ひとり起業は「孤独」じゃない|会社員のまま始めるたった1人のビジネスの作り方を起業26年の専門家・新井一氏が徹底解説
会社に隠す起業準備を説明できる活動へ変える3つの視点とは
――会社に知られずに起業準備をしたい、という相談は相変わらず多いです。隠す前提で進めてもよいのでしょうか。
新井一:まず確認したいのは、「会社に迷惑をかけない準備」と「会社に隠す準備」は違うということです。起業準備そのものが悪いわけではありません。ただし、勤務時間中に作業する、会社の情報や人脈を使う、競合する仕事を受ける、就業規則を確認しないまま収入化する。このあたりを曖昧にすると、本業にも起業にも傷がつきます。
会社員のまま起業を目指すなら、最初に必要なのは「ばれない方法」ではなく、「説明できる活動に整えること」です。説明できる活動とは、誰に何を提供するのか、本業と競合しないのか、作業時間はいつなのか、収入が出た時にどう申告するのかを、自分の言葉で整理できている状態です。
まず就業規則と競合関係を確認する
――起業準備の初期段階では、何から確認すべきですか。
新井一:就業規則です。副業や兼業が認められているかだけでなく、事前申請、競業避止、秘密保持、会社設備の利用禁止などを見る必要があります。会社によって表現は違いますが、ここを読まないまま「まだ売上がないから大丈夫」と判断するのは危険です。
次に、本業との競合関係です。たとえば本業で得た顧客情報、価格情報、営業資料、技術資料を使うのは論外です。会社員時代の経験を活かすことと、会社の資産を使うことは別です。経験や専門性を自分の言葉で棚卸しし、会社の守秘情報を入れない形に変えることが大切です。
「説明メモ」を1枚作る
――隠す不安を減らすには、具体的に何を作るとよいでしょうか。
新井一:1枚の説明メモを作るとよいです。難しい事業計画書ではありません。項目は五つで十分です。何をするのか、誰に提供するのか、本業と競合しない理由、作業する時間帯、収入が出た時の申告方針。この五つを書くだけで、危ない準備と安全な準備の境目が見えてきます。
このメモが書けない時は、商品や顧客が曖昧なだけでなく、自分でも後ろめたさを感じる設計になっていることがあります。起業準備は長く続けるものです。毎日びくびくしながら進めるより、最初から説明できる形に直した方が、結果的に早く進みます。
売上より先に信頼を壊さない設計をする
――早く実績を作りたい人ほど、焦ってしまいそうです。
新井一:焦る気持ちは分かります。でも会社員起業の強みは、生活費を本業で確保しながら小さく検証できることです。その強みを捨てて、いきなり会社と衝突するような進め方をする必要はありません。
6カ月の準備で最初に見るべきなのは、大きな売上ではなく、信頼を壊さずに見込み客と接点を作れるかです。匿名で隠れて売るより、相談テーマを整理し、発信内容を整え、会社の情報を使わず、自分の休日や朝夜の時間で検証する。そうすれば、起業準備は後ろめたい活動ではなく、将来のキャリアを作る訓練になります。
――最後に、同じ悩みを持つ会社員へ一言お願いします。
新井一:「隠すこと」を目的にすると、判断基準がどんどん小さくなります。会社員のまま起業を準備するなら、「説明できること」を基準にしてください。就業規則を読み、競合しない形にし、1枚メモで活動を整理する。それだけで、不安に振り回される時間を減らし、本当に検証すべき商品や顧客に集中できます。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
→ 新井一のセミナー日程一覧


