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日高りえ

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日高りえ(ひだかりえ) / 心理カウンセラー

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最愛の母親との死別「母ロス」から立ち直るためのポイント

2017年12月1日 公開 / 2022年8月2日更新

テーマ:グリーフケア

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

いつかは死別すると頭では理解していても、いざ母を失うとショックで立ち直れなくなることがあります。これは「母ロス」とも呼ばれ、母子のつながりが強い日本で顕著な傾向です。

立ち直るためには、事実を受け入れしっかりと悲しむ時間をとることです。自分一人で抱え込まず、周りの助けに頼ることも必要です。

母ロスになりやすい原因

人はいつか死にます。それでも親の死に直面するのは大抵子どもが50代、60代になってからです。

近年の医療の進歩や食生活の向上によって、寿命が延び元気な高齢者が巷にあふれています。高齢化の進む現代では、親も子も永遠にこのまま過ごすことができるような錯覚に襲われます。

それでも私たちは無意識のうちに、親は自分より先に死ぬと思っています。つまり、親が死ぬとなれば次は自分の番です。親の死について考えることは恐ろしく悲しいものです。親自身がいなくなること、そして自分もまた老いて死んでいくのだという事実を突きつけられるからです。

親子の絆はほかのどんな関係よりも長く強い結びつきです。欧米では配偶者を亡くした場合の喪失感が大きいですが、日本では親の場合により強い傾向がみられます。

欧米ではパートナーとの絆が強いのに対して、日本では親子間で親密です。そうした事情から、父親よりも母親を亡くした時のショックが甚大で「母ロス」という言葉まで生まれています。

人格形成などに大きな影響を及ぼす母親の存在

母と子の結びつきは子どもが生まれたときから続き、大人になってもそれは続きます。母親と身体的なつながりがあるのは当然ですが、それ以上に成長する過程で受けるさまざまな影響は人格形成に多大な影響を与えます。

そのため、大人になっても性格や価値観は母親の影響が色濃く残っています。離れて暮らしていても、ふとしたことで母の言葉やしていた習慣を思い出し感情が揺さぶられることがあります。

また、大人になると社会的な責任がのしかかってくるものです。そんな時、母親が小さかった頃の思い出話をしてくれれば子供時代がよみがえってきます。母を亡くすことで、人生の大切な子供時代の思い出を分かち合える存在をも失うことになってしまいます。まさに、自分の過去を失った感覚です。

大人になり母とは無二の親友のような関係になることも

子の人生のステージによる母との関係の変化もあります。子が小さいうちは依存するばかりですが、年齢を重ね結婚し自分も親という立場になると対等な友情のような感情が芽生えます。支配や反抗という関係ではなく、分かり合える気楽な間柄となることができれば、母と子は無二の親友のようになります。この段階で母が亡くなれば、長い付き合いのかけがえのない親友を失うことになります。

高齢で闘病生活に入ったり、介護が必要になった母を見送ったりすることも母ロスの引き金となります。やむを得ず施設に入れ、寂しい思いをさせてしまった、看取ることができなかった、もっとできたはずなのにと、亡くなった後に罪の意識を感じる人は珍しくありません。

自宅で手厚く介護をしていたとしても、ゆっくりと弱っていく母を見守り続けるのは辛いことです。それまでは元気で頼りにしていた母が、今ではすっかり衰えて弱音を吐いているのは受け入れがたい事実です。特に長く患った後に亡くなった場合、死後の悲しみよりも生前見守ってきた辛さが癒えるまでに時間を要します。

立ち直るためのアドバイス

母親の死は人生のなかでも非常に大きな喪失です。しかし、葬式が終わりしばらくすれば周囲はもとの生活に戻っていきます。

大人になってから高齢の母親を亡くしたとなれば、いつまでも悲しんでいることは許されない雰囲気があります。しかし、死別の苦しみは人間関係や結びつきの強さでさまざまです。他人におもんばかれるものではありません。

それでも、悲しんでばかりはいられません。母と一緒に子の人生も終わってしまったわけではないからです。母親も子どもが打ちひしがれたままでいることを望んではいません。立ち直るのはある程度の時間がかかります。多くの人の経験に学び、前を向けるよう心がけましょう。

■事実を受け入れること
母を失ったという現実を受け入れられず、死を否定するという心の動きがあります。しかし、悲しみをしっかりと受け止め事実として理解することが必要です。亡くなったのは夢だなどと受け入れないでいることは、一時的な回避に過ぎません。現実を直視しない限り悲しみから立ち直るすべは見つかりません。

■感情を抑え込まない
日本の文化では感情をストレートに吐き出すことは、あまり好まれません。気遣いや恥じらいから、悲しみや怒りの感情を表せないこともあるでしょう。

しかし、気持ちを心の奥底にしまい込んでしまうことで、悲しみから立ち直りにくくなってしまいます。表面上では元気に見えていても、心と体に大きな負担がかかっているために、後から影響が出てくることがあります。

特に男性であれば人前で泣くことさえ良しとしない風潮もあります。感情を表現することはいけないことではありません。泣きたければ泣く。負の感情であっても誰かに話すことが必要です。気兼ねがあって周りの人に話すことができなければ、カウンセラーに話を聞いてもらうのもよいでしょう。

■周囲に助けてもらうこと
周りの人が助けの手を伸ばしてくれたら、ありがたく受け入れましょう。友人や近隣の人の理解やサポートによって辛さが和らぐこともあります。

ときには自分から援助を求めることも必要です。周りが何かしてあげたいと思っていても、遠慮していることもあるからです。必要があれば専門家に頼ることも考えましょう。

■時を待つ
悲しみから立ち上がるには時間がかかります。母を亡くした後は、もう以前の自分には戻れないような気持ちになるかもしれません。しかし、いつかは回復すると信じることが力となります。

そのためには悲しみにひたる十分な時間が必要です。時間の経過とともに、嵐のような感情が少しずつ整理されていくはずです。

尊敬できる母であったり、親友のような母であったり、または愛情表現が上手でなかった母親であったりするかもしれません。それでも、自分をこの世に生み出してくれたたった一人の母親です。悲しみが長く続くことは恥ずかしいことではありません。感謝を胸に悲しみと上手に向き合っていきましょう。


グリーフケアカウンセラー 日高りえ

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