同期が会社を辞めて独立して大成功! 焦りと嫉妬。どう向き合う?

新井一

新井一

テーマ:起業

同期の独立が苦しいのは、自分の遅れではない

――新井さん、同じ会社に入った同期が先に独立すると、焦ってしまう人は多いと思います。SNSで順調そうな投稿を見たら、なおさらですよね。

新井:ありますね。同期という言葉は強いです。同じ時期に入社しただけなのに、いつのまにか同じ速度で進まなければいけない気がしてしまう。でも、独立できる条件まで同じだったわけではありません。焦りの正体は、相手が先に進んだことより、自分の進み具合を測る物差しがないことなのです。

――物差しがないから、相手の投稿が基準になってしまう。

新井:そうです。SNSに出てくるのは、仕事が決まった話、褒められた話、売上が立った話が中心です。断られた数や、入金までの不安や、夜に資料を作り直した時間は見えません。相手の見えている部分と、自分の全部を比べたら、苦しくなるに決まっています。

焦りは2つに分ける

――焦りから抜けるには、まず何をすればいいのでしょう?

新井:焦りを2つに分けます。ひとつは「同期が先に独立した」という動かせない事実。もうひとつは「自分がどこまで来たか分からない」という不安です。前者は変えられません。後者は、今月から変えられます。

――同じ焦りでも、扱えるものと扱えないものがあるのですね。

新井:はい。同期が辞めた理由も、受け皿になった取引先の有無も、その分野で積み上げてきた年数も、こちらからは見えません。日本政策金融公庫の新規開業実態調査でも、開業した人の多くは、手がけている事業に関係する仕事の経験を持っています。平均経験年数は15.3年です。つまり、外に出るタイミングは、入社年次だけでは決まりません。

――同期だから同じ条件、とは言えない。

新井:まったく言えません。同じ会社にいても、外で値段がつくまでの年数は職種ごとに違います。営業、技術、企画、管理、接客、それぞれ見られ方が違う。比べるなら同期ではなく、自分の準備の中身です。

自分の物差しは「動かした量」で作る

――では、自分の進み具合は何で測ればいいですか?

新井:おすすめは3つです。今月、何人に会ったか。何件の提案を出したか。何件の反応が返ってきたか。この3つだけでいいです。売上や独立時期は、他人と比べやすいので物差しに向きません。自分が動かした量なら、相手がどれだけ派手に見えても関係ありません。

――「反応」には断られたものも入れていいのでしょうか?

新井:もちろんです。断りも保留も反応です。むしろ、最初のころは断りの数が大事です。誰に何を言うと伝わらないのかが分かるからです。起業準備で止まりやすい人は、頭の中で商品を磨き続けます。でも、外に出して反応をもらわないと、磨く方向が分かりません。

――会った人数、提案数、反応数。かなり現実的ですね。

新井:現実的な数字ほど効きます。たとえば「今月は3人に話した」「提案は1件」「返事はゼロ」と書く。これを見ると落ち込むかもしれません。でも、来月は5人に話す、提案を2件にする、返事が来る言い方に変える、という次の動きが見えます。焦りが行動に変わるのです。

SNSを見る時間を、記録を見る時間に置き換える

――SNSを見ないほうがいい、という話になりますか?

新井:完全に見ないと決める必要はありません。ただ、焦っているときほど、見る順番を変えたほうがいいです。先に自分の記録を見る。そのあとで、必要なら人の発信を見る。自分の数字が空白のまま相手を見るから、相手の数字が自分の合格ラインになってしまいます。

――自分の数字があると、相手の情報に飲まれにくくなる。

新井:そうですね。僕の著書『起業神100則』でも、完璧主義を捨てる大切さを書いています。完璧の基準を他人に渡してしまうと、ずっと苦しくなります。同期の独立は、あなたの不合格通知ではありません。単に、その人の条件がその時点でそろったという出来事です。

――それを聞くと、少し呼吸が楽になります。

新井:焦りが出るのは、起業に向き合っている証拠でもあります。何も考えていなければ焦りません。ただ、その焦りを人との比較に使うのか、自分の行動量を増やす燃料にするのかで、半年後が変わります。

独立の速さではなく、続けられる準備を見よう

――最後に、同期と比べて手が止まっている方へ伝えるなら、何でしょうか?

新井:まず、同期の独立を見て焦る自分を責めないでください。自然な反応です。そのうえで、今日から他人の速さではなく、自分の数字を見てください。会った人、出した提案、返ってきた反応。この3つを1カ月だけでも記録すると、自分が止まっていたのか、実は少しずつ動いていたのかが見えてきます。

――独立したかどうかだけでなく、準備の進み具合を自分で確かめるのですね。

新井:はい。起業は競争ではありません。早く辞めた人が勝ちで、会社に残って準備している人が負け、という話でもありません。大事なのは、外に出たあとも続けられる形を作ることです。同期の投稿を見に行く前に、自分の3つの数字を見てください。物差しを自分の側に取り戻せば、焦りは前に進む力に変えられますよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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