なぜ運動を頑張っても身体が変わらないのか|理学療法士が考える身体づくりの順番
「もっと早く相談してくれていたら」
理学療法士として現場に立っていると、何度もそう感じる瞬間があります。
肩を痛めてしまった選手。
繰り返す足首の捻挫。
練習を続けながら腰の痛みを抱えている選手。
その多くは、努力不足が原因ではありません。
誰よりも練習し、自主練習も欠かさない選手ほど、身体の使い方や疲労の蓄積に課題が隠れていることがあります。
私は普段、脳卒中後遺症やパーキンソン病、整形外科術後の方の身体づくりをサポートしています。
一方で、高校バドミントン部の外部コーチとしても活動を続けています。
「なぜリハビリの専門職が、競技現場に関わるのか」と聞かれることも多いので、今回はその理由をお話しします。
ケガをしてからではなく、ケガをする前に関わりたい
リハビリの現場では、「もっと早く身体の状態を知っていれば、ここまで悪化しなかったかもしれない」と感じる場面が少なくありません。
ケガは、痛みが出た場所だけに原因があるわけではないことがほとんどです。
肩の痛みの背景に体幹や股関節の使い方が関わっていることもありますし、足首の捻挫を繰り返す選手の多くは、姿勢やバランス能力に課題を抱えています。
だからこそ私は、ケガをしてから関わるのではなく、ケガが起きる前の段階から選手の身体を見ておきたいと考えるようになりました。
これが、競技現場に関わり続けている一番の理由です。
頑張っているのに結果が出ない選手がいる
高校生の選手たちと接していて感じるのは、「結果が出ない=練習量が足りない」とは限らないということです。
実際に評価してみると、柔軟性に左右差があったり、特定の動作パターンに偏りがあったり、疲労が想定以上に蓄積していたりするケースが多くあります。
競技力は、練習量だけでは説明がつきません。
技術指導と並行して、身体の状態を整理する視点が必要だと感じています。
バドミントンという競技の特性
バドミントンは、前後左右への素早いフットワーク、ジャンプ、着地、スマッシュ動作など、全身を使う競技です。
肩・膝・腰・足首といった部位に負担がかかりやすいことは事実ですが、痛みが出ている部位だけを見ていては、本当の原因にたどり着けないことがあります。
そのため私は、痛みの場所だけでなく、姿勢・身体の使い方・柔軟性・筋力・バランス能力・コンディション、さらに活動量や生活習慣まで含めて、身体全体を評価することを大切にしています。
同じ「捻挫」でも、原因は選手によって一人ひとり異なります。
理学療法士という立場だからこそ見える視点
私が現場で重視しているのは、フォームの良し悪しだけではありません。評価をもとに、「今、何から整えるべきか」という順番を考えることです。
これは、脳卒中後遺症の方やパーキンソン病の方への支援と、根本的には同じ考え方です。
今の身体の状態を正しく評価し、その人に合った順序でアプローチする——対象が学生アスリートであっても、退院後の生活期の方であっても、本質は変わりません。
目指しているのは「治すこと」ではなく「挑戦できる状態をつくる
私が目指しているのは、ケガを治すことそのものではありません。選手が身体の不安を抱えずに競技に挑戦できる状態をつくることです。
高校生の選手たちは、勝つことも負けることも経験しながら、将来につながる多くのことを競技から学んでいきます。
その挑戦の機会を、身体の不安によって失ってほしくない——
そう思いながら、これからも理学療法士として、そして外部コーチとして、競技力向上とケガ予防の両面から選手たちを支えていきたいと考えています。
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