「あとで説明する」がいちばん危険。起業準備で配偶者と揉めない「会話の順序」

新井一

新井一

テーマ:起業

貯金が減ったタイミングで揉める家庭の共通点

――新井さん、今日は配偶者との家計の話なのですが、「あとで説明する」と先延ばしにして、貯金が減った時に揉めた、という話をよく聞きます。家計シェアって、どこから手をつければいいのでしょう?

新井:これは本当によく相談される話ですね。総務省「2022年労働力調査」では、共働き世帯が1,278万世帯、専業主婦世帯が517万世帯。共働きが約2.4倍に達しているのです。つまり、起業準備をする方の多くは、すでに配偶者と何らかの家計分担ルールを持っている。そこに「起業準備費をどう乗せるか」の順序が、後の揉め事を左右しますよ。

――順序…… ですか?

新井:そう、順序です。多くの人は「いくら使ったか」を後から共有しようとするのですが、これがいちばん危ない。先延ばしにすればするほど、配偶者の不安が想像で膨らんでしまいますから。

「ドリームキラー」を生むのは、隠した数字

――ドリームキラーって聞いたことがあります。

新井:僕の著書『会社で働きながら6カ月で起業する』にも書いているのですが、家族はコンフォートゾーンを共有しているから「変わらないでほしい」という期待が無意識のブレーキになりやすい、という話です。このブレーキが最も強く作動するのが「知らなかった情報が後から出てきたとき」ですよ。

――数字を先延ばしにすると、ブレーキが強まると。

新井:そうですね。配偶者は「金額」で怒っているわけじゃないのですよ。「相談してもらえなかった」という疎外感が、摩擦の正体です。先に数字を出すと、配偶者は監視者ではなく同じ船に乗る支援者になってくれますから。

入交さんが家計シェアで信頼を取り戻した話

――実例を聞かせてもらえますか。

新井:起業18フォーラムの会員さんで、入交さん(仮名・30代後半・看護師)という女性がいます。手取り月収27万円、給与以外の収入はゼロから始めた方で、もともと家計を「曖昧」にしていたのですね。「収入が出てから全部話そう」と先延ばしにし続けた結果、配偶者からの問い合わせが増えて、関係がぎこちなくなっていったそうです。

――その状態、思い当たる方は多そうですね。

新井:転機は、起業18フォーラムの勉強会で「月1回の家計シェア表」を紹介したときでした。入交さんは毎月末の30分で、「起業準備に投じた金額」「今月の収入」「来月の予定」を1枚にまとめて配偶者に見せるようにしたのです。たったそれだけで、配偶者からの不安の声がぴたりと止まったそうですよ。

――30分の作業で、家庭の空気が変わったわけですね。

悪い数字ほど早く共有する、というルール

新井:入交さんはその後、10ヶ月目にモニター3名から月収4万円、17ヶ月目に継続契約で月収12万円。今も看護師のまま在職起業を続けています。

――収入が出る前から、ちゃんと数字を見せていたから揉めなかったと。

新井:そうですよ。よくある誤解は「収入が出てから話せばいい」というものですが、これが一番揉める原因になる。金額が少なくても、収入がゼロでも、月末に数字を出す習慣を先に作ること。これが、家計シェアの肝です。

――数字を出すこと自体が、信頼の貯金になるわけですね。

新井:まさに。「悪い数字ほど早く共有する」をルールにすると、長期的な信頼の貯金が積み上がっていきますよ。

やってはいけない3つのパターン

――逆に、やってはいけないことってありますか?

新井:3つあります。1つ目は「収入が出てから全部話そう」と先延ばしすること。これは貯金が減ったタイミングで揉める典型パターンです。2つ目は「迷惑をかけたくない」と数字を曖昧にすること。配偶者の想像が膨らんでしまうのですよ。

――確かに、曖昧にされたほうが不安になりますね。

新井:そして3つ目が最悪のパターンで、高額な投資(講座・ツールなど)を相談なしに済ませて、後で発覚するですよ。これは金額の問題じゃなくて、信頼の問題です。一度発覚すると、修復に何ヶ月もかかりますから。

今夜、紙1枚を一緒に眺めるところから

――最後に、これから家計シェアを始めたい方にメッセージをお願いします。

新井:今夜、「予算・期間・出口」を紙1枚に書いて、配偶者と15分だけ一緒に眺めてください。家計シェアは、数字を出した瞬間に半分終わります。完璧な計画書じゃなくていいのですよ。「いま、こんな感じで考えている」と見せるだけで、空気が変わります。

――数字を見せること自体が、対話の入り口になるのですね。今日はありがとうございました!

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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