普通の会社員スキルしかないのですが、起業の商品になるものがあるでしょうか?

新井一

新井一

テーマ:起業

「自分の仕事なんて誰でもできる」という感覚は、たいてい間違っている

――新井さん、今日は「職場スキルを起業に活かす方法」についてお聞きします。「特別なスキルがないと起業できない」という悩みを持つ方は多いですよね。

新井:多いですよ。「私の仕事は普通の事務だから、商品になるものなんてないです」という相談、よく来ます。でもね、「自分の仕事は誰でもできる」という感覚は、たいてい間違っているですよ。

――なぜ間違っているのでしょうか?

新井:自分の「普通」の基準って、今の職場の中で形成されているのですよ。同じ環境にいる人たちと比べているから「これくらい誰でもできる」と感じてしまう。でも視点を外に向けると、まったく話が変わってきます。

Excelの自作表が半年で月10万円になった話

――具体的な例を教えてもらえますか?

新井:以前起業18フォーラムに、部品メーカーで営業事務をしている伊藤さん(仮名・女性)が来たのです。「自分の仕事なんて慣れれば誰でもできる、起業の商品にはならないですよね?」って。

――典型的な悩みですね。

新井:話を聞いてみると、Excelで販売管理や在庫管理の表を自作して、職場の効率化に活かしていると言う。そこで僕はこう伝えました。「フリーランスのカウンセラーや占い師には、売上管理や顧客管理がまったくわからないという人がたくさんいますよ」と。

――職場では当たり前のことが、別の世界では貴重な知識になっていると。

新井:伊藤さんはしばらく考えてから「その人たちに向けてテンプレートを作って売るのはどうでしょう?」と言いました。それが最初のアイデアです。半年後、月10万円の売上になっていましたよ。「誰でもできる」という言葉のままにしておかなくてよかったですよ(笑)

――すごいですね。特別な資格も新しいスキルも要らなかったのですね。

新井:そうです。伊藤さんが持っていたのは、職場で日常的に使っていた普通のExcelスキルだけ。でも、それを必要としている人がいた。それだけのことですよ。

業界が変われば「普通」は「専門知識」になる

――なぜ職場で普通のことが、外に出ると価値になるのでしょうか?

新井:自分の職場の「普通」が、まったく別の業界では「専門知識」に変わるからです。営業事務なら、数字が苦手な個人事業主にとって価値になる。総務職なら、書類手続きに困っているフリーランスにとって価値になる。発想の起点は「自分のスキルレベル」ではなく「それができない人はどこにいるのか」という視点なのですよ。

――「自分の強み」より「相手の困りごと」を先に考える発想ですね。

新井:そうです。「私にできること」を起点にすると、どうしても謙遜モードになってしまう。「これができない人はどこにいるか」を起点にすると、急に視野が広がりますよ。「自分の普通が誰かの特別になっている場所を探す」という感覚で考えてほしいですね。

――なるほど。職場の中にいると見えにくいけれど、外から見れば価値があるということですね。

新井:会社の内側にいると、周囲も同じスキルを持っているから価値がわからない。でも起業して外に出た途端に「あなた、そんなことができるのですか?」と言われる、というケースは本当によく見ますよ。

商品の種を見つける2つのステップ

――では実際に、商品化への第一歩として何をすればいいでしょうか?

新井:まず1つ目は、「今の仕事で自分がいちばん得意なこと」を3つ書き出すことです。「上手い」という基準ではなく、「苦なくできる・なぜ苦労するのかわからない」という感覚のものを選んでほしいですね。

――「得意」より「苦なくできる」という基準が大事なのですね。

新井:2つ目は、「それを知らなかったら、どんな人が困るか?」を考えることです。この2つを組み合わせると、「誰に向けて、何を提供するか」の輪郭が見えてきますよ。特別な才能は要りません。「これ、慣れれば誰でもできるよ」と思っていることの中に、あなただけの商品の種があるのです。

「普通の経験」をまず書き出すことから始めてほしい

――最後に、「自分には起業できるスキルがない」と感じている方へメッセージをお願いします。

新井:「特別な才能がないと起業できない」というのは、相談に来る方から何百回と聞いてきましたが、ほぼ全員が実際には使えるスキルを持っていましたよ。活躍している起業家の多くは、「自分の得意なことで困っている人を見つけた」だけです。大げさなスキルや資格は要らない。職場でいちばん苦なくできることを、今夜3つ書き出してみてください。それが出発点になりますよ。

――「普通」こそが武器になる。その発想の転換がまず大事なのですね。今日はありがとうございました!

新井:ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、26年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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