犬の前庭疾患の話
大事なのはQOLを上げること
最近よく聞かれる「緩和ケア」。
末期の癌患者さんなどが受けているイメージですね。
ある医療コラムに、
「緩和ケアの目的は患者の生活の質を維持すること」
という記事があり、強く惹かれました。
病気になったとき、癌の治療でもそうですが、手術や抗癌剤など痛みや苦しみを伴う治療をしなければなりません。
体だけなく、経済的にも負担がかかり、それもストレスの一つになります。
自分の時間が奪われ、好きなこともできず、自分はこのまま生きていてもいいのだろうかと絶望的な気持ちになるかもしれません。
そこで、緩和ケアの出番です。
緩和ケアとは、単に痛みを和らげるとか積極的な治療をしないという意味ではなく、患者さんの日々の生活を変わりなく過ごせるようなサポートのことをさすのだそうです。
実は、私も自分がしている鍼灸整体治療で、この緩和ケアと同じようなことができないかと常々考えています。
癌などの進行の早い病気になったり、てんかんなどいつ発作が起きるかわからない疾患を抱えていたりすると、飼い主さんもペット自身も辛いですよね。
鍼灸や整体は、そんな悩みをお持ちのペットと飼い主さんに、
「悪いところばかりを見ない」という考え方でアプローチできると思います。
私のお師匠がいつも言ってることですが、
「病気を治すのではない。症状を消すのが 目的ではない。本人の治癒力を引き出すのが仕事だ」
と。
そのためには、悪い箇所にばかり目を向けるとよけいにその人(犬猫)の状態を悪くしてしまうので、必ず全体を見て、健康なところが悪いところに押し勝つような施術を心がけなければなりません。
同じように、患者さん(人間の場合)本人や、家族の方(犬猫の場合はこちらが大事!)の気持ちも、病気のことではなく毎日の生活をいつも通りに送ることを考える必要があります。
毎日を普通に楽しく、好きなことをして暮らすことが結果として寿命を伸ばすことに繋がったりします。
ペットの場合は、飼い主さんの手によるケアも大きな助けになると思います。
飼い主さんの手に勝るケアはない
これは、私がこの仕事を始めてからずーーっと言い続けていることです。
どんな名医の手であっても、「飼い主さんの手に勝るケアはない」と思います。
家庭で使うお灸もローラー鍼もマッサージも楽しみながら気持ちよくなるためにするのが第一で、「病気を治すために」というのは違うからなんですよね。
大好きな飼い主さんの手でペットの心と体を癒やすこと、これは何よりの緩和ケアだと思います。
そして、それはペットのためだけではなく、飼い主さん自身にとっても「自分の手でペットを気持ちよくすることができる」ことに大きな意味があると思います。
※ この記事は2020年8月27日のメルマガ記事です。メルマガスタンドの移行に伴い、こちらに投稿しました。