分割払いにしてほしいと言われたら個人事業主は受けていい?

新井一

新井一

テーマ:起業

断るか受けるかの前に、与信リスクを見る

――新井さん、今日は「お客様から分割払いにしてほしいと言われたら、個人事業主でも受けてよいのか」という相談です。法人向け研修などでは、現実にありそうですね。

新井:ありますね。特に高額な研修や制作案件では、「内容は問題ないので、支払いだけ分けられますか」と聞かれることがあります。ここで最初に考えるべきなのは、相手が失礼かどうかではありません。支払われなかったときの穴を、自分が埋めるのか、決済会社が埋めるのかです。

――支払い方の相談に見えて、実は信用判断なのですね。

新井:そうです。分割払いを受けるということは、目の前の受注と同時に、相手への与信を引き受けることでもあります。2回目、3回目が払われなかったとき、督促するのも、待つか止めるか決めるのも自分です。個人事業主がそこまで抱えられるかを先に見ます。

自分で分けて受け取る分割と、決済会社の分割は違う

――法律上も違いがあるのでしょうか。

新井:あります。一般消費者との契約で、事業者が自分で代金を分けて受け取る場合、割賦販売法上の割賦販売に当たることがあります。指定された商品や役務について、2ヶ月以上の期間にわたり、3回以上に分けて受け取るような形ですね。ただし、今回のような法人が営業のために締結する企業研修契約では、適用除外になる場合があります。契約主体と利用目的を先に確認します。

――決済会社を使う場合はどう変わりますか。

新井:クレジットカード会社などを間に入れる分割は、仕組みが別です。お客様と決済会社の間で立替払いの契約ができ、決済会社がお客様に代わって事業者へ支払う形になります。購入者の支払能力は決済会社が審査しますから、事業者は与信判断を全部自分で抱えずに済みます。ただし、手数料や加盟店規約、チャージバックのリスクは残ります。

法人向け研修でも、支払条件は契約書に残す

――法人相手なら安心して受けてもよい、というわけではないのですね。

新井:そうですね。担当者の人柄と会社の支払能力は別です。初めて取引する法人なら、法人登記、設立年、事業内容、公開されている実績くらいは見ておきたい。大きな金額をいきなり分割で受けるより、最初は小口の案件で支払いの様子を見る手もあります。

――それでも自分で分割を受ける場合、何を決めておくべきでしょうか。

新井:回数、金額、支払期日、支払いが止まったときの対応です。口頭で「では分割で」と済ませるのは避けてください。見積書や契約書に、いつ、いくら、どの方法で支払うのかを書きます。途中で支払いが止まった場合、次の作業を進めるのか止めるのかも決めておく。ここがないと、相手に悪気がなくてもズルズルします。

着手金と完了金なら、作業の区切りで守れる

――研修を2回に分けて実施する場合、支払いも2回にする方法はありますか。

新井:あります。着手金と完了金のように、作業の区切りに合わせて受け取る形です。これは時間だけで代金を後ろへ送る分割とは少し違います。作業の進み具合と支払いを結びつければ、万一止まったときに、こちらも提供する作業をそこで止められます。

――2回払いなら割賦販売法の3回以上には当たらないという整理もありますね。

新井:はい。ただし、割賦販売法の要件に当たらないから何も書かなくていい、という意味ではありません。法人契約か消費者契約か、営業目的か、役務の内容は何か。そこを確認した上で、支払条件を明記する必要は変わりません。語学教室や学習塾など、消費者向けで一定の期間・金額要件を満たす役務なら、特定商取引法の話も出てきます。

受注を逃さない言い方はある

――分割を断ると、案件そのものを失いそうで怖い方も多いと思います。

新井:断り方を工夫すればいいですよ。「分割そのものは可能です。決済会社の分割プランをご案内します」と伝えれば、依頼を拒絶したことにはなりません。相手が求めているのは支払い方であって、必ずしもあなた自身に与信を背負ってほしいわけではないのです。

――手数料はどう考えればよいでしょうか。

新井:決済会社を使うなら手数料がかかります。それを価格に織り込むのか、別途案内するのかを決めます。目先の受注額だけを見ると、自分で分割を受けたほうが得に見えるかもしれません。でも、未払い時の督促時間、資金繰りの悪化、精神的な負担まで入れると、手数料はリスクを外に出す費用とも考えられます。

――ありがとうございました。分割を受けるかどうかは、支払いが止まったときの責任で判断します。

新井:はい。個人事業主ほど、現金が入る時期を大切にしてください。仕事の質だけでなく、お金の流れを守ることも事業の力ですよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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