起業への不安を力に変える|起業支援専門家が教える不安克服の実践法
「廃業率」「税金」「家族」「人間関係」、怖さは同時に襲ってくる
――新井さん、今日は「リスクが怖くて動けない」というご相談についてお伺いしたいです。会社員のまま起業準備をしたいのに、失敗したらどうしようと不安で動き出せない。こういう方、多いですよね。
新井:めちゃくちゃ多いです。現場で一番よく聞く悩みのひとつですよ。看護師の中村さん(仮名・30代後半・既婚・子1人)も最初はそうでした。「廃業率」「税金」「家族の生活」「人間関係」って、ありとあらゆる怖さが頭の中に同時に存在していて、どこから手を打てばいいのかわからずに、半年が止まっていたのです。
――半年。それは辛いですね……。
新井:辛いですよ。でもね、これは中村さんの意志が弱かったわけではありません。漠然とした怖さは、実体がないからこそ最強なのですよ。1個1個と向き合えば対処できるのに、塊で襲ってくるから判断停止になる。すごく一般的なメカニズムです。
紙に書き出した瞬間、17個のうち14個が消えた
――どうやって抜け出したんですか?
新井:勉強会で、僕はこう提案しました。「怖さを紙に1個ずつ書き出してみてください」って。中村さんは、その場で17個書き出したのです。「お客様が来なかったらどうしよう」「税金で破綻したらどうしよう」「家族にバカにされたらどうしよう」、書き出してみると、怖さって意外と数えられるサイズですよ。
――17個も書き出されたんですね。
新井:ここからがすごい話です。17個のうち14個は、「会社員のまま起業準備する場合は発生しない種類の怖さ」だと判明しました。たとえば「廃業による生活破綻」って、会社員のまま準備している段階では起こりようがないのですよ。会社員でいる以上、給料は入ってくるわけですから。本気で破綻するシナリオは、現状にはありません。
――確かに……。準備段階で廃業はないですもんね。
新井:残った3つは「貯金が減る」「家族に迷惑をかける」「同僚にバレる」でした。これなら、個別に対策が打てる量ですよ。
中村さんが残った3つに打った「数字でできる対策」
――その3つに、どう対処したんですか?
新井:具体的に言いますね。「貯金が減る」については、月1万円以下の固定費でできる範囲に絞る、と決めました。「家族に迷惑」については、配偶者と「月5万円達成までは家計に持ち込まない」と数字で合意しました。「同僚にバレる」については、住民税は普通徴収にして、SNSは匿名で運用する、これだけで解決です。
――数字で約束を作るのが、すごく現実的ですね。
新井:そうですよ。「家族と話し合いました」だけだと、誰も検証できないでしょう? 「月5万円達成まで」と数字で書くから、家族も中村さんも「越えたらどうするか」を一緒に考えられる。漠然とした不安に数字を入れた瞬間、不安は計画に変わります。
2ヶ月後、5,000円のオンライン相談から動き始めた
――その後、中村さんはどうなったんですか?
新井:2ヶ月後、最初のお客様にオンライン相談を5,000円で提供できました。今は会社員を続けながら月4万円程度の収入が定着していますよ。半年前、「廃業率」「税金」「家族」「人間関係」で動けなかったあのときの中村さんと、同一人物には見えない状態になっています。
――半年止まっていた人が、2ヶ月で動き出した。違いは何だったのでしょう?
新井:違いは「怖さを書き出したか、書き出さなかったか」、それだけです。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』(総合法令出版)の「起業の7つの壁」では、最後の壁として「リスク回避」を扱っています。リスク回避は「リスクを避けること」ではなく「正体を見ること」だ、というのがその要点ですよ。正体さえ見えれば、人は動けます。
30分でできる、リスク分解の3ステップ
――読者の方が今夜から始められる、具体的な手順を教えてください。
新井:30分もあれば足りますよ。ステップは3つだけです。全部書き出す/会社員のままなら関係ないものを消す/残ったものに対処を1個ずつ書く、この順番で進めてください。
――書く順番が大事なんですね。
新井:頭の中だけで考えるとぐるぐる回りますから、必ず紙に書いてください。スマホのメモでも構いませんが、僕は紙のほうが効きますよと言っています。手で書くと、脳が「これは確定情報だ」と認識するからですね。
――最後に、リスクが怖くて止まっている方にメッセージをお願いします。
新井:「怖さの正体を1枚の紙に書ける状態になった」と思えれば、しめたものですよ。あとは1個ずつ対処を書き加えていくだけ。今夜30分、A4用紙1枚あれば、半年止まっていた状態から抜け出す最初の1歩が踏めます。
――30分の1枚で半年が動き出す。希望の持てるお話でした。今日もありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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