ペットロス講座を開催しました ~大切な家族との絆を見つめ直す時間~
身近な人にできるグリーフケア
身近な人が、大切な人を亡くしたとき。
「何か声をかけたいけれど、何と言えばいいのかわからない」
「下手なことを言って、もっと傷つけてしまったらどうしよう」
「そっとしておいた方がいいのだろうか」
そんなふうに迷ったことはありませんか。
大切な人を亡くした方を前にすると、「何かしてあげなければ」「元気づけなければ」と考えてしまうことがあります。
でも、グリーフケアで大切なのは、悲しみを早くなくすことでも、元気にしてあげることでもありません。
まず、その人が感じていることを、その人のペースのまま受け止めることです。
大切な人を亡くしたあと、自分を責めてしまうことがあります
大切な人を亡くしたあと、
「あのとき、もっと何かできたのではないか」
「もっと早く気づいていれば」
「もっと優しくしていれば」
「あのとき、あんなことを言わなければよかった」
と、自分を責め続ける方は少なくありません。
亡くなった人との時間を何度も振り返り、
「ああすればよかった」
「こうしていればよかった」
と考えてしまうのです。
そんな方に、私はこんな言葉を届けたいと思っています。
「あなたは最善をつくしましたよ。
やれることは、すべてやってきました。
もっとできたかもしれないと思うことがあったとしても、それがそのときのあなたの精一杯だったんです。
だから、あなたは最善をつくしてきたんですよ。
どうか、自分を責めすぎないでくださいね」
過去を振り返れば、私たちはいくらでも「別の方法」を考えることができます。
でも、そのときの自分には、そのときの状況があり、心の状態があり、体力があり、知っていたこと、知らなかったことがあります。
今の自分だから見えることを使って、過去の自分を責め続けなくてもいいのです。
ただし、すぐにこの言葉をかければいいわけではありません
ここは、とても大切なところです。
相手が、
「もっとできたと思う」
「私のせいかもしれない」
と話した瞬間に、
「そんなことないよ。十分やったよ」
とすぐに打ち消してしまうと、本人は
「この気持ちはわかってもらえないんだ」
と感じることがあります。
励ましたつもりなのに、会話がそこで終わってしまうこともあります。
だから、まずは、
「もっとできたんじゃないかって思っているんだね」
「ずっと、そのことが心に残っているんだね」
「そう思うくらい、大切な人だったんだね」
と、その人の言葉を受け止めてみてください。
答えを出す必要はありません。
悲しみの中にいる人にとって、「自分の気持ちを否定されずに話せること」そのものが支えになることがあります。
何と言えばいいかわからないときは
「何か気の利いたことを言わなくては」と思わなくても大丈夫です。
たとえば、
「何と言ったらいいのかわからないけれど、話したくなったら聞くよ」
「無理に話さなくてもいいからね」
「今、私にできることがあったら言ってね」
そんな言葉でもいいのです。
そして、言葉よりも大切なのが、相手の話を聞くことです。
亡くなった方の話を何度もする人もいます。
同じ出来事を繰り返し話す人もいます。
反対に、まったく話したくない人もいます。
どちらが正しいということではありません。
グリーフの表れ方は、一人ひとり違うからです。
「元気になってほしい」が負担になることもあります
支える側は、相手が元気になってくれると安心します。
だから、
「いつまでも悲しんでいたらダメだよ」
「前を向かなきゃ」
「亡くなった人も悲しむよ」
と励ましたくなることがあります。
けれど、その人は「前を向きたくない」のではなく、まだ前を向ける状態ではないのかもしれません。
悲しみには、その人なりの時間があります。
支える側ができることは、その時間を急がせることではなく、その人のペースを尊重することです。
これが、グリーフケアを知る最初の一歩だと私は考えています。
職場でも、同じことが起きています
家族を亡くしたあとも、多くの人は仕事に戻ります。
一見いつも通りに仕事をしていても、集中できなかったり、突然涙が出たり、眠れなかったり、これまで簡単にできていたことができなくなったりすることがあります。
そんなとき、上司や同僚が、
「もう仕事に戻っているんだから大丈夫だろう」
と考えてしまうと、本人は苦しさを抱えたまま働くことになります。
人事・総務・管理職など、職場で人を支える立場の方にも、グリーフについて少し知っていてほしいと思います。
必要なのは、専門家になることではありません。
「何かいつもと違うな」と気づくこと。
話を聞くこと。
必要であれば、休養や専門的な支援につなぐこと。
身近な支え手が一人いるだけでも、その人の安心感は変わります。
福祉・教育・相談の現場でも
福祉、医療、教育、相談業務など、人と関わる仕事をしている方は、知らないうちにグリーフを抱えた方と接していることがあります。
死別だけではありません。
病気、離婚、失職、ペットとの別れなど、大切なものを失ったときに生じる悲しみもグリーフです。
相談を受ける立場だからといって、すべての答えを持っている必要はありません。
「正しい言葉を言わなければ」と考えるよりも、
相手の話を聴き、
その人の感じ方を尊重し、
自分だけで抱えきれない場合には適切な支援につなぐ。
そうした基本的な関わり方を知っていることが、大切な支援につながります。
私たちは、専門家でなくても誰かの支えになれる
大切な人を亡くした人を前にすると、
「私には何もできない」
と思うかもしれません。
けれど、何か特別なことをすることだけが支援ではありません。
話を聴くこと。
悲しみを否定しないこと。
急がせないこと。
そして、
「あなたは一人ではないよ」
と伝わる距離にいること。
それも大切なグリーフケアです。
そして、いつかその人が、
「もっとできたかもしれない」
と自分を責め続けているときには、
急いで答えを与えるのではなく、まずその思いを受け止めたうえで、
「そのときのあなたは、そのときできることを精一杯やっていたんじゃないかな」
と、そっと伝えてみてください。
支えるということは、悲しみを消してあげることではありません。
悲しんでいるその人のそばに、その人のペースを尊重しながらいること。
そこから、グリーフケアは始まります。


