起業の成功率は1割未満? 会社員が知るべき「諦める」と「開き直る」起業家マインドの育て方
「ジャンルを変える=諦めた」と思っていませんか?
――新井さん、今日は「起業準備中のジャンル変更」について伺いたいのですが。半年やって結果が出ないとき、続けるべきか別ジャンルに変えるべきか、本当に迷う方が多いそうですね。
新井:多いですよ。「途中でジャンルを変えるのは諦めたことになるのか、それとも次のステップなのか、判断軸が分からない」という相談、毎月のように届きます。先に結論を言うと、ジャンル変更は失敗でも撤退でもありません。むしろ、起業の現場では当たり前に起こる軌道修正ですよ。
――軌道修正、ですか。
新井:はい。ロケットだって打ち上げ後に何度も軌道を直しながら目的地に向かいます。あれと同じですね。「最初に決めた航路を死守する」のではなく、状況に応じて行き先を最適化する判断ができる人のほうが、結果として遠くまで行けますよ。
半年続けても伸びない人が陥る『サンクコスト思考』
――具体的に、続けるべきか変えるべきか迷っている方の典型例ってありますか?
新井:起業18フォーラムの相談で印象的だったのが、20代後半の会社員Sさんですね。写真編集の代行業を半年続けて、月の売上は1万円前後で停滞していました。それでも「ここで諦めたら終わり」と思い込み、さらに半年続けたのですよ。
――結果はどうなったのですか?
新井:精神的に消耗して、起業準備自体を辞めてしまいました。これが一番もったいないパターンです。決めたジャンルが間違っているサインを見落として、サンクコスト――今までかけた時間がもったいないという感覚――で粘ってしまう。これ、本当に多いですよ。
――確かに、半年もかけたら手放しにくいですよね……。
新井:まさにそこですね。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書きましたが、「成功も失敗もない、あるのは続けるかやめるかだけ」。途中でやめる判断は失敗ではなく、新しい選択肢を取る決断なのですよ。
ジャンル変更を考えていい『3つのサイン』
――ではどんなサインが出たら、変更を検討していいのでしょうか?
新井:サインは3つあります。1つ目が「半年続けても、お客様1人目に出会えていない」。2つ目が「作業をしていて気持ちが沈み、続ける気力が湧かない」。3つ目が「同業者の成功例を見ても、自分が同じ方向に進む気がしない」。
――この3つは厳しいチェックですね。
新井:このうち2つ以上が当てはまったら、ジャンル変更の検討に入っていい段階ですよ。半年というのは目安で、もっと早く気づく場合もあります。「時間をかけたから粘るべき」というサンクコストの感覚は、起業準備の現場ではむしろ捨てたほうが楽になりますね。
――粘ること自体が美徳ではない、と。
新井:そうですよ。粘るべきは「事業を作り上げること」であって、「最初に選んだジャンル」ではないですから。
『変えても無駄にならない』3つの資産
――でも、半年やったジャンルを離れるのは、勿体ない気がしてしまいます。
新井:気持ちはわかりますよ。でも、ジャンルを変えても残せる資産が3つあります。1つ目が「SNSのフォロワー」。あなたの発信が好きな人は、別ジャンルでも残ってくれます。2つ目が「ブログ記事の書き方の習慣」。書く力は持ち越せますよ。3つ目が「失敗した理由の言語化」。次のジャンルで同じ失敗を回避できますね。
――前のジャンルでの試行錯誤が、次の事業の燃料になるわけですね。
新井:そのとおりですよ。40代後半の有田さんという方がいました。最初はオンライン家庭教師で半年やったのですが、手応えがなかった。培った「教える仕組み」を活かして、社会人向けのキャリア相談に切り替えました。3カ月後には月収が前ジャンルの3倍になりましたよ。
――同じ「教える」という土台の上で、お客様の層を変えただけでガラッと変わったのですね。
ジャンル変更を『失敗』にしないコツ
――ジャンルを変えるとき、気をつけるべきポイントはありますか?
新井:「ジャンルをやめる」ではなく「学んだ経験を次に持っていく」という発想に切り替えることですね。前のジャンルで「何が機能しなかったのか」「どんなお客様に響かなかったのか」を言語化してから次に行く。これをやる人とやらない人で、次のジャンルの立ち上がり速度が全然違いますよ。
――言語化、大事ですね。
新井:はい。あとは、変更したらすぐに次が当たると思わないこと。変更後も最低3カ月は様子を見て、それでもサインが揃うようなら、また変えていいですよ。起業準備は試行錯誤の連続ですから(笑)
最後に伝えたい、撤退と軌道修正の違い
――半年やってきて伸び悩んでいる方に、メッセージをお願いできますか?
新井:途中で方向を変えることは、退却ではなく軌道修正です。半年やってサインが揃ったら、続けるか変えるかを冷静に判断してみてください。あなたが本当に積み上げているのは、「最初に選んだジャンル」ではなく、「事業を作る力」そのものなのですよ。
――進む方向は変わっても、歩いてきた距離は無駄にならない、と。今日はとても勇気をもらえるお話でした。ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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