起業が「怖い」と感じたら、まずリスクの正体を言語化してみてください
「確実に稼げる」を検索している間に、何が消えていくか
――新井さん、今日は「確実に稼げるビジネス」というテーマでお聞きしたいのですが、こういうキーワードで検索する方は実際に多いのでしょうか?
新井:多いですよ。「確実に稼げる」と関連するキーワードで月20人くらいが検索しています。月20人と聞くとそこまで多くないように見えますが、僕のところに相談に来る方も、最初の半年はだいたいこれを探していたという方が珍しくありません。
――裏側にどんな気持ちがあるのですか?
新井:裏側にあるのは、「失敗したら家族や同僚に知られて恥ずかしい」「お金を失いたくない」「動き出す前に保証が欲しい」、この3つの気持ちです。長く現場にいると、検索行動の裏にあるこの気持ちを何度も聞いてきました。気持ちはよくわかるのですよ。けれど、結論を先に言うと、確実に稼げる起業準備は存在しないですね。
「確実」はないが「1勝9敗で帳尻が合う設計」はある
――えっ、最初から「ない」と断言ですか?
新井:ないです(笑) けれど、絶望する話ではないのですよ。9敗しても1勝で帳尻が合う設計は確かに存在します。プロの起業家でさえ、新規事業の打率は1割前後というのが現実ですから。1割しか当たらない世界で、確実性を求めて動かないというのは、ロジックとして無理がありますよね。
――プロでも1割なのですか。
新井:そうです。中小企業庁が2026年4月21日に出した「地域の持続的成長に向けた創業政策のあり方検討会」の報告書でも、開業率3.8%という低水準の背景に「失敗への過剰な恐れ」が挙げられています。確実性を求める検索行動と、開業率の低迷は表裏一体なのですね。
――確実を求めるほど、動けなくなる構造ですね。
新井:拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』でも「1勝9敗」という対比でまとめています。起業準備で動かす仮説のうち、当たるのは10個に1個でも十分。この数字感覚を持てるかどうかで、半年後に動いている人と検索だけが続く人が分かれますよ。
「確実」を求めて止まる人の典型サイン
――「自分はそうかも」と気づくサインはありますか?
新井:4つあります。1つ目、「絶対」「保証」「必ず稼げる」と書かれた情報を探し続けている。2つ目、1つの仮説しか試さず、その結果が出るまで動けない。3つ目、失敗を1件ずつ重く受け止めて、9敗を抱えるのが怖い。4つ目、1勝を「特別な人だけのもの」と感じて、自分から外してしまう。
――どれも、心当たりがありそうな話ですね。
新井:このサインに気づくだけでも、半歩前に進めますよ。逆に言うと、サインに気づかないまま「もっと確実な方法はないか」と検索を続けると、半年があっという間に消えてしまう。これも現場でよく見る光景です。
28万円の情報商材より「10個試す覚悟」だった早川さん
――現場での実例があれば教えてください。
新井:起業18フォーラムにいた早川さん(仮名)という方がいまして、50代前半の男性、建設会社で施工管理を20年やられていた方です。妻と社会人になったお子さんが1人。最初の半年は「確実に稼げる方法」をひたすら検索して、合計28万円の情報商材を購入されたのですが、何ひとつ動かない状態が続いていました。
――28万円も……。
新井:切ない話ですよね。早川さんは勉強会で「1勝9敗が自然」という整理に出会って、半年で10個の小さな仮説を試す覚悟を決められたのですよ。試したのは、現場経験を活かした「中小建設業向けの安全管理スポット相談(3万円)」「現場写真の撮影代行(5,000円)」「若手職人向けのオンライン勉強会(1,000円)」など10個です。
――10個も試したのですか。
新井:そうです。9つは反応ゼロでした。けれど、最後の1つ「中小ゼネコンの安全管理研修代行(月3万円)」が当たって、その契約から芋づる式に類似案件が広がっていきました。今は18ヶ月目、月収12万円の継続契約2社を在職中のまま運用されていますよ。
9敗の中に、次の1勝の土台がある
――9敗は無駄じゃなかったのですね。
新井:むしろ9敗を抱えた早川さんのほうが、最初から1勝だけを狙っていた人より、結果として安定した状態に到達した、というのが面白いところです。9敗の中に蓄積された顧客理解と、自分の強みの輪郭が、後の1勝を支える土台になっていきます。
――確実性を求めて1個しか試さない人との違いですね。
新井:そうなりますよ。1個しか試さない人は、運よく1勝に到達しても、その後の継続でつまずく。土台がないから、何が当たって何が外れるかの感覚が育たないのですよ。
最初の9個の仮説は、何になりますか?
――最後にメッセージをお願いします。
新井:今日のメッセージはシンプルです。「確実に稼げる」を検索する時間を、「9敗を抱える設計」を考える時間に変える。これだけで、半年後の景色が変わりますよ。あなたの最初の9個の仮説は、何になるか。今日、紙に書き出してみてほしいですね。
――失敗を「数のうち」と捉え直すことから始まるのですね。今日はとても参考になりました。ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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