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家族信託で信託財産が不動産の場合の税金は?

藪﨑秀實

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テーマ:家族信託のすすめ

家族信託を行う理由は、その家族によって異なりますが、一般的には高齢になった親の財産管理、認知症対策、遺産相続トラブルの回避を目的として行われます。また財産管理や相続というと、節税対策のためと思う人もいるかもしれませんが、家族信託は節税対策としての効果はそれほど大きくはありません。
今回は家族信託にかかる税金の種類、特に信託財産が不動産の場合の税金についてご説明します。

家族信託と相続、贈与の違い

家族信託とは、自分の財産を自分以外の家族の誰かが管理・運用・処分を行う権限を与えるものです。これだけで見ると、財産を持つものが家族にその財産を譲ると理解し、そこに贈与税、もしくは相続税がかかるのではと思われるかもしれません。

しかし注意すべきは家族信託の場合、財産を与えるのではなく、財産の管理・運用・処分を行う権限を与えるという点です。具体的な例として、親の財産を子が管理・運用・処分するとして考えてみましょう。

親の財産を子が生前贈与や相続によって与えられた場合、親が贈与者・被相続人であり、子は受贈者・相続人という関係性になります。この場合、子は親からの財産を譲り受けるわけですから、利益を得ることになります。贈与税、相続税はその利益に対して税金がかかります。

これに対して家族信託は、親が財産の管理を委託する委託者であり、子はその委託を受ける受託者という関係性になります。この際、子は親の財産を管理・運用・処分する権限を委託されただけのため、仮にその財産で株を買い利益を上げたとしても、その利益を受けられるわけではありません。そのため贈与税、相続税といった税金はかかりません。

冒頭でも触れたように家族信託は、親の財産管理や認知症対策として行われることが一般的なため、財産の所有者は変えずに管理者だけを変更することが可能です。もちろん管理者が利益を受けられる受益者にすることもできますが、通常は財産の所有者は親のまま、つまり委託者と受益者が親で、管理だけを子に委託することから、贈与や相続に関する税金はかかりません。

家族信託でかかる税金の種類

では改めて、家族信託ではどういった税金がかかるのかについてご説明します。

【贈与税・相続税】
前項で家族信託では、利益を受けるものが変わらないため、贈与税や相続税はかからないとご説明しました。しかし委託者であり受益者でもある親が、受益者の権利を子に移転した場合は、当然ながら贈与税がかかります。

また親が生きている間は受益者は変わらず、亡くなった時点で受益者を子に移転した場合は、親が亡くなった時点で相続税がかかります。

【所得税・法人税】
受益者を親から子へ移転する際、家族へ売買して利益を得た場合、所得税がかかります。また同族法人へ売買して利益を得た場合、法人税がかかります。


次に信託財産が不動産の場合にかかる税金についてご説明します。

【譲渡所得税】
委託された不動産を売買した際に発生する利益に対する税金として、譲渡所得税がかかります。

【登録免許税】
家族信託で不動産を信託にする場合、所有者は親のままですが、名義は子へ変更します。その際、名義変更の手続きに登録免許税がかかります。

【固定資産税】
親から受託した不動産に固定資産税がかかります。

ここまで家族信託を行った際にかかる税金について見てきましたが、これらの税金を負担するのは基本的に委託者である親となります。もちろん委託者から受益権を購入した後に出た利益に関する税金は、受託者である子の負担です。しかし、それ以外に関しては、利益を受けるのは委託者である親となるため親の負担です。

なお、登録免許税や固定資産税は名義を子に変更しているため、納税通知書は子へ届きます。しかしその際の支払いは親の財産から拠出することが認められていますので、実質的な負担は子ではなく親となります。

事業承継が絡んでいる場合は節税となることも

冒頭で家族信託の主な目的は高齢となった親の財産管理や認知症対策としてであり、節税には大きな効果はないとしました。しかし事業継承が絡んでいる場合に限っては、節税になるケースもあります。

委託者である親が会社のオーナーだった場合、遺産相続トラブルの回避対策として、個人所有している証券や不動産を自身の会社に売却してしまうことで財産を法人所有にする方法があります。しかしこの方法は、売却したオーナー(親)に譲渡所得税がかかるうえ、取得した法人にも不動産取得税がかかってしまいます。

これを避ける方法として、家族信託を使い、受託者を法人とし、株式の議決権を集結しながら一次受益者を委託者(親)、二次受益者を相続人(子)とすることで、信託契約時点での課税がなくなります。

さらに委託者である親が亡くなった後も、法人が受託者となっているため、会社経営は問題なく継続しながら、株主としての利益は二次受益者である子に移転されるようになり、大幅な節税が実現します。ただし手続きなど知識を必要とするため、詳しくは専門家に相談されることをおすすめします。

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藪﨑秀實
専門家

藪﨑秀實(宅地建物取引士)

株式会社 あいしん不動産

不動産を売りたい人、買いたい人の思いをくみとり、より良い提案をしています。昨今問題になっている空き家のこと、新しい相続の形「家族信託」などの相談にも、専門家などと連携して相談に応じています。

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