人付き合いが苦手でも起業できる。「静かな営業術」で年商800万円を達成したBさんの話
会社が不安な時ほど、退職を急がない
――新井さん、会社の業績が悪くなっていると、「リストラされる前に何かしなきゃ」と焦る方は多いですよね。
新井:多いですね。ニュースで同業他社の早期退職を見たり、社内の空気が重くなったりすると、急に足元が揺れます。でも、そこでいきなり辞表を書く必要はありません。むしろ給料がある今こそ、外で小さな収入の芽を作る好機です。不安を退職の決断に変えず、準備の行動に変える。ここが最初の分かれ目です。
――焦りを原動力にするのは良いけれど、会社を辞める判断とは分ける、と。
新井:そうです。「会社が危ないかも」と感じたら、まず守るものを見える化する。生活費、住宅ローン、教育費、毎月必ず出ていく固定費。ここを見ずに起業準備を始めると、夢ではなく不安に追い立てられた計画になりますから。
――会社にいる時間を「猶予」と見るわけですね。
新井:はい。会社への不満だけで動くと、次に選ぶ仕事もまた不満の延長になりやすいです。まだ給料があるうちに、自分の強みを試し、家計の安全線を確認し、家族にも説明できる準備をしておく。それが、慌てて飛び出さないための現実的な守りになります。
最初にやるのは情報収集ではなく棚卸し
――不安になると、転職サイトや副業情報をずっと見てしまう人もいそうです。
新井:ありますね。でも、情報を増やすほど安心するとは限りません。最初にやるのは、自分が会社で何を積み上げてきたかの棚卸しです。営業、事務、現場管理、クレーム対応、後輩指導、資料作成。本人にとっては普通でも、外の人から見ると価値になることは多いですよ。
――「自分には特別なスキルがない」と思っている方でも、見直す余地があるわけですね。
新井:はい、あります。会社員の経験は、名刺の肩書きよりも「どんな場面で誰を助けてきたか」で見ます。たとえば、社内でよく相談されること、なぜか自分に回ってくる仕事、説明すると相手が安心する分野。そこに小さな商品の種があります。
90日で試すなら、商品より先に相手を決める
――実際に準備を始めるなら、どのくらいの期間で何をすればいいでしょうか。
新井:まず90日で考えるといいですね。最初の30日は棚卸しと聞き取り。次の30日は小さなお試しメニューづくり。最後の30日は1人に提案して反応を見る。これくらいなら、会社の仕事を続けながらでも現実的です。
――いきなりホームページや名刺を作らなくてもいいのですか?
新井:後でいいですよ。多くの人が形から入りますが、先に決めるべきは「誰の、どんな困りごとを軽くするか」です。相手が決まっていない商品は、どれだけ見た目が整っていても売れません。まず1人の顔が浮かぶところまで絞ってください。
会社の外で試す時は、就業規則と守秘義務を確認する
――不安定な会社にいると、早く収入を得たい気持ちも強くなります。注意点はありますか?
新井:あります。会社員のまま動くなら、就業規則、競業避止義務に関する取り決め、守秘義務は必ず確認してください。今の会社の顧客情報や社内資料を使うのは論外です。報酬を得る前の段階なら、困りごとの聞き取り、スキルの整理、試作品づくりなど、できることは広いですよ。
――まずはルールの中で準備することが大切ですね。
新井:そうです。会社とケンカして始める起業は、気持ちは強くても続きにくい。起業は逃げ道ではなく、自分の選択肢を増やす作業です。小さく、正しく、長く続けられる形を選んでください。
小さな売上が出てから、次の働き方を選ぶ
――最後に、リストラ不安を感じている会社員に伝えたいことはありますか?
新井:不安そのものを消すことは難しいです。でも、不安を「今日の30分」に変えることはできます。今夜、過去に人から感謝された仕事を5つ書く。週末、信頼できる知人に困りごとを聞く。来月、小さなお試しを1つ出す。こういう積み重ねが、自分を守る力になります。
――会社がどうなるかを待つだけではなく、自分で選べる状態を作るわけですね。
新井:はい。辞めるか残るかを決めるのは、小さな売上と手応えが見えてからで十分です。焦って飛び出すより、会社員のまま準備して、選択肢を持った状態で次を選ぶ。そのほうが、家族も自分も守れますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
→ 新井一のセミナー日程一覧


