住まなくなった空き家を貸したい!手続きの流れ
今回は、マイナスの遺産や空き家がある場合に相続放棄をすることのメリット・デメリット、手続き方法についてご説明します。
空き家の相続放棄はなぜおこるのか
遺産相続で相続するものは、現金、証券、美術品や骨董品、土地・不動産などがありますが、マイナス遺産も相続しなければならないことはご存じでしょうか?
マイナス遺産とは、簡単にいえば被相続人の借金や負債のことですが、場合によってはマイナス遺産のほうが多い場合もありえます。またもう一つ問題となるのが、被相続人が亡くなってしまい、誰も住まなくなってしまった空き家の相続です。
空き家の相続放棄がなぜおこるのかを知るには、まずなぜ空き家が増えているのかを知る必要があります。
日本において空き家が増えている理由は一つではありませんが、そのなかでも大きなものとして、少子高齢化が挙げられます。そして少子高齢化に伴って進んでいる高齢者世帯の増加こそ、空き家が増加している最大の要因といえるのでしょう。
厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査(平成29年)」によると、高齢者のみの世帯数は年々増加の一途をたどっていて、平成29年には13,223件となっています。平成元年は3,057件ですから29年でその数は4倍以上も増えているのです。
そして高齢者のみの世帯が増えているということは、その子どもたちはすでに家を出て就職をしたり結婚をしたりして別に生活基盤を築いていることになります。
つまり高齢の親が亡くなっても、子どもたちには生活する場所があるため、故郷の実家などに戻ることが難しく、その結果として空き家が増えてしまうのではと考えられます。
相続した空き家をそのまま放置すれば、固定資産税の負担があるだけではなく、定期的に管理をしないと行政に特定空き家の指定をされ、場合によっては解体の費用まで負担しなくてはならなくなります。
相続してすぐに売却ができればよいのですが、売却するためにもリフォームやリノベーションをするための費用は必要になります。こうしたことを避けるため、相続放棄をするケースが増えているのです。
相続放棄することのメリット、デメリット
親が長らく住んでいた家ではあるものの、さまざまな事情で空き家にせざるをえない場合、また親の遺産として借金や負債がある場合は、相続放棄をすることで多くの負担を回避することが可能になります。
これこそが、相続放棄の最も大きなメリットです。またそれ以外にも万が一、相続人同士で遺産トラブルが起きたとしても、巻き込まれてしまうことがなくなることも、相続放棄のメリットといえるでしょう。
しかし相続放棄はメリットばかりではありません。具体的には次のようなデメリットもあります。
【プラスの遺産も相続できなくなる】
上述したように相続放棄は空き家の管理や借金・負債から解放されることがメリットですが、同時にプラスの遺産を相続することもできなくなります。
相続放棄はすべての相続を放棄するという意味であり、プラスの遺産だけは相続するといったことはできません。
【相続財産管理人が決まるまでは管理責任が残る】
相続放棄をすることで、空き家の管理から解放されるとしましたが、実は必ずしも相続放棄をするだけで空き家の管理責任がなくなるわけではありません。
ほかの相続人が代わりに相続してくれれば問題はありませんが、それができない場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任請求をする必要があります。そして相続放棄をしたとしても、新たな管理人が選任されるまでは、責任をもって管理しなければなりません。
相続放棄の手続き
相続放棄をすることのメリット、デメリットを考えたうえで、それでも相続放棄をする場合は、相続が始まったことを知った日から起算して3カ月以内に手続きをしなくてはなりません。
相続放棄の手続きは、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄している家庭裁判所で行います。必要な書類は、「相続放棄申述書」「相続放棄をする人の戸籍謄本(もしくは除籍謄本か改正戸籍謄本)」「被相続人の住民票除票、または戸籍の附票」です。
これらに必要事項を記入したうえで、家庭裁判所に提出します。数日から2週間以内に照会書が届くので、そこに記載されている質問事項に回答して返送し、問題がなければ完了です。
なお必要な費用は収入印紙代800円と、申述人一人につき150~460円の郵便切手代です。
放棄した不動産はどうなるか
最後に、放棄した不動産はどうなってしまうのかについてご説明します。
上の段落でも書いたように、相続放棄をして、引き継ぐ人がいない不動産は、第三者である相続財産管理人が管理を行います。そしてその管理費用は、相続財産の中から支払いますが、足りない部分は相続放棄をした本人が負担しなければなりません。
なお、相続財産管理人は不動産の精算を行い、その後は国庫に引き継がれます。しかし、国がそういった不動産を引き取ることはほとんどありません。
理由は、相続放棄されるような活用の用途が見込めない不動産は、国もほしくないからです。そうなると、相続財産管理人の管理業務は終了しないため、相続放棄をしたものの、管理費用を支払い続けなければなりません。
もし被相続人に借金や負債といったマイナス資産がない場合は、空き家になったとしてもそのまま相続をして、自分が管理をしたほうが相続財産管理人の管理費を負担するよりも安く済むケースもあります。そのため空き家になったからといって安易に相続放棄をするのではなく、専門家の意見も参考にしながら検討されることをおすすめします。