自殺する人の心理-実行行為に至らせる流れと、自殺の方法から判ること

大澤秀行

大澤秀行

自殺する人の心理として、自殺する人に共通する因子と、実行行為に至らせる流れについてまとめました。

また、形式においてその人の欲望が見えるという観点から、自殺の方法によって判る無意識についても書いています。

自殺する人の心理

自殺する人に共通する因子は「空(くう)」という文字です。分かり易く言うと、自殺というのは空虚がもたらすものです。すなわち、何ものも埋めることのできない穴を持った人は死ぬしかないということです。人間は意味を失うと生きている意味がないという結論に至り、死に至ります。曲がりなりにも意味を作れる限り人は生きていけます。

共通する因子というのをウイルスで考えると理解しやすいと思います。自殺する人は同じウイルスに感染しています。

ウイルスには潜伏期間がありますが、因子を持っていながらも自殺に至っていない人は、潜伏期間に相当します。その人はきっかけと条件が整うと発症する危険性が高いと言えます。もしかしたら一生縁がないかもしれませんが、環境が整うと発症してしまいます。その第一に免疫力の低下があります。抗体が作れなくなると発症してしまいます。すなわち、生きる意味を曲がりなりにも持ち、それを保持している限りは抑圧できます。ですので、一番危険なのは抑うつ状態になることです。

精神分析の考え方はこの因子論です。そして、この因子を探すことが精神分析の第一目的です。それは自分の運命と意味を知ること、そして無闇な行為化を避けるためです。


精神分析のメリット
⇨【フロイトの発見】人間の中心は無意識で、意識は氷山の一角だった!

実行行為に至らせる主体の構造の流れ

続いて行為化をするメカニズムについて説明します。

自殺する人に共通する因子は「空(くう)」という文字でした。この空の主体はどこかに向かって運動しようとします。

一つは埋めようとする方向です。心が空っぽになってしまって埋まっていない情態を、「空洞のように穴が空いたままだ」とたとえて表現することがあります。ということは、そこを埋めればいいのです。何で埋めるかは、楽しさ、もしくは生きる意味で埋めます。

埋める方向がなかったとすると、必然的に残された別な方向に向かいます。この運動が起きるには、この三次元世界では埋めるものが見当たらないと見切りをつける必要があります。この三次元では絶対に手に入らないという見極めがまず必要です。この時にこの世界と訣別する決意が生まれます。そして別世界に生きる主体を想定します。この世ではない別な世界で満たそうというのがこの別世界という概念です。

この世で見つからないけど別な世界だったら見つかるかもしれない、これを希死観と言います。希死観とは、死ぬことに希望を見出すということです。この概念に至った時に行為化する主体が生まれます。死ねばもっと苦しくなると言ったら誰も死なないでしょう。死んだら楽になるというのがあるということは、そこに行けばきっと埋まるだろうという希望です。言い換えると、それだけ現実が辛い現実だったという規定をしてしまったということです。

1.この世は苦であるという規定
2.この世で埋める文字はないという絶望感
3.あの世に行けば楽になるという楽という文字の登録

これが実行行為に至らせる主体、また自我の構造の流れです。この三つが確立しない限りはそこに向かえません。ですから誰でも彼でもいくわけではありません。

しかし、自殺者のすべてがこれを熟慮して納得していっているかというと、実はそうではありません。

ほとんどは1、2、3を同時にしてしまいます。これを衝動的自殺と言います。一挙に論理を圧縮して、考えないで一挙に逝ってしまうのです。熟慮断行する人は1%に満たないでしょう。考えに考えた末、悩みに悩みという人も中にはいますが、ほとんどは発作的、もしくは衝動的自殺です。

自殺の方法によって無意識が判る

自殺の方法(自殺の形式)によって無意識が判ります。

■クスリ、ガス中毒
口唇愛欠損、口唇愛固着は口にまつわる死に方。
多量にクスリを飲む、一酸化炭素中毒、ガス管を咥えるなど。

■首吊り
これはぶら下がりというから依存症の結末。ぶら下がりたい気持ち。人に頼り切って生きたかったのだが頼れなかった人。
人に頼りたいのに頼らせてくれる人が居ないという想いの人は要注意。

■自刃
この方法を選ぶ人は少ないが、一体化願望の強い人は自刃することがある。

このように形式においてその人の欲望が見えます。

著書紹介
⇨『病気は心がつくる』
⇨『運命は名前で決まるー精神分析的観点による姓名判断』

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大澤秀行
専門家

大澤秀行(精神分析家)

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

精神分析家として34年の臨床実績があり、現在もメールや電話も合わせると、一日平均10名の精神分析によるセラピーを行っている。

大澤秀行プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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