倒産件数12年ぶり高水準!会社員が今すぐ起業準備を始めるべき理由とは? 起業18フォーラム代表・新井一氏が語る「会社員のまま起業する」戦略
AIの前向きな返事だけでは、決断はできない
――新井さん、今日は生成AIに事業アイデアを相談しているのに、結局何も決められないというお悩みです。AIと話すほど自信は出るのに、なぜ固まらないのでしょうか?
新井:これは最近とても増えています。生成AIは便利ですし、壁打ち相手として使うこと自体は悪くありません。ただ、AIは基本的に否定をしてこない。こちらの前提が甘くても、まず良いところを拾って、話を広げる方向で返してくれます。だから、事業の中身が研ぎ澄まされるのではなく、理想だけが膨らむことがあるのですよ。
――前向きな返事をもらうほど、進んでいる気がしてしまいますね。
新井:そうなのです。でも「いいですね」と言われ続けることと、お客様が来るビジネスになることは別です。身近な人に話せば、「そんなもの誰が買うの」「その値段じゃ買わないね」と耳の痛い反応が返ることがあります。AIとの対話だけだと、その反応を受ける場面が抜け落ちやすいですね。
否定されない環境では、弱点を削る機会が消える
――相談しているつもりでも、実は検証になっていないということですか?
新井:はい。AIは止まらずに言い換えてくれます。弱点があっても、矛盾があっても、こちらが望む方向へ文章を整えてくれる。すると、本人の頭の中では構想が厚くなったように感じます。でも、それは夢物語です。
――それは怖いですね。具体的な例で言うと、どんな状態でしょう?
新井:たとえば、講座運営や地域活動の実績が豊富な方が、講師デビューを支援する事業を考えていたとします。体験会を開き、登壇準備を伴走し、スライド、チラシ、会場手配、集客、司会、アンケートまで支える。AIと話すと、どれも前向きに整理されます。でも人前で発表したら「古く見える」「公金頼みに聞こえる」「結局、何をしてくれる人か分からない」と返ってきた。こういう一言が、AIとの会話だけでは出にくいのです。
実在する1人に絞ると、言葉は急に具体的になる
――では、何から直せばいいのでしょうか?
新井:まず、頭の中で作った理想のお客様を、実在する1人の人間に変えることです。50代で、講座の裏方やサポートはしてきたけれど、自分が前に立つ自信はまだない人。そういう1人が見えると、何を手伝うのかが急に具体的になります。
――「広げる」より「削る」ほうが大事なのですね。
新井:その通りです。対象が1人に絞られると、体験会で何を扱うか、個別支援でどこまで伴走するか、終わった後に講師リストへ登録して次の依頼につなげるか、という流れまで見えてきます。事業は、きれいな理念より、誰のどの場面を変えるかで伝わります。
粗いまま人に話すほうが、完成後に直すより早い
――でも、粗い段階で人に見せるのは怖いです。否定されたら落ち込みそうです。
新井:気持ちは分かります(笑) ただ、完成させてから見せるほうが傷は深くなります。もう作り込んだ後なので、直すのが大変ですから。粗い段階なら、「ここが分かりにくい」と言われても直せます。拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』でも、アイデアは人に話すことで磨かれると書きました。盗まれる心配より、磨かれないまま進む損のほうが大きいですね。
――誰に話すかも大事そうです。
新井:もう一つ大切なのは、相手を増やしすぎないことです。いきなり大勢に見せると、感想が散らばってまた迷います。まず1人に話し、その人がどこで首をかしげたかを見る。その反応を受けて、言葉を一段だけ削る。これを繰り返すほうが、AIに何十回聞くより早いですね。
――なるほど。意見を集めるより、反応を見る人数を絞るわけですね。
新井:利害関係のない、信頼できる1人で十分です。褒めてもらうためではなく、引っかかった点を聞くために話してください。「何が良かったですか」ではなく、「どこが分かりにくかったですか」と聞く。ここを変えるだけで、返ってくる情報の質が変わります。
AIは下書き、人の反応は削るための材料
――生成AIを使わないほうがいい、という話ではないですよね?
新井:もちろん違います。AIは下書き、整理、言い換えには使えます。僕自身も文章を作るとき、答えを見ながら指示を作り直すことはあります。ただ、何を書くか、誰に向けるか、どこを削るかは自分で決める。そこをAI任せにすると、事業ではなく理想の文章が育ってしまいます。
――最後に、今日からできる一歩を教えてください。
新井:今週中に、AIとのやり取りでまとまった内容を、そのまま1人に話してください。完成版にしない。粗いまま渡す。聞くのは良い点ではなく、引っかかった点。この3つだけで構いません。否定されないまま話を重ねるほど、事業の輪郭はぼやけます。AIの外に出して、誰かの反応で削る。そこから、やっと「何をしている人か」が言葉になりますよ。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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