子どもが小さい時期の起業準備は無謀なのか?

新井一

新井一

テーマ:起業

子どもが小さい時期の起業準備は何から始めるか

――新井さん、今日は子育て中の方から多い相談について伺います。子どもが小さいうちでも、起業の準備は進められるのでしょうか?

新井:進められます。ただし、独身の頃や子どもが大きくなってからと同じやり方をしようとすると、ほぼ続きません。子どもが小さい時期は、まとまった時間を前提にしないことが大事です。

――まとまった時間を作ろうとしない、ということですか?

新井:そうです。多くの方が「2時間取れたら勉強しよう」「週末にまとめて準備しよう」と考えます。でも、子育て中の予定は簡単に崩れます。発熱、園や学校の予定、家事の割り込みがある。だから、最初から10分、15分で進む作業に分けておく必要があります。

――短い空き時間でもできる作業にしておくのですね。

新井:はい。起業準備は、全部が同じ重さではありません。スマホでメモできること、検索だけで済むこと、人に聞くこと、集中して考えること。これらを分けずに一つの大きな作業にしてしまうから、手が止まるのです。

短い時間でできる準備を先に切り出す

――具体的には、どんな作業なら短い時間でも進められますか?

新井:まず、自分の経験や得意なことの棚卸しです。これは机に向かわなくてもできます。子どもの送り迎えのあと、スマホのメモに「人からよく頼まれること」「お金を払ってでも解決したい人がいそうなこと」を一つずつ書く。それだけでも十分です。

――商品づくりや価格設定も、短い時間でできますか?

新井:最初の材料集めはできます。ただ、価格を決める、サービスの範囲を決める、告知文を書くといった作業は、少し集中が必要です。ここを見誤らないことです。短時間でできる作業と、30分以上確保したい作業を分けておくと、少ない時間でも前に進みます。

――全部を短時間でやろうとすると苦しくなるのですね。

新井:その通りです。子育て中の方は、自分の時間が少ないことに負い目を感じがちです。でも、時間が少ないこと自体が問題なのではありません。時間の種類を分けずに使おうとすることが問題なのです。

家族の予定に合わせた小さな準備計画を作る

――子どもの予定が優先になる中で、起業準備の計画はどう立てればいいでしょうか?

新井:予定表に大きな作業を詰め込まないことです。まず、1週間の中で比較的崩れにくい時間を探します。朝の10分、昼休みの15分、子どもが寝たあとの20分。そこに、軽い作業だけを置くのです。たとえば朝は「気づいた悩みを一つメモする」、昼休みは「同じ悩みを検索している人の言葉を拾う」、夜は「サービス案を一行だけ直す」。この程度まで小さくします。

――重い作業はどこに置くのがよいですか?

新井:月に1回でもいいので、家族に共有して確保する時間を作ることです。たとえば、サービス内容を決める、試しに案内文を書く、知人にヒアリングする。このあたりは、割り込みが多い時間帯にやると中途半端になります。

――家族に言い出しにくいという声もあります。

新井:よく分かります。ただ、家族に黙って進めるほど、あとで説明が難しくなります。「いきなり起業する」のではなく、「まず準備として月に一度だけ時間を取る」と伝える。これなら家族も受け止めやすいはずです。

子育て経験そのものが仕事の材料になることもある

――子どもが小さいと、起業には不利だと感じる方も多いと思います。

新井:不利な面はあります。自由に動ける時間は限られますし、急な予定変更もあります。ただ、その経験が仕事の材料になることもあります。子育て中だからこそ分かる不便、時間の使い方、家庭内の調整。これは同じ立場の人にとって価値になります。

――つまり、制約を弱点だけで見ないということですね。

新井:はい。起業は、立派な資格や大きな資金がある人だけが始めるものではありません。むしろ、自分の生活の中で何度も感じている困りごとのほうが、商品に近いことがあります。

――子育て中の経験を、そのままサービスにすることもあるのでしょうか?

新井:あります。ただし、「子育て経験があります」だけでは商品になりません。誰のどんな困りごとを、どこまで手伝えるのかを具体化する必要があります。片づけなら「未就学児がいる家の朝の支度動線」、学習サポートなら「低学年の宿題を親子げんかにしない声かけ」、在宅ワークなら「保育園の呼び出しがある前提の予定管理」。ここまで場面を絞ると、経験が商品に近づきます。

今日やることを一つに絞る

――最後に、今日から始めるなら何をすればいいでしょうか?

新井:今日やることは一つで十分です。スマホのメモに「10分でできる起業準備」と「30分以上ほしい起業準備」を分けて書いてください。

――作業リストを時間別に分けるのですね。

新井:そうです。たとえば、10分でできることは、悩みのメモ、競合の名前を一つ調べる、知人に聞きたい質問を書く。30分以上ほしいことは、サービス案をまとめる、価格を考える、告知文を書く。このように分けるだけで、空いた時間に何をすればいいか迷わなくなります。

――子どもが小さいうちは、無理に大きく進めようとしないことが大事ですね。

新井:はい。起業準備は、毎日何時間も取れる人だけのものではありません。短く区切っても、同じ方向へ積み上げれば形になります。いまの生活を壊さず、小さく進めること。それが、子育て中の起業準備ではいちばん現実的な進め方です。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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