ハンドメイドで作品数を増やしても売れない人が見直すべき世界観の作り方

新井一

新井一

テーマ:起業

作品数を増やすだけでは選ばれない

――新井さん、今日はハンドメイド販売の相談です。作品を一生懸命増やしているのに売れない、もっと数を増やせばいいのかという悩みですね。

新井:ハンドメイドでは本当によくある悩みです。作品数を増やすこと自体は悪くありません。入口は増えますからね。でも、ただ数が増えているだけだと、お客様から見ると「何のお店なのか」がぼやけてしまうことがあります。作品数より先に、選ぶ理由を見せることが大事です。

――たくさん並べれば見つけてもらえる、というわけではないのですね。

新井:そうです。ネット販売では、隣に何千、何万という作品が並んでいます。その中で「かわいい」「安い」だけでは埋もれます。お客様は作品そのものだけでなく、作り手の世界観や、使う場面のイメージで選んでいます。そこが弱いまま作品だけ増やすと、在庫と疲れだけが増えてしまいます。

売れない原因は作品の下手さとは限らない

――売れないと、やはり「自分にはセンスがないのかな」と落ち込みそうです。

新井:でも、原因が作品の下手さとは限りません。むしろ、良い作品なのに伝え方が散らかっているケースが多いですよ。写真の雰囲気が作品ごとに違う、説明文が毎回その場しのぎ、誰に使ってほしいのかが見えない。これだと、お客様が頭の中で整理できません。

――たしかに、作り手側は1点ずつ思い入れがあっても、見る側は一瞬で判断しますよね。

新井:その通りです。見る側は忙しいです。だから「この人の作品は、こういう暮らしに合う」「こういう人への贈り物に向いている」とすぐわかることが重要です。センスというより、編集の問題ですね。作品をどう並べ、どう見せ、どう言葉にするかです。

世界観はおしゃれな雰囲気ではなく判断軸

――世界観という言葉はよく聞きますが、少し抽象的にも感じます。どう考えればよいでしょう?

新井:世界観は、単におしゃれな背景を使うことではありません。僕は「判断軸」だと思っています。どんな人に、どんな気持ちで使ってほしいのか。日常使いなのか、贈り物なのか、子育て中の人向けなのか、仕事用なのか。そこが決まると、色、写真、説明文、価格帯、作品の増やし方まで揃ってきます。

――先に軸を決めると、作品づくりも変わるのですね。

新井:変わります。たとえば「大人の女性が仕事帰りに気分を変えるアクセサリー」と決めるのと、「誰でも使えるかわいい小物」と言うのでは、写真も言葉も違ってきます。前者のほうが狭いようで、刺さる人には深く刺さる。起業準備でも同じで、広くぼんやりより、狭くはっきりのほうが選ばれます。

増やす前に3つを揃える

――では、作品数を増やす前に何を整えるべきでしょうか?

新井:3つあります。1つ目は写真のトーン。明るさ、背景、余白、使う小物を揃える。2つ目は説明文の型。誰向けか、どんな場面で使うか、サイズや素材、手入れ方法を毎回同じ順番で書く。3つ目はカテゴリの絞り込みです。作品の種類が多すぎるなら、まず主力を1〜2種類に絞ってください。

――たくさん作れる人ほど、いろいろ出したくなりそうです。

新井:わかります(笑) でも、最初は「何でも作れる人」より「これならこの人」と思われるほうが強いです。お客様は作家の可能性を全部見たいわけではありません。自分に合うものを迷わず選びたい。だから、増やす前に揃える。これが大事です。

売れた作品より、見られた理由を確認する

――少し売れた作品がある場合は、それを増やせばいいのでしょうか?

新井:それも一つですが、売れた理由を見ないと危ないですね。たまたま価格が安かったのか、季節需要だったのか、写真がよかったのか、贈り物として選ばれたのか。理由を分けて見ます。アクセス数、お気に入り、問い合わせ、購入後の感想。このあたりをメモしておくだけでも、次に増やす作品の精度が変わります。

――感覚だけでなく、反応を見て次を決めるわけですね。

新井:そうです。ハンドメイドも小さな事業です。感性は大切ですが、感性だけで続けると疲れます。反応を見て、仮説を立てて、次の作品に反映する。これを繰り返すと、作品づくりが自己満足からお客様目線に変わっていきます。

作品数より「選ばれる棚」を作る

――最後に、作品数を増やすべきか迷っている方へメッセージをお願いします。

新井:作品数を増やす前に、自分の棚を見直してほしいですね。お客様が入ってきたときに、何のお店か一瞬でわかるか。誰に向けた作品か伝わるか。写真と説明文が同じ方向を向いているか。そこが整うと、少ない作品数でも反応は変わります。

――ただ作り続けるのではなく、選ばれる状態を作ることが先なのですね。

新井:はい。作品数は、世界観が揃ってから増やすと力になります。逆に、軸がないまま増やすと迷子になります。まずは主力を絞り、写真と説明文を整え、誰に届けたいかを言葉にする。ハンドメイドを起業準備として続けるなら、作品づくりと同じくらい「伝わる売り場づくり」に時間を使ってください。そこから売れ方は変わりますよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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