起業スクール選びで失敗する人が見落としている「たった3つの基準」
「辞めてから準備しよう」に潜む落とし穴
――新井さん、今日は「退職してから起業準備するか、会社に勤めながら準備するか」についてお聞きしたいのですが、「辞めてからのほうが集中できる」という方も多いですよね?
新井:気持ちはよく分かります。「仕事しながらだと時間が取れない」「辞めてから本腰を入れたい」という声は、本当によく聞きます。ただ、「社会保険コストの計算が抜けている」という共通点が、退職して準備を始めた方の相談に繰り返し出てくるのです。
――社会保険コストが抜けているとは、具体的にどういうことですか?
新井:会社員のうちは、健康保険や厚生年金の保険料を会社と折半しています。退職するとその折半がなくなる。月収40万円なら、40歳以上の場合の本人負担は月約6万円ですが、会社も同額を負担してくれている。その会社負担分が、独立後は自分の財布からまるごと出ていくということです。
――6万円が自腹になると、家計へのダメージは相当ですね。
新井:しかも収入がゼロの期間でも、社会保険料の支払いは続きます。準備期間中にまったく稼げていなくても、請求書は毎月届く。これが独立後の資金計画で一番見落とされやすい部分です。
退職後の社会保険、実際いくらかかるのか
――退職後は国民健康保険に切り替わるかと思いますが、保険料はどう計算されますか?
新井:国民健康保険は前年の所得をベースに計算されます。退職した翌年も、前年の収入に応じた保険料がかかってくる。たとえば前年の年収が480万円あった場合、退職後に収入ゼロでも月3万〜4万円くらいの国民健康保険料が発生します。保険料率は市区町村によって異なるので、正確な金額はお住まいの自治体に確認してほしいですね。
――国民年金もありますよね?
新井:国民年金は月17,920円(2026年度)で固定です。収入に関係なく、毎月かかります。健康保険と合わせると、月5万〜6万円以上の固定費が収入ゼロでも出ていく。それが半年〜1年続くと、当初の貯蓄計画が崩れる方も出てきます。
――思っていた以上に大きな出費ですね……。
新井:だから「辞めてから準備する」には、最低でも生活費+社会保険料を1〜2年分カバーできる資金が必要です。「貯金があるから大丈夫」と思っていた方が、半年で想定以上に資金が減ってしまうというケースを、繰り返し見てきました。
任意継続という選択肢はどうか
――「任意継続」という制度もありますよね?
新井:退職後も会社の健康保険を最長2年間続けられる制度です。保険料は全額自己負担になりますが、保険料に上限があるため、前年収入が高かった方には国民健康保険より安くなるケースがあります。
――向いている人と向いていないケースがある、ということですか?
新井:そうです。ただ任意継続の保険料は最初の計算から固定で、収入がゼロになっても下がりません。2022年1月の法改正で途中で任意脱退もできるようになりましたが、どちらが得かは前年の収入と市区町村の保険料率によって変わる。退職前に両方を試算しておくことをおすすめします。
――退職前に計算しておくことが大事なんですね。
新井:それが一番のポイントです。退職してから「失敗した」では遅い。コスト設計は、準備段階でやっておくほど選択肢が広がります。
在職中に準備する「社会保険の恩恵」
――会社に勤めながら起業準備するなら、会社の保険を使い続けられるわけですよね?
新井:そうです。在職中は会社の折半制度がそのまま使える。保険料の半分を会社が出してくれている状態で、起業準備の期間を過ごせます。同じ6カ月の準備期間でも、退職後と在職中とでは、社会保険コストで数十万円の差がつくことがある。
――差額がそのまま準備資金に回せるということですね。
新井:そういうことです。在職中の準備期間は、コストのかからない実験の場です。売れるかどうかを試しながら、収入の芽を育てておく。会社の給料と保険という安全網がある間に、次のステージへのステップを作っておく。これが「会社を辞めずに、最小リスクで始める」という考え方の核心です。
辞めるタイミングを「数字」で判断する
――では、退職のタイミングはどう見極めればいいでしょうか?
新井:起業の収入成長を4段階で捉えています。月0〜1万円のSTAGE I、月1〜5万円のSTAGE II、月5〜10万円のSTAGE III、月10〜30万円のSTAGE IVです。退職を検討する基準は「STAGE IIIを安定して超えたタイミング」。会社員の収入がある期間に、このステージを着実に上げておくことがリスクを最小化する順番です。
――月5〜10万円が安定してから辞める、と。
新井:「準備ができたら辞める」という曖昧な基準ではなく、「STAGE IIIに安定したら」という数字で判断する。そうすると退職の決断が感情から切り離せます。あわせて、退職後の月額コスト(健保+年金+生活費)を何ヶ月カバーできる貯蓄があるかも確認してほしい。「辞めても○ヶ月は動ける」という状態を先に作っておくことが重要です。
――感情ではなく、数字で辞める判断をするということですね。
新井:リスクは数字で見えれば、対策が立てられます。見えないリスクが一番怖い。ぜひ今日のうちに退職後の月額コストを計算してみてください。
――とても具体的で参考になりました。ありがとうございました!
新井:ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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