売上向上のために(その6)~買上頻度~
概念的な話が続きましたので、ちょっと脱線です。
私が就職して最初に配属されたのは食品部の米乾物売場でした。その当時はお米は10kgが基本で、持ち帰り用に2kgの小袋があるだけ。平日は毎日のように10kgの配送をするために、伝票を貼って地下1階の倉庫から1階の配送受付まで持っていかなければなりませんし、納品があれば1階の納品場から地下1階の倉庫まで運んで、先入れ先出しのための倉庫に入っていたものを一度出して新しいものが奥になるように入れ替えたりといったことを繰り返す毎日でした。若手男性は私ひとりでしたので。
さて、百貨店の若手男性のもう1つの仕事は苦情処理です。食品ですので、毎日のように様々な苦情があります。商品のお届け間違いなどは仕方がないのですが、中には「これはちょっと…」と思うものも少なくなかったです。例えば、「お宅で先日買ったゴマに虫が入っている」との苦情。お客様からは「ちなみに私はリンゴが好き!」とのお申し出がありました…。100円のゴマで3000円くらいのリンゴを買ってお詫びにいくのですが、「このたびはご迷惑をおかけしました。」と申し上げ、ゴマを回収すると確かに虫がいるのです。しかし、持ち帰ってよくよく確認するとゴマの袋にある日付は昨年のもの。売場では日付管理は徹底しているので、古いものを販売してしまうことはありませんので、これは意図的?なのかな、と。
また、「お米が不味い!」との連絡。すぐに新しいお米をもって行ったのです。「このたびは…」とお詫びして、不味いと言われたお米を受け取ったのですが、10kgの袋に残っているのはあと1kgぐらい。不味いなら食べないんじゃないの?
そして、隣の塩干売場での苦情で「魚の粕漬けに虫が入っている!」ということで、お詫びに行ったのです。そこで、高級そうなお皿に焼いた粕漬けにアニサキスでしょうか、確かにいました。お客様からは「気持ち悪いのでお皿ごと捨ててきて!」と言われ、「何もお皿まで捨てることはないのに…」と。魚には虫がいることは普通にあることです。だから焼いて食べる訳です。
販売側が悪いならば仕方がないのですが、いろんなお客様がいるんだなと実感した次第です。
そして、顧客対応を間違えると大変だ…ということを実感した件です。おでんの有名店の商品なのですが、「酸っぱい!」との連絡。お詫び代替品をもっていくことになったのですが、お店の担当者の方から「この商品は酢漬けになっていて、鍋に入れる前にいったん水で戻して入れる商品なの。その説明書も付けたので…」と言われました。なので、お客様のご自宅へ行き、まずお詫びをした上で、商品の説明をしたのですが…激怒! 何を言っても聞いて頂けない状況となりました。これはもうどうしようもないので土下座です。何分か頭を下げていたら最終的には許してくれましたが、これは良い教訓になりました。お客様の主張はまずしっかりと受け止めないといけないと。
いろいろな苦情を体験しましたが、自社に対する期待が高いが故に一言もの申すというお客様も本当に多かったですね。なので、苦情に誠意を持って対応することで、その後、ご指名を頂けるくらい信頼頂けるお客様になった方も多いのです。今の百貨店では苦情処理を取引先に丸投げしてしまっているようなのですが、お客様との関係を構築する上でも、ブランド価値を高めていく上でも苦情は従業員が対応しないといけないと考えています。
次回は売上向上についてに戻ります。