人手不足倒産はどうして起きるか
1月16日の日経でも取り上げられましたが、人出不足倒産は過去最高の状況です。
いまや資金がショートすると会社が倒れるのと同様に、人材がショートすると企業が倒れる次代になってきました。
こうした人手不足倒産はどうして起きるのでしょうか。
■人手不足倒産の現状
東京商工リサーチ最新情報によれば、企業全体の倒産件数は減少を続ける中、2018年の人手不足倒産は360件と前年比20%増と、統計を取り始めた2013年以降過去最高となっています。
特に業務を担う人材が確保できずに事業が続けられなくなる「求人難型」が66%増の53件と大きく増えています。
また、人手不足倒産は飲食業や老人福祉・介護事業、貨物自動車運送業などのサービス業が中心となっています。
これらの業界は賃金が十分であったとしても、週休2日でない場合が大半です。そうすると世間並みの賃金を支払ったとしても、労働負荷の面で条件がよい他の業種に人材が流れていってしまうのです。
■典型的な人手不足倒産の例
実は人手不足倒産、若い経営者にはあまりありません。 経営者が65歳以上で人材がショートしはじめるともうやる気出なくなるのです。
調剤薬局ずっとやってきた会社です。70歳の社長と65歳の奥さんが経理担当の専務で全部で4店舗を運営していました。最近、薬剤師が辞めてしまいました。
ある日ひとりの薬剤師Aさんから「私来月やめます。」と社長に言われました。その薬局にはもうひとりの薬剤師Bさんがいたのでとりあえず問題はありません。
しかし、残ったAさんがいなくなった後、もうひとりの薬剤師Bさんの負担が大きくなり、ある日Bさんからも、「仕事が大変になったので私もやめます。」
こうなると、薬局が回っていきません。薬事法上、処方箋1日40枚出す薬局は必ず一人薬剤師置かなければならないからです。
じゃあ薬剤師探せ、そうすると人材紹介会社に頼む、すると人材紹介会社も今は人がいないからおいそれと紹介もしてもらえません。
専務の奥さんからは「どうする父さん?」そうする道は売るか止めるかの2つにひとつしかありません。
「売ろうか?もうこれ」、「何とかファーマシーに売ろうか。日本M&Aセンターに電話しようか?」「やめよう、もうお父さんやめよう。いいよ、あと年金でやろうよ。」
調剤薬局がまわらなくなる。売ろうか、止めるか。
人がショートしてもカバーできない。それがこれです。どうしてやめたのか聞いてみると、要は人がいなくなってしまったのです。
カバーしようとしてもカバーしきれないし、だんだん自分が年をとってくると、もそもやる気がなくなってしまうんです。
■人手不足倒産を防ぐにはどうするか
いちばん伝えたいのは日本の2019年の会社経営はこれだけ切実でしんどいということです。
何か小手先を変えただけで人手不足の問題を根本的に改善するものではありません。
たとえ採用がうまくいったとしても、その会社の人事の方針に問題があったら、どうなるでしょうか。
「勤務条件、社風、福利厚生、従業員のスキルアップ」のを全部無視して会社経営したら、どうなるでしょうか。
そんな会社は倒産してしまいます。たとえ求人がうまくいったとしても残念ながら廃業です。
私は採用コンサルタントとして、「ハローワークを効果的に使って採用改善を図っていく」、ことを中小企業の皆様にご提案しています。
しかし求職者から選ばれる会社、従業員がずっと働き続けたいという会社を作っていくのが、もっと重要なことになります。
■求職者から選ばれる会社とは
それでは入社したくなる会社とは何かをひとことで言うと、「勤務条件」なのです。勤務条件とは何かというと、それは仕事時間の長さです。つまり拘束時間であり職場環境なのです。
皆さん新卒で会社に入りました。一応週休2日なのですが、週1日は出勤させられて、ガンガン朝から仕事の電話がかかってくる。
これでは若い人にとってはたまったものではありません。
まず、自分がお店の子どもでもない限り、土日が休みじゃないというと、ええ?っていわれます。
「土曜、日曜は休むもの」という若い人の時間感覚や曜日感覚は、変わりません。
ある会社では、日曜日は出勤、土曜日は半日勤務にしています。そして平日に2日休めるようになっています。
だから1週4.5日間働けばいいのです。でも週4.5日しか働かなくていいのに土曜日半日働いてというだけで、それは働きたくない、ということになってしまっているのです。
■まとめ
人手不足倒産の顕著なサービス業では多くの場合、土日は休めません。これが、サービス業から他の業種に人が流出していくことによる人手不足倒産が多い理由です。
したがってサービス業で人手不足を起さないようにするためには、劣った「勤務条件」を補うような「社風」であったり、「福利厚生」であったり、「従業員のスキルアップ」の機会など準備しなければなりません。
そうすることで、求人のアピールだけでなく、今いる従業員の離職防止にも備えていくことにもなります。