兼業解禁で「動きたいのに止まる」会社員へ。朝晩30分から始める最初の一歩

新井一

新井一

テーマ:起業

就業規則が変わっても、なぜか動けない人たち

――新井さん、最近「うちの会社も兼業OKになった」という声をよく聞くようになりましたね。

新井:そうなのですよ。厚生労働省が2018年に兼業推進のガイドラインを出して、2022年には労働時間管理や情報開示の部分まで改訂されました。制度としてはかなり整ってきている。会社の就業規則も次々と書き換わっています。

――環境は追い風になっているわけですね。

新井:ところが現場で見ていると、「動ける環境」と「動ける自分」の間にもう一段の壁があるのですよ。先日も「就業規則が改定されて3ヶ月、何から手をつければいいか分からないまま止まっています」という相談がありましたよ。同僚はじわじわ動き始めているのに、自分だけ取り残されている感じがする、と。

――それは焦りますね……。

新井:実際に「兼業解禁」というキーワードでの検索数を調べると、月間で480件くらい会社員の方が調べているのですよ。同じように立ち止まっている方が、それだけたくさんいるということ。あなただけじゃないですよ。

「動けない3ヶ月」を生む典型パターン

――止まってしまう人には、何か共通点があるんですか?

新井:4つくらいパターンがありますよ。1つ目が、就業規則の確認だけで満足してしまうタイプ。「うん、うちはOKだな」で終わって、次の行動に進まない。

――確かに、それで安心して終わりがちですね。

新井:2つ目が、起業準備セミナーの情報収集だけで時間が溶けるタイプ。これは多いですね。YouTubeやセミナー案内を眺めているうちに、気がつくと1ヶ月経っているのです。3つ目は「家族に話してから」と先送りしているうちに気力が尽きるパターン。

――話すタイミングを完璧にしようとしすぎる、と。

新井:そう。そして4つ目が、「2時間まとまった時間」を待ち続けるパターン。これが一番もったいない。平日の夜に2時間確保しようと思っても、現実には残業や疲労で潰れる日がほとんどでしょう? 結局、週末まで何もできないまま終わる。

「朝晩30分」で動けるようになる仕組み

――新井さんは「朝晩30分」という言葉をよく使われますよね。

新井:拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』のキーワードです。これは、まさに今お話しした止まり方を解決するために設計した時間管理の考え方なのですよ。

――30分なら、なんとか取れそうな気がします。

新井:そこがポイント。大事なのは、朝の30分と夜の30分で「やること」を分けること。同じ作業を朝も夜もやろうとすると、結局どちらも薄まります。例えば朝の30分は「自分のスキル棚卸し」。頭がクリアな時間に、自分が会社で何をしてきたか、何を商品化できそうかを書き出す。

――夜は何をしますか?

新井:夜の30分は「知り合いへの30分ヒアリング依頼メッセージを送る」。具体的なアクションに振り切るのですよ。朝に考えたこと、夜に動かす。これだけで1週間後には、知人3人くらいから「今困っていること」のリアルな話が集まりますよ。

――なるほど、朝は思考、夜は行動。役割を分けるんですね。

新井:そう。これだけで「考えてばかりで動けない」「動こうとしても何から動けばいいか分からない」の両方が解消されます。

今夜カレンダーに入れるべき「3つ」

――では、この記事を読んでいる方が今週やるべきことは何でしょう?

新井:3つに絞りますね。1つ目は就業規則の兼業・起業関連条項を、正確に読み込むこと。「うちの会社はOK」と思っていても、報告義務や事前申請の有無、競業避止の範囲など、細かいルールがあるはずです。ここを曖昧にしておくと、後で揉めますよ。

――最初の段階で押さえておきたいですね。

新井:2つ目は、朝晩30分の固定枠をカレンダーに入れること。これ、今夜やってください。「気が向いたらやる」では絶対に続きません。スマホのカレンダーで朝6:30〜7:00と夜21:30〜22:00、みたいに枠を取ってしまう。

――予定として可視化する、と。

新井:そうそう。そして3つ目が、知人3名に「現場で困っていること」のヒアリング依頼を送ること。家族でも友人でも、職場の同僚でも構いません。「30分だけ、最近の困りごとを教えてほしい」とお願いしてみてください。これがあなたの最初の事業ネタの種になりますよ。

解禁時代の有利さは「動いた人」だけのもの

――最後に、まだ動けずにいる方にメッセージをお願いします。

新井:兼業解禁が広がっている今は、間違いなくチャンスですよ。10年前と比べたら、会社員が動ける条件は天と地ほど違います。でもね、制度が整ったことの恩恵は、最初の朝晩30分を確保した人にだけ手応えとして返ってくるのです。

――情報を集めているだけでは、何も変わらないと。

新井:変わらないですね。同僚が動き出しているのを見て焦る気持ちは分かりますが、焦って情報収集を増やしても、ますます止まるだけ。今夜、カレンダーに30分の枠を入れる。明日の朝、その30分を実際に使う。たったこれだけで、半年後の景色は確実に変わりますよ。

――小さな一歩こそが、確実な一歩になるんですね。今日はありがとうございました!

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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