起業準備を続けられる人と、3ヶ月で止まる人の違い。それは「やる気」ではありません
作品数を増やすだけでは選ばれない
――新井さん、今日はハンドメイド販売の相談です。作品を一生懸命増やしているのに売れない、もっと数を増やせばいいのかという悩みですね。
新井:ハンドメイドでは本当によくある悩みです。作品数を増やすこと自体は悪くありません。入口は増えますからね。でも、ただ数が増えているだけだと、お客様から見ると「何のお店なのか」がぼやけてしまうことがあります。作品数より先に、選ぶ理由を見せることが大事です。
――たくさん並べれば見つけてもらえる、というわけではないのですね。
新井:そうです。ネット販売では、隣に何千、何万という作品が並んでいます。その中で「かわいい」「安い」だけでは埋もれます。お客様は作品そのものだけでなく、作り手の世界観や、使う場面のイメージで選んでいます。そこが弱いまま作品だけ増やすと、在庫と疲れだけが増えてしまいます。
売れない原因は作品の下手さとは限らない
――売れないと、やはり「自分にはセンスがないのかな」と落ち込みそうです。
新井:でも、原因が作品の下手さとは限りません。むしろ、良い作品なのに伝え方が散らかっているケースが多いですよ。写真の雰囲気が作品ごとに違う、説明文が毎回その場しのぎ、誰に使ってほしいのかが見えない。これだと、お客様が頭の中で整理できません。
――たしかに、作り手側は1点ずつ思い入れがあっても、見る側は一瞬で判断しますよね。
新井:その通りです。見る側は忙しいです。だから「この人の作品は、こういう暮らしに合う」「こういう人への贈り物に向いている」とすぐわかることが重要です。センスというより、編集の問題ですね。作品をどう並べ、どう見せ、どう言葉にするかです。
世界観はおしゃれな雰囲気ではなく判断軸
――世界観という言葉はよく聞きますが、少し抽象的にも感じます。どう考えればよいでしょう?
新井:世界観は、単におしゃれな背景を使うことではありません。僕は「判断軸」だと思っています。どんな人に、どんな気持ちで使ってほしいのか。日常使いなのか、贈り物なのか、子育て中の人向けなのか、仕事用なのか。そこが決まると、色、写真、説明文、価格帯、作品の増やし方まで揃ってきます。
――先に軸を決めると、作品づくりも変わるのですね。
新井:変わります。たとえば「大人の女性が仕事帰りに気分を変えるアクセサリー」と決めるのと、「誰でも使えるかわいい小物」と言うのでは、写真も言葉も違ってきます。前者のほうが狭いようで、刺さる人には深く刺さる。起業準備でも同じで、広くぼんやりより、狭くはっきりのほうが選ばれます。
増やす前に3つを揃える
――では、作品数を増やす前に何を整えるべきでしょうか?
新井:3つあります。1つ目は写真のトーン。明るさ、背景、余白、使う小物を揃える。2つ目は説明文の型。誰向けか、どんな場面で使うか、サイズや素材、手入れ方法を毎回同じ順番で書く。3つ目はカテゴリの絞り込みです。作品の種類が多すぎるなら、まず主力を1〜2種類に絞ってください。
――たくさん作れる人ほど、いろいろ出したくなりそうです。
新井:わかります(笑) でも、最初は「何でも作れる人」より「これならこの人」と思われるほうが強いです。お客様は作家の可能性を全部見たいわけではありません。自分に合うものを迷わず選びたい。だから、増やす前に揃える。これが大事です。
売れた作品より、見られた理由を確認する
――少し売れた作品がある場合は、それを増やせばいいのでしょうか?
新井:それも一つですが、売れた理由を見ないと危ないですね。たまたま価格が安かったのか、季節需要だったのか、写真がよかったのか、贈り物として選ばれたのか。理由を分けて見ます。アクセス数、お気に入り、問い合わせ、購入後の感想。このあたりをメモしておくだけでも、次に増やす作品の精度が変わります。
――感覚だけでなく、反応を見て次を決めるわけですね。
新井:そうです。ハンドメイドも小さな事業です。感性は大切ですが、感性だけで続けると疲れます。反応を見て、仮説を立てて、次の作品に反映する。これを繰り返すと、作品づくりが自己満足からお客様目線に変わっていきます。
作品数より「選ばれる棚」を作る
――最後に、作品数を増やすべきか迷っている方へメッセージをお願いします。
新井:作品数を増やす前に、自分の棚を見直してほしいですね。お客様が入ってきたときに、何のお店か一瞬でわかるか。誰に向けた作品か伝わるか。写真と説明文が同じ方向を向いているか。そこが整うと、少ない作品数でも反応は変わります。
――ただ作り続けるのではなく、選ばれる状態を作ることが先なのですね。
新井:はい。作品数は、世界観が揃ってから増やすと力になります。逆に、軸がないまま増やすと迷子になります。まずは主力を絞り、写真と説明文を整え、誰に届けたいかを言葉にする。ハンドメイドを起業準備として続けるなら、作品づくりと同じくらい「伝わる売り場づくり」に時間を使ってください。そこから売れ方は変わりますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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