をさせてください。貨物ジャーナルさんは、私が本で書いていることと真逆のことを1度されていますよね?
貨物ジャーナル:おっしゃる通りです(笑)。2022年に開業したのですが、まったく売れませんでした。
新井:はっきりおっしゃいますね。
貨物ジャーナル:隠しても仕方がないので。起業しようと思ったときに、たまたま書店で新井さんの本を手に取ったのです。ただ、そのときは自己流でいけるだろうと思ってしまいまして。
新井:ありがちなパターンです。私も本を書いておいて何ですが、本を読んだ時点では、人はまだ自分の話だと思っていないのですよね。
貨物ジャーナル:まさにそれでした。結果、うまくいかず、再就職をしました。それでもう1度新井さんの本を読み直して、巻末にあった起業18フォーラムの案内を見て加入した、という順番です。
新井:遠回りに見えて、実はいちばん納得感のある順番かもしれません。失敗の理由が自分の体で分かっている状態で読むと、同じ文章でも解像度が違いますから。
「戻る」という判断は、後退ではありません
新井:再就職を決めたとき、抵抗はありませんでしたか?
貨物ジャーナル:正直に言えば、ありました。1度飛び出しておいて戻るわけですから、悔しかったです。ただ、資金が尽きたら活動そのものが終わってしまいます。発信を続けるほうが大事だと考えました。
新井:これは読者の方にお伝えしたい点なのですが、会社に戻るという選択は、撤退ではなく資金調達です。銀行から借りると返済が要りますが、給料は返さなくていいのですから。
貨物ジャーナル:その言い方は初めて聞きました(笑)。でも実感としてはその通りです。毎月決まった収入があるから、動画の機材にも取材にもお金を回せます。
新井:私が26年間ずっと「会社員のまま始めましょう」と言っているのは、精神論ではなく、単純に続けられる期間が長くなるからなのです。売れるまでの時間を買っている、という感覚に近いですね。
「送料無料」という言葉を無くしたい
父は長距離トラックドライバーでした
新井:発信のテーマとして「送料無料をなくしたい」という言葉を掲げていらっしゃいます。かなり強い主張ですよね。
貨物ジャーナル:はい。私の父が長距離トラックドライバーでした。夜中に出て行って、何日も帰ってこない。子どものころからその背中を見ています。
新井:ご自身も鉄道貨物輸送に携わっていらっしゃった。
貨物ジャーナル:元の勤務先で鉄道貨物輸送の実務に関わっていました。運ぶ側の現場も、荷主側の事情も、両方を見てきたつもりです。
その上で「送料無料」という言葉を見ると、どうしても引っかかるのです。2024年問題でドライバー不足が叫ばれているのに、運賃はゼロだと表示されている。この矛盾を放っておいていいのだろうか、と。
新井:言葉が現実を上書きしてしまっているわけですね。
貨物ジャーナル:そうです。無料という表示が何年も続くと、人は本当に無料だと信じてしまうのです。そうなると、運賃を上げたいという業界の声が「値上げ」に見えてしまう。本当は適正化なのに。
列車ではなく、列車を動かす人まで映す
新井:とはいえ、チャンネル名だけ見ると鉄道好きの方の趣味チャンネルにも見えます。そこはどう線を引いていますか?
貨物ジャーナル:意識的に、列車の外側まで映すようにしています。走行シーンだけなら、ほかにも素晴らしいチャンネルがたくさんありますから。
私が撮りたいのは、その列車が運んでいる商品であり、それを作った企業であり、集荷に来たトラックドライバーであり、貨物駅で働く方々です。
新井:主役が「車両」ではなく「流れ全体」なのですね。
貨物ジャーナル:はい。極端に言えば、貨物列車は主役ではなく、物語の登場人物の1人だと思っています。
新井:これはビジネスの観点からも非常に上手いポジション取りです。鉄道ファン向けの市場は既に競合が多い。ところが「物流を伝える」という枠にずらした瞬間、企業も自治体も学校も相手になるわけですから。市場が一気に広がります。
貨物ジャーナル:結果的にそうなりました。最初から狙っていたと言えるほど賢くはなかったのですが(笑)。
会社員を続けながら育てた、5年間の試行錯誤
登録者2万人までの道のりは、平坦ではありません
新井:チャンネル開設は2020年でしたね。ここまでの手応えはいかがですか?
貨物ジャーナル:おかげさまで登録者は2万人を超えました。ただ、順調だった時期のほうが少ないです。
新井:具体的には、どんな時期がつらかったですか?
