40年ぶりの大幅な相続法改正、これからの相続はなにが変わる?
2019年1月13日から自筆証書遺言は、一部手書きではなくてもよくなりました。自筆遺言者の本分は自書ですが、財産目録はパソコン等で作成し遺言書に別紙として添付することができます。これにより、遺言を残す人の負担が軽減されることになります。
遺言の種類
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、そして秘密証書遺言があります。
秘密証書遺言は、遺言者が手書きで作成し、公証人が封印して保管するというものです。遺言書の内容を誰にも知られたくない場合に有効ですが、一般的に用いられる方法ではありません。
一般的な遺言書と言えば、自筆証書遺言と公正証書遺言になるでしょう。
公正証書遺言は、遺言者が証人2名の立会いのもと公証人に遺言の内容を伝え、内容を聞いた公証人が作成します。
公証人は、裁判官、検察官、弁護士あるいは法務局長や司法書士など法律関係の実務経験者の中から法務大臣が任命します。法律の専門家ですから、作成された遺言書に不備がなく、公証人が作成した公正証書遺言は高い信用性があります。
自筆証書遺言はその名の通り、遺言者が自分で作成する遺言書です。証人の立会いなどの必要はありません。自分の財産を「誰に」「何を」「どれだけ」引き継ぐのか、いつでも自分で作成することができます。
しかし、自筆証書遺言の場合、様式の不備などによって、作成した遺言書が無効になる可能性もあります。多くの専門家が公正証書遺言をすすめる所以です。
加えて、自筆証書遺言には、もうひとつ大きな問題がありました。自筆証書遺言は全文を、遺言者本人が手書きしなければならなかったことです。
これまでの問題点
従来の制度では、自筆証書遺言は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とされていました。
遺言書には、自分の財産を「誰に」「何を」「どれだけ渡すか」を記載するわけですが、その遺言書の本文と共に重要なのが「財産目録」です。「誰に」「何を」「どれだけ渡すか」の「何を」を「財産目録」で明確にしておかなければなりません。
土地と建物を所有している場合、その土地について所在、地番、地積(広さ)を自書します。
建物についても建物の所在、家屋番号、種類(例えば居宅)、構造(例えば木造瓦葺2階建など)、また2階建てであれば1階と2階それぞれの床面積などすべてを正確に、自分の手で書く必要がありました。
マンションの一室を所有していれば、区分所有権として、建物の所在、建物の名称に始まり、専有部分について、敷地権について等々、細部にわたって正確に手書きしなければなりません。
しかし、これでは作業量が多く、高齢の方にとってはたいへんです。
そこで今回、「自書によらない財産目録を添付」することができるよう法改正されたわけです。具体的には、財産目録をパソコン等で作成し、別紙として添付することができるようになりました。
また、預金についても、これまでは銀行名、支店名、店番、口座番号等を自書する必要がありましたが、今回の法改正で、預金通帳のコピーを添付することが認められました。不動産登記簿謄本や固定資産評価証明なども、コピーを添付することができるようになりました。
別紙として添付する財産目録の書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし、遺言者以外の人が作成することもできます。
改正後の注意ポイント
自筆証書遺言は、今回の改正で作成の負担がぐっと軽減されることになりました。しかし、自筆証書遺言の本文については、これまで通り、すべて自書しなければなりません。
今回の改正は、あくまでも財産目録についてはパソコン等を使ってもよい、ということです。
「誰に」「何を」「どれだけ渡すか」、遺言書の本文は遺言者が手書きし、署名・押印する必要があります。
財産の種類ごとに別紙として財産目録を作成し、遺言書の本文に「別紙財産目録1に記載した財産(例えば不動産)をAに遺贈する」とか「別紙財産目録2に記載した財産(例えば預金)をBに相続させる」と自書し、署名・押印。そして、財産目録を添付します。
パソコン等で作成した別紙財産目録についても、別紙ごとに遺言者本人が署名・押印が必要です。つまり、不動産に関する別紙財産目録に遺言者の署名・押印が必要であり、預金通帳をコピーした別紙についても遺言者の署名・押印が必要ということです(財産目録を両面印刷した場合、表面、裏面のそれぞれに署名・押印します)。
また、パソコン等を使って作成する財産目録は、本文と別の用紙でなければなりません。1枚の紙の上段に遺言書の本文を手書きし、その下に署名・押印。同じ紙の下のスペースにパソコン等で財産目録を記載するという体裁は認められません。
なお、パソコン等を使って作成した財産目録に誤りがあった場合には、これまでと同じく、誤った箇所に線を引いて修正文字を手書きし、判子を押します。そのうえで「上記、○字削除○字追加」と自書し、さらに遺言者の氏名を手書きします。