財産管理の手法として家族信託を選択するメリット
家族信託は財産の権利を親に残したまま、名義のみを子に移すことができます。これは信託法ならではの仕組みで、従来の民法ではできなかったことです。
これによって、契約などの法律行為を子が行い、その利益を親が受けることができます。「それでは税金はどうなるの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
今回は家族信託における相続税と贈与税についてお伝えいたします。
「委託者」「受託者」「受益者」の関係
税金についてお伝えする前に、家族信託の仕組みについて簡単にご説明いたします。
信託は「委託者」「受託者」「受益者」の3者によって成り立ちます。
委託者 財産を信頼できる人に託します。
受託者 財産を託され、管理、運用、処分をします。
受益者 信託財産の利益を得る人です。
財産を持っている人を「委託者」と呼び、その財産の管理を任された人が「受託者」です。託された財産を「信託財産」といい、そして受託者の行為により利益を受ける人が「受益者」ということです。
贈与税と相続税の考え方
活用例で家族信託の仕組みをご紹介しましょう。
たとえば、委託者である父は、受託者である息子にマンションを譲渡し、管理してもらいます。息子は、その家賃収入を受益者である父に渡し、父が亡くなった後は、マンションは息子のものとなります。
この場合、マンションの名義は形式的に息子になりますが、受益者は父のままです。
ところで、贈与税と相続税はどのような時にかかる税金でしょうか?
それは「財産が無償で移転する時に課税される」というのがポイントです。
つまり、贈与税と相続税について考える上では、受益者が移らないと、所有者が移ったと考えません。
したがって、譲渡の前も後も受益者は父親のままというこのケースでは、贈与税も相続税も発生しないことになります。
受益者に贈与税が発生するケース
信託契約では、委託者と受益者が違ってしまうと、委託者から財産を贈与されたと見なされ、受益者に贈与税がかかります。
したがって、受託者である息子が、当初から受益者になると、息子に贈与税がかかることになります。
受益者に相続税が発生するケース
「父親=委託者=受益者」とした場合、当初は贈与税も相続税もかかりませんが、父の死後、息子に受益権を移転すると息子に相続税がかかります。
以上のように、財産の名義が移ったかは関係なく、受益者が移った時に相続税、贈与税がかかるようになっています。