貨物ジャーナル:まったく数字が伸びない時期です。丁寧に取材して、時間をかけて編集して、公開して、それでも再生数が動かない。あのときは「誰も見ていないものに、なぜ休日を全部使っているのだろう」と本気で思いました。
新井:正直ですね(笑)。でも、それは発信をしている人なら全員が通る道です。
貨物ジャーナル:ええ。ただ、会社員だったので生活は困りませんでした。そこは本当に大きかったです。専業だったら、確実に心が折れていたと思います。
新井:ここは強調しておきたいところです。会社員という立場は、失敗の回数を増やすための装置なのです。数字が出ない動画を出しても死なない。だから次が撮れる。専業の方は1本の失敗が生活に響くので、どうしても無難な企画に寄っていきます。
那覇から稚内まで、自分の荷物を運んでみました
新井:印象的な企画として、クラウドファンディングのお話を伺いたいです。
貨物ジャーナル:JRコンテナを使って、那覇から稚内まで自分の荷物を運ぶという企画です。クラウドファンディングで資金を募って、実際にやりました。
新井:日本の端から端まで、ですか。それは説明が要りませんね。
貨物ジャーナル:そこが狙いでした。「鉄道貨物は全国をつないでいます」と言葉で説明しても、なかなか伝わりません。でも、沖縄から北海道まで荷物が動いていく様子をそのまま見せれば、説明は要らないのです。
新井:しかも、他人の荷物ではなく自分の荷物というのが効いています。当事者になっていますから。
貨物ジャーナル:船と鉄道とトラックを乗り継ぐので、物流が「つながっているもの」だということも同時に見せられました。
工場を出たコンテナが、貨物列車に載るまで
新井:もう1つ、企業と連携した企画もありましたね。
貨物ジャーナル:元の勤務先の企業様、運送会社様、そしてJR貨物様にご協力いただいて、工場を出たコンテナが貨物列車に載るまでを追いかけた動画です。
新井:これは会社員時代の人間関係がなければ、絶対に撮れませんよね。
貨物ジャーナル:おっしゃる通りです。個人のYouTuberとして急に連絡しても、まず断られていたと思います。
新井:ここが今日いちばんお伝えしたい点かもしれません。会社員が持っている最大の資産は、業界の中にある信用と人脈です。辞めてから連絡すると「外部の人」になりますが、在職中や元同僚という関係なら話が通る。
貨物ジャーナル:実際、そうでした。現場の方も「あの人なら変な撮り方はしないだろう」と思ってくださったのだと思います。
新井:会社を辞めて起業した方が最初につまずくのが、まさにここです。名刺が消えると、電話がつながらなくなるのですよね。
時間とお金の、身も蓋もない現実
新井:両立の面で、具体的にどう時間を作っていらっしゃいますか?
貨物ジャーナル:平日は仕事ですので、撮影は基本的に休日です。編集は平日の夜に少しずつ進めます。
新井:まとまった時間は、まず取れませんよね。
貨物ジャーナル:取れません。ですので、完璧を目指すのをやめました。以前は納得いくまで編集していたのですが、それだと公開までに時間がかかりすぎて、そもそも本数が出ないのです。
新井:これは非常に実務的な判断です。会社員の起業準備で失敗する方の多くは、能力ではなく「完成させないまま時間切れになる」ことでつまずきます。
資金面ではいかがですか?
貨物ジャーナル:機材も交通費もかかります。全国を回るので、正直に言えば移動費がいちばん重いです。
新井:それを給料で賄えている、と。
貨物ジャーナル:はい。今は会社員としての収入があるから、赤字の企画にも挑戦できます。
新井:まとめると、こういう構造ですね。
- 会社員の給料が、活動を続けるための資金源になっている
- 生活が安定しているので、数字が出ない時期にも撤退せずに済む
- 業界内の信用と人脈が、個人では取れない取材を可能にしている
- 完璧を捨てて公開本数を優先することで、限られた時間を活かしている
貨物ジャーナル:改めて並べると、会社員であることのメリットばかりですね(笑)。
「記録者」から「影響者」へ
新井:活動はYouTubeだけにとどまっていません。
貨物ジャーナル:自主開催の講演会、書籍の出版、企業様とのコラボレーションも経験させていただきました。2025年に『貨物列車 探求読本』(河出書房新社)という書籍を出させていただきました。最近は講師紹介サイトにも登録し、物流・鉄道分野のコンサルティングにも活動を広げています。
新井:チャンネルが名刺になった、という状態ですね。
貨物ジャーナル:まさにそうです。目指しているのは「物流について知りたい、伝えたいときに相談される人」です。
今後のテーマとして「記録者から影響者へ」という言葉を掲げています。これまでは走っている列車を記録することが中心でしたが、これからは物流の見られ方そのものを変えていきたいのです。
新井:それは、かなり難しい目標です。
貨物ジャーナル:分かっています。「送料無料」という表示は、明日いきなり消えるものではありません。でも、見ている人が1人ずつ「あれ、無料なわけないよな」と思ってくれれば、それは確実に変化だと思っています。
新井:私も同意見です。市場を動かすのは、正論より違和感ですから。
対談を終えて:遠回りは、無駄ではありません
新井:本日はありがとうございました。最後に、私の側からも整理させてください。
貨物ジャーナルさんは、開業して、売れなくて、再就職をされました。数字だけ見れば失敗です。ところが、その「戻った」という判断があったからこそ、5年以上発信を続けられ、書籍も講演もコンサルティングも生まれました。
会社員を続けることは、夢を諦めることではありません。夢を諦めなくて済むようにする手段です。私が26年間、延べ6万人の相談を受けてきて確信していることでもあります。
貨物ジャーナル:ありがとうございます。私のような回り道でも、続けていれば形になるということは、お伝えできたかもしれません。
新井:十分に伝わったと思います。読者の皆さまも、次に「送料無料」という表示を見かけたときは、その裏側で動いている列車とトラックと、そこで働く方々を1秒だけ思い浮かべてみてください。それだけでも、貨物ジャーナルさんの活動は前に進んでいます。
貨物ジャーナル:ぜひお願いいたします。本日はありがとうございました。




