シングルマザーの起業準備は家計を守る順番で決まる

新井一

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テーマ:起業

「無謀かどうか」は気合いではなく家計で決まる

――新井さん、今日は「子どもを一人で育てながら起業準備をしてもよいのか」という相談です。離婚直後で貯金も少ない場合、やはり無謀なのでしょうか?

新井:無謀と決めつける必要はありません。ただし、順番を間違えるとかなり危ないですね。とくに家計を一人で背負っている方は、「起業したい」という気持ちより先に、生活が崩れない設計を作ることが大事です。商品づくりやSNS発信から始めるのではなく、まず固定費、公的支援、生活防衛資金を見える形にする。ここを飛ばすと、がんばっているのに貯金だけが減っていきます。

――相談者のように、月収はあるけれど養育費が不安定で、貯金が30万円ほどという状態だと、まず何を見るべきですか?

新井:最初に見るのは「毎月いくら減ると生活が崩れるか」です。家賃、食費、教育費、保険料、通信費を紙に書き出して、最低限の固定費を出します。そこから6カ月分の生活防衛資金を目標にする。たとえば固定費が20万円なら120万円ですね。いま30万円しかないからダメ、ではなく、起業準備の判断をその数字から逆算するわけです。家計を守る線を決めてから、小さく試す。これが一番安全です。

最初にやるのは商品づくりではなく支援制度の棚卸し

――起業というと、すぐ商品や集客を考えがちですが、公的支援の確認が先なのですね。

新井:そうです。ひとり親家庭には、児童扶養手当、医療費助成、就学援助など、自治体ごとに使える制度があります。ここを知らないまま、教材や講座にお金を使ってしまう方がいる。もったいないですよ。起業準備は攻めだけではありません。守りを固めることも準備です。

――「支援制度を使う」と聞くと、少し後ろめたく感じる方もいそうです。

新井:そこは考え方を変えてほしいですね。制度を使うのは甘えではなく、子どもの生活を守るための現実的な判断です。起業は生活を壊してまでやるものではありません。生活を守る土台があるから、落ち着いて小さな挑戦ができます。まず自治体の窓口で、自分が受けられる支援を一覧化してください。これだけでも判断の精度が上がります。

新しい資格より、本業で積み上げた知識を商品にする

――元記事では、保険会社で働いていた会員さんが、シングルマザー向けの継続相談を始めた例が出ていました。これは再現しやすいのでしょうか?

新井:かなり再現性があります。家計を一人で支えている方ほど、まったく新しいスキルを学ぶより、すでに本業で扱っている知識を商品にしたほうが安全です。保険会社で15年働いていれば、保障の見直し、遺族年金、教育資金の考え方など、同じ立場の人に役立つ知識がたくさんありますよね。それを月額3,000円から5,000円の相談商品にする。大きく始めなくてよいのです。

――でも「自分の経験なんて売れるのかな」と思ってしまいそうです。

新井:売れるかどうかを頭の中だけで決めないことです。まず身近な3人に、困っていることを聞いてみる。保育園や職場、昔の知人でもよいです。「離婚後のお金で困っていることはありますか」「教育費で不安なことは何ですか」と聞く。そこで同じ悩みが何度も出てくるなら、商品化の入口があります。自分の知識を売るのではなく、相手の不安を整理すると考えると、動きやすくなりますよ。

SNS発信より先に、手元の3人で試す

――起業準備を始めると、まずSNSを整えなければと思う人も多いですよね。

新井:SNSが悪いわけではありません。ただ、生活の責任が重い人ほど、最初から広く発信して反応を待つのは危ないです。時間も気力も削られますから。元記事の会員さんも、最初は肩書きを作ってSNS発信を続けましたが、有料の問い合わせはゼロでした。そこから、手元の人間関係3名に絞って試したことで変わりました。

――少人数で試すほうが、結果が早く見えるということですか?

新井:そうです。3人に話して1人も反応がないなら、言葉を直す。3人のうち1人が「それなら聞きたい」と言うなら、30分の相談を作る。最初はこのくらいで十分です。大きなサイトも、立派なロゴも、最初から必要ありません。家計を守りながら起業準備するなら、少額、少人数、短時間で検証することが鉄則です。

起業準備は「増やす前に減らす」から始まる

――最後に、同じように「始めたいけれど生活が不安」という方へ、最初の一歩を教えてください。

新井:まず今夜、家計の固定費を書き出してください。そして、その6倍を生活防衛資金の目標額として紙の一番上に書く。次に、自治体のひとり親家庭支援窓口へ連絡して、使える制度を一覧化する。この2つができてから、商品づくりです。

――かなり地に足のついた順番ですね。

新井:起業準備は夢を語るだけでは続きません。とくに子どもを守りながら進む方は、増やす前に減らす。固定費を減らす、不安を減らす、無駄な教材費を減らす。そのうえで、本業で積み上げてきた知識を小さく人に役立てる。これなら、生活を壊さずに前へ進めます。

――「無謀かどうか」ではなく、順番を守れば現実的に始められるということですね。ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。焦らず、でも紙に書くところから今日始めてください。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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