利益拡大にむけて理想の因果モデルを書いてみる
前回からの続きです。
ベテランから若手まで、それぞれが活躍できる働き方(=全員活躍)ができれば、職場の雰囲気も明るくなり、継続的な業績向上も図れると思います。そのためには様々な環境整備が必要になります。まずは、経営理念(例えば、“私たちは顧客のさまざまな生活シーンでお役に立つライフタイムパートナーになります。”)から導き出される組織のミッション(例えば、“関係性深化とお役立ち”)を行動基準に落とし込むことが必要になります。このテーマについてはまた後日取り上げます。
行動基準の実践度を評価し、処遇に反映するのですが、営業職の評価制度はどの企業に聞いても個人業績が中心になっているのです。経営理念→組織ミッション→行動基準…個人業績? どう考えても論理の飛躍がある。経営理念は“タテマエ”であって、個人業績は“ホンネ”だと思っている従業員は少なくないでしょう。しかし、これでは全員活躍にはなりにくい。全員活躍のためには、“努力が報われる”、つまり行動基準の実践度を正しく評価されることが必要になるはずです。
一方で、売上がなければ企業は存続できないことは事実なので、どうしても売上高目標から個人に按分して個人に落とし込みます。売上目標を抱えた営業担当の多くは、購入して頂けるであろう顧客へのアプローチを始めます。私のところにも金融機関とか、マンション販売とか、いろいろな企業から“売り込み”の電話が掛かってきます。「この提案って、企業側の都合だな…」と思うことばかりです。
結局、「行動基準していれば売上高は着いてくる」という仕組みにはなっていない。“努力が報われる”という視点で考えた時に、売上(S)とは営業の努力(A)だけでは成り立たない、顧客の購入意図(B)が必要なものであるということ思い起こすべきだと考えるのです。つまり、因果関係としてはA→Sではなく、A+B→Sです。どんなに営業が努力をしても顧客の購買力が足りなかったり、購入時期ではなかったり…お買い上げ頂けないこともある訳です。ベテランはお買い上げをして頂ける顧客を担当している、効率的な働き方を知っている。若手社員は最近お買い上げが滞っている顧客やお買い上げ頂けるかどうか分からない顧客を担当している…これでは、努力は報われません。
だからこそ、営業の努力そのものを評価する仕組みが大切になります。「売上高で評価することをやめましょう!」と言っても、経営者の皆さんからすれば不安があって、なかなか理解して頂けないかも知れません。だとすれば、評価ウエイトの中で行動基準の実践度を高めるようにすることから始めることをお勧めします。
確かに、ベテランの働き方を見直すことはとても大変です。今の業績を背負っている訳ですから、そのやる気を殺いでしまえば業績を落としてしまうかもしれないと危惧するのはやむを得ないことでしょう。でも、今のままでは中長期的な業績低下は避けられない。今、将来に向けた改革を進めておきたい。そう考えるならば、若手に対しては、行動基準の実践度を中心とした評価の仕組みを考えるべきです。行動基準→売上にならないのであれば、これは行動基準の設計が間違っているのです。行動基準の設計はまさしく経営の仕事。経営自らができないことを現場に求めてはいけない。この行動を継続していけば必ず売上高に結びつく、そういった仕事の設計が必要になります。そのためにも仕事全体を一度見直してみることをお勧めします。
2024年度は働き方改革の年。“全員活躍”の会社を作りたいですね。