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日高りえ

死別の痛みを癒し生きる力に変えるグリーフカウンセラー

日高りえ(ひだかりえ) / 心理カウンセラー

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コラム

自分は異常?なぜペットロスを周りの人に理解してもらえないのか

2018年5月19日 公開 / 2022年8月2日更新

テーマ:グリーフケア

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

ペットを亡くしいつまでも悲しみが癒えないと、自分がおかしくなったのではと不安になることがあります。しかし、大切な家族を亡くして悲しみにくれるのは正常な反応です。
周囲の人にとっては「たかが」ペットかもしれませんが、飼い主にとってはかけがえのない存在です。悲しみを抑え込まず、吐き出してしまいましょう。

ペットロスは人にとって正常な反応

 
愛するペットを亡くしたとき、誰しも心にぽっかりと穴が開いたように感じます。その度合いはだいぶ個人差があり、それほど後を引くことなく元の生活に戻っていける人もいます。その一方、喪失感が長く続き、いつまでたっても悲しみが癒えない人も一定数いるのです。

死後数日は仕方がないとしても、10日ほど経過しても深い悲しみのさなかにいるとこのまま立ち直ることができないのではないかと不安に感じることがあります。
さらに、悲しみだけならば理解の範ちゅうですが、行き場のない怒りが次々と押し寄せてきたり、眠れない日々が続いたりすれば、自分はどこかおかしくなったのかと考える人も出てきます。

しかし、ペットを失うことは大きな喪失体験です。ペットは単なる動物ではありません。家族の一員です。家族を亡くしてしまったのですから、並大抵のことではありません。その悲嘆から立ち上がるためには時間がかかります。
悲しみを癒すためには段階を踏みながら、ペットへの気持ちを整理していくことが求められます。

周囲の言葉で傷つくことも

しばしば、この悲嘆からの回復が阻まれることがあります。それは、周囲からの心無い言葉や言動です。

ペットを亡くして悲しんでいる飼い主がしばらく経っても立ち直れないでいると、「いつまで悲しまないで」と叱咤激励されることがあります。言っている方としては悪気があるわけではないのですが、根底には「たかが」ペットという気持ちがあります。そのため、ペットを亡くしたくらいでいつまでも悲しんでいるのは大げさだ、おかしい、という意図の言葉を投げかけてしまうのです。場合によっては、代わりのペットを飼うことを勧められることもあります。

当人とすれば、自分から悲しみたくて悲しんでいるわけではないのです。まるで、落ち込みを当人のせいであるかの物言いは死別の悲しみに追い打ちをかける仕打ちです。周囲がこんな人ばかりであれば、辛い気持ちを打ち明けたくても表に出すことができなくなってしまいます。

確かに、ペットのことを知らない他人には「たかがペット」かもしれませんが、飼い主にとってはまごうことない「大切な家族」です。これは同じ経験をした人にしか分からないことです。何も知らない他人に理解してもらう必要はありません。別れの悲しみに蓋をしてしまわないでください。

もし可能であれば、ペットを亡くした経験のある人やペット仲間などに、辛い心の内を知ってもらいましょう。言葉を尽くさなくても、きっと共感してくれるはずです。

ペットとの依存度や距離感によって悲しみの度合いは変わる

ペットを亡くした人の間でも、悲嘆の度合いは様々です。その違いは何に由来するものなのでしょうか。個人差があるだけではなく、同じ人であっても複数飼育していたペットの間で悲しみの度合いが異なることもあります。こうしたことから、いくつかの傾向がみえてきます。

1つ目は寿命よりもだいぶ早く死んだ場合です。
早期発見していれば助かったであろう病気や、生活習慣病が原因で亡くなった場合には、飼い主が予見できた可能性があります。そのため、自責の念や罪悪感、後悔といった感情が伴うためペットロスにつながりやすくなっています。

2つ目は事故による突然死です。
犬の散歩でリードを付けずに散歩をしていて交通事故に遭った。気が付かないうちに外へ出ていった猫や鶏が外的に襲われた。こうしたケースでは、飼い主の管理下にあったはずなのに防げなかったことに後悔や罪悪感が生まれます。

3つ目はペットとの接し方です。
傾向としてはペットへの依存度が高ければ高いほど、ペットロスの症状は重く長期化しやすくなります。生活がペット中心に動いている人や、高齢のペットの介護で献身的に世話をしてきた人は、死別で突然人生の目標を失うことになります。これから何をして、何のために生きるのか分からなくなってしまうのです。

ペットへの愛情が深いことは悪いことではありません。それでも、依存しすぎることは危険です。ペットは飼い主に依存しなければ生きていけませんが、飼い主はペットに過度に依存することなく精神的に自立する必要があります。

このように、悲嘆の度合いは状況によって変わります。とは言え、そこから立ち直るための過程は変わることはありません。愛するものを亡くして嘆き悲しむことは自然なことです。無理やり押さえつけることで、悲しみを心の中にとどまり続けることになってしまいます。

悲しみは本人が自覚した上で外に吐き出さない限り、いくら時間が過ぎようとも心の奥底にとどまり続けます。悲しみがやってきたならば、無理に笑顔を浮かべなくてもいいのです。涙を流し感情をあらわにすることは辛く苦しいことです。それでも、いつまでもしまい込んでいれば、体や心に悪い影響を与えかねません。

精神的に辛い状態はしばらく続きますが、通常は数カ月もすればしだいに回復へと向かっていきます。この場合は自然に任せておけばよいでしょう。全く改善するようには思えず、日常生活にも支障をきたすようであれば、一度専門家に相談することをお勧めします。


グリーフケアカウンセラー 日高りえ

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