ハイシニアのペット、どこまで治療すべきか
【犬猫の歯のケアしてますか?】
今回は、いつもと少し趣向を変えて、歯のケアについてのお話です。
毎年、6月4日〜10日は「歯の健康週間」です。
これは、6月4日の「虫歯予防デー」にちなんで、厚生労働省が昭和33年から実施しているそうです。
もっとも、昔は「歯の健康週間」だったそうですが、現在は口腔内全般の健康が大事と言うことで、この名称が使われています。
人間では歯科衛生士さんが「8020運動(80歳で20本歯を残す)」というのを提唱されてましたが、実際に80歳で20本の歯が残っている方はどれぐらいおられるんでしょうね。
【ペットの歯磨きしてますか?】
人間の場合、口の中にいる菌がブドウ糖を分解して酸を作り、それが歯のエナメル質を溶かして虫歯の原因となります。
犬の場合は、歯の表面に歯石がつき、それが歯周病の原因となります。
歯そのものが細菌に冒されると言うより、歯茎に炎症が起こります。
(虫歯も起きることがありますが、歯が欠けたり折れたりしたところに細菌が感染する事例が多いです)
歯磨きは犬や猫にも必要ですが、歯石がついてしまうとなかなか歯磨きだけできれいにすることは難しくなります。
歯肉炎は、3歳以上の犬の8割ぐらいがかかっているというデータがあります。
つまり、ほとんどの犬は多少なりとも歯肉炎を持っているということですね。
【歯肉炎をほっておくとどうなる?】
歯肉炎は、歯茎の炎症なのですが、そこに細菌が感染するとだんだんひどくなっていきます。
口の奥の方は外からよく見えないので、歯肉炎がかなり進んでいることがあります。
特に、シニアのワンちゃんで食欲がないというこの場合、実は歯肉炎で口の中が痛くて食べられないのが原因ということもあります。
また、さらにひどくなると歯茎が化膿して穴が空いたり、耳や喉の方まで菌が回ったりすることもあるので、たかが歯肉炎と馬鹿にはできません。
【歯磨きの仕方】
歯磨きは、歯ブラシでできれば一番いいんですが、できなければ歯磨きシートで歯の表面を拭くだけでもやらないよりはずっといいですね。
歯ブラシは犬用の丸いものが市販されていますが、私は人間の小児用の歯ブラシの方が使いやすいと思います。
歯周ポケットなどを磨くのに、丸い歯ブラシだと磨きづらいからです。
歯磨きをなかなかさせてくれない、というかそもそも口の周りに触らせてくれないという犬猫も多いですよね。
家庭でやる場合、とにかく最初は「嫌がらないように少しずつ」が大切です。
最初は顎の下とか、口の横にちょっとだけ触るところから。
できたらおやつを少しだけあげて、盛大に褒めます。
少しずつ、唇をめくってみたり、前がに少しだけ触ってみたり。
それから少しずつ口の奥に触るようにします。
この時点ですでに歯石がひどかったり、歯肉炎が悪化して痛みがあると、いくら「少しずつ」やろうと思っても難しいです。
まずは動物病院で歯石を取ったり、歯肉炎の治療をするのが先決ですね。
【歯科の専門病院もある】
最近、無麻酔の歯石取りが注目されています。
麻酔をかけるのは犬猫のからだに負担になりますから、麻酔なしでやってもらえればその方がいい!
と、お考えの飼い主さんも多いようですね。
獣医師としては、無麻酔の歯石除去はお薦めしません。
きれいに除去しようと思うとそれなりに時間もかかりますし、奥の方はなかなか思うようにさせてくれないこともあります。
そうすると、無理矢理押さえたり時間がかかったりして、口の中を触らせるのを嫌がるようになることもあります。
また、麻酔をかけた場合と違い、取り残しのあることもあります。
今は口腔内専門の動物病院もありますので、悪化した場合は相談してみてはいかがでしょうか。
できれば、悪くなる前に子犬・子猫の頃から少しずつ慣らしてあげるといいですね!
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