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日高りえ

死別の痛みを癒し生きる力に変えるグリーフカウンセラー

日高りえ(ひだかりえ) / 心理カウンセラー

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コラム

大切な人と死別した人が罪悪感から立ち直れない理由

2018年2月24日 公開 / 2022年8月2日更新

テーマ:グリーフケア

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

大切な人を亡くした時、罪悪感にさいなまれることがよくあります。死別の原因を自分のせいだと決めつけて自分を責めてしまうものです。何をしてもしなくても、悔やむ気持ちは止めどなく自分を責め続けます。
後から考えれば、あの時にこうしていたらと思いを巡らせてしまいますが、それでも、その時の最善を尽くしてきたはずです。どれも仕方がなかったことばかりです。残念ながら、完璧な人間などいません。今できることに向き合っていきましょう。

罪悪感は落ち度がなくても生まれる

「寿命だったから」「本人も納得していたから」というように、死のすべてを受け入れられる場合には、悲しみながらも時間とともに立ち直ることができます。

しかし、実際にはそのように上手く進むことはまれです。大切な人との死別後は、罪悪感や自分を責める気持ちにさいなまれることが少なくありません。愛する人が亡くなったのは、自分の配慮が足りなかったせいだという強い思いに支配されてしまいがちです。

罪悪感は、その人が死んだ原因を自分がとった態度や言動と結び付け、自分を責めてしまうことから生じます。

事故に遭った場合は「自分が違う行動をとっていたら亡くならなかったのではないか」。病気が原因の時には「自分が早く気づいて検査を受けさせれば、手遅れにならなかったのではないか」。後悔することはいくらでも湧いてきます。

「ケンカをしたまま仲直りできなかった」「もっと好きなことをさせてあげればよかった」「自分だけ生き残ってしまった」このように、悔やむ原因はいくらでもあります。

何かまずいことをしたのならばまだしも、何もしていなかったとしても罪悪感は生まれます。それだけに、誰しも罪悪感を覚えずにはいられないのです。

ただ、罪悪感は全て否定すべきものでもありません。人によっては、自分を責めることで心の正常を保っているという側面もあるからです。そうした意味では、罪悪感は全面的に悪いわけではないかもしれません。

罪悪感には、ちょっとした心残りという軽度のものから、激しく自責の念を感じるものまで幅広くあります。なかでも深刻なものは、自分に落ち度があると思い込んでいる場合です。直接死因と関係がなくても、後から自分の取った行動を関連付けて悔やんでしまうのです。

亡くなったのが親や子、配偶者であった場合には、死に直接関係することだけが後悔の対象となるわけではありません。過去に一緒に過ごした時間すべてにわたることもあるので注意が必要です。

怒りは外へ、罪悪感は内へと向かい感情を抑圧

死別直後に出てくる怒りは、その対象が外へと向くものです。それに対して罪悪感は内へ内へと向かい感情を抑圧していきます。これらが高じて深刻なものになると、うつ病やトラウマの原因となることもあるので周囲のサポートが欠かせません。

特に深刻な問題へと発展しやすいのが、自死によって亡くなった場合です。
自死が遺族にとって他の死別と大きく性質が異なる点は、その動機を理解できないという点です。遺書を残していたとしても、実際のところ当人の心の内がすべて分かるわけではありません。亡くなった人の心情を理解することは非常に困難です。

そのため、動機がはっきりしていないと、家族や周囲の人は「自分が悪かったのではないか」と思い込んでしまいがちです。自死で家族を亡くすと、家族の中では亡くなった人のことに触れるのはタブー視されてしまいます。そのため、分かってあげられなかった、助けられなかったという罪悪感を、それぞれの家族が抱えることになってしまいます。

自死は、直前の行動が引き金になったわけではなく、もっと大きな問題全体の中での現象です。遺された人が関連付けて罪の意識を負うことはありません。

自死は、社会的にも許されないという雰囲気が遺された家族を孤立させてしまいます。近所の人や友人、場合によっては親族にも事実を伝えることができません。周囲の人が気づいても口に出せません。誰にも打ち明けることができないせいで、悲しみを抱え、心も閉ざしがちになってしまいます。

今できることは何かという発想に

どんなに自分を責めても、罪の意識を感じたとしても、時間をさかのぼってやり直すことはできません。そして、亡くなった人に直接謝ることも、許してもらうこともできないため、もう取り返しがつかないと嘆くのも無理もない話です。

しかし、罪悪感にとらわれている以上、つらい気持ちから逃れることはできません。死別後すぐには難しいかもしれません。混乱のさなかでは、怒りと罪悪感に支配されがちです。罪の意識はいろいろなことから生じます。長い間罪の意識にとらわれていると、いつまでも悲嘆することから抜け出せません。

いくばくかの休息の期間をおいたならば、深呼吸して現実を見つめてみましょう。落ち着きを取り戻せたならば、今までのことは仕方がなかったことだと気づけるかもしれません。実際、遺された人が自分を責める事柄は、傍から見れば根拠のないことであったり無理に粗を探しているようなことであったりもします。

世の中に完璧な人などいません。時には過ちをおかすこともあります。置かれていた状況でよく頑張っていたことを思い出してみましょう。

信頼できる友人やカウンセラーに話を聞いてもらい、気持ちを分かちあうことが罪悪感を消し去る方法です。自分一人で罪の意識を抱え込まず、外に出て明るい日の光の下で考えてみることです。

自分の気持ちを否定するのではなく、まずは受け入れるところから始めましょう。時間がかかっても過去ではなく今に目を向けていくことで、罪悪感は薄れていくでしょう。今、目の前のことを精一杯こなすことで、過去の自分の行動も認められるようになっていくものです。


グリーフケアカウンセラー 日高りえ

